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Future Creation#01 いま求めているオンラインイベントツールを考える
- 2020/7/29
- イベミラReport
5月1日、イベントの未来をつくる105人主催のオンライン配信イベント「Future Creation#01 いま求めているオンラインイベントツールを考える」が開催された。
全体で2時間半の内容で、前半と後半の2部構成で展開。前半には、インプットトークとして、「カンファレンス運営者でのトークセッション」が、後半には参加者同士のワークショップが行われた。全編、オンライン会議システムのZoomを活用し、参加者は質問や不明点をチャットしながら視聴するスタイルだ。
ファシリテーターは、一般社団法人INTO THE FABRIC 100人カイギ代表理事でfounder/見届け人の高嶋大介さん、イベントアクセラレータとして活躍している西館聖哉さんの2名。冒頭には、Zoomでのオンラインイベントということで、参加者のために、参加上のルール共有からスタートした。前半のトークセッションでは、「音声」をオフに設定するなど、画面上でも操作方法が映し出され、参加者が安心して参加できるように展開された。チュートリアルとして、チャットの練習を兼ねたアイスブレイクを2、3分とり、参加しやすい雰囲気をつくってから、いよいよ前半のインプットトークが開始。ここからは参加者はカメラはONにしてスピーカーも参加者もお互いの顔をみながらの進行となった。
「Future Creation#01」の目的は、オンラインカンファレンスにシフトが進む中、ツールに合わせるのではなく、これからのオンラインカンファレンスに本当に欲しい『カンファレンスツール』を考えること。
前半のインプットトークには、カンファレンス運営者の立場で、4名によるトークが繰り広げられた。
前野 伸幸さん(株式会社ホットスケープ 代表取締役)
ヒラヤマ コウスケさん(イベントレジスト株式会社 代表取締役/CEO)
藤本 あゆみさん(一般社団法人at Will Work 代表理事)
酒居 潤平さん(株式会社ユーザベース 執行役員)
藤本 あゆみさんは、代表を務めるat Will Workで2月20日開催のカンファレンスをオンライン開催した経験をもつ。新型コロナウイルスの影響を受け、イベント自粛が始まりだした矢先で、周囲ではオンライン開催がまだ少なかったなか、イベント開催2日前にオンライン配信イベントへ切替の判断をした。その際、リアルイベントの企画・運営をサポートしたのがホットスケープで、同社ではオンライン配信への切替にも迅速な対応をした。また、藤本さんはアクセラレーター/VCのPlug and Play Japanでのイベント実施についても、延期、中止、オンライン開催への切り替えと判断しながら回していると現状を共有した。200名参加のウェビナーは自社で配信することもあるが、オンラインイベントの配信は、回を重ねるほどにノウハウ共有の場が必要だという実感を話した。
酒居 潤平さんは、「NewsPicks」などの経済ニュースメディアの運営や、業界レポート、市場データなどの情報プラットフォーム「SPEEDA」の提供をするユーザーベースに所属し、BtoB向けサービスの「SPEEDA」、「FORCAS」、「INITIAL」の3つのプロダクトのマーケティング部門を統括する立場だ。マーケティング活動の一環として、これまでオフラインのマーケティング施策に注力してきたが、藤本さんと同じく2月後半にはオフラインでのイベント活動は中止をせざるを得なくなり、オンラインにシフトしたと話す。
オンラインでは、当初YouTube Liveを活用し、自社のイベントスペースにスタジオセットを組んで、配信スタッフも社内で対応。3月は計12回のオンライン配信イベントを実施し、1回あたり登録者は約500名だったという。4月からは緊急事態宣言の外出自粛の影響で、出社ができなくなることを見込み、H2Hセミナー(Home to Home セミナー)に切り替えて、出演者自身も自宅からの配信にスタイルを変えて計11回開催をした。使用したのはZoomだ。この2ヶ月間の変化としては、「リード獲得数、集客数でのケタが一つ変わった」と話す。集客コストも下がり、1セミナーあたり1200名が参加、最低1000名は超えるようになり、1人当たりの獲得単価は数百円になって「リードの概念が変わった」という。4月最終週ごろからは、セミナーでコミュニティが生まれるといった興味深い動きが出てきているとも分析する。
ホットスケープの前野さんは、「オンライン配信イベントではメリットも多く、オフラインイベントとのすみ分けが行われるだろう」と指摘した。
ヒラヤマコウスケさんは、イベントチケッティングのプラットフォーム「イベントレジスト」を提供する立場から、2月以降のイベント動向について「政府からのイベント自粛要請や緊急事態宣言のたびに、イベントはオンラインへの切替、延期、延期のさらなる延期とさまざまな対応がみられる」と話す。「主催者さんとの対話のなかでのメイントピックスは、これまで実施していたイベントのオンライン化をするにはどうすればいいのか」というシンプルなもの。ヒラヤマさんは「イベントの種類やゴールによって、オンラインだからこそ、より実現しやすいアプローチや工夫が必要で、そのためには目的を分けて考えることが必要」と目的から手法の選択がみえてくるとする。
Amazonが本のネットショップとして立ち上がった当初、書店をそのままバーチャル化して真似るのではなく、本を探すというシンプルなニーズに対して、検索窓という機能を用意したようにとたとえながら、型を真似るのではなく、目的に必要な機能を考えることと提案した。
オンライン配信イベントでのメリット・改善点
オンライン配信イベントでのメリットや改善点をテーマにした内容には、次のような気づきや変化が共有された。
「登壇者のロケーションを選ばなくなった」(藤本さん)
→海外と連携したプログラムをつくっている。国内では地方も同様。渡航費・宿泊費などの移動コストがなくなった。運営側としても登壇依頼の調整がスムーズに。
「開催時間のパターンがふえた」(藤本さん)
→午後開催がふえてきた印象もある
「スクリーンがみやすくなった」(前野さん)
→リアルでは文字の大きさや席の場所などによって画面の見づらさがあるが、オンライン配信では全員にタブレットが配られているような状況。スマホ画面上では見づらいなどの声はあるが、リアルよりもみやすくなったという声が少なくない。
「物理的な距離の制約がなくなった」(酒居さん)
→これまでオフラインのイベントではリーチできなかった方々に、オンラインではリーチできるということはある。これまで忙しくて参加できなかった方にも参加いただき、リピートいただくケースも。
オンライン配信イベントの課題・ヒント
オンラインイベントの今後の課題や実施するうえでのヒントも共有された。
「配信にもいろいろなタイプの手法選択肢がある」(ヒラヤマさん)
→ライブ配信もあれば、収録向きのものもある。ディレクターの必要性や電話回線でのバックアップなども、見極めが必要。
「YouTubeライブ配信では、バラエティ番組を参考に。Zoomウェビナーはラジオに近い」(酒居さん)
→ZoomでのHtoHセミナーでは、裏方は2〜3名体制で対応。音声対応、チャット盛り上げ担当など、オフラインイベントとはまた異なる役割がオンラインイベントでは必要になることも。
「新しいツールを考えるということと同時に、これまであったラジオやテレビ番組の手法を掛け合わせてみるというのもヒントになる」(ヒラヤマさん)
→以前よく使われていたインターネットサービスなどにも注目。10年前に使っていたサービスのなかにもヒントがある。
「いまは不慣れななかで手探りでオンライン配信イベントをしている時期だけれど、定着して第二段階へシフトしたときに、2時間なら2時間にコミットする価値提供を考えなければいけない」(藤本さん)
→日本では無料でテレビが視聴できる環境のため、オンライン配信イベントがテレビと同じという位置付けであることにも影響されている。
困っていること
「通信環境は、配信側ももちろんありますが、受信側の環境がそれぞれのため、参加者の得られる価値がバラバラになってしまう。そこをなるべく滑らかにすることが大事だと感じる。コンテンツで調整をする、またはみられなかった人にあとで共有する仕組みなどで解消するなど」(前野さん)
「スタートアップと投資家など、出会いを大事にするイベントは、オンラインでは実現がなかなか難しい。チャットやマッチングシステムをつかっても、偶然の出会いをつくることはむずかしい。出会いの演出ができるようになるといい」(藤本さん)
「イベントをマーケティングの手段として活用している会社であれば、イベントからの商談化や案件化をどうプロセスを回すかが、オンラインシフトのなかでキーになる。どう可視化するか、コミュニケーション手段がつくれたら有効だと感じる」(酒居さん)
「インタラクティブ性はオンラインのほうが圧倒的に高い。実際に熱量はオンラインになって上がっている。僕自身、大きな変化で、新鮮だった。チャット上で盛り上がった熱は、Facebookグループに移行するなどがケースとしてあるけれど、そのひと手間が必要。コミュニケーション設計をオンラインファーストで行われるようになるのは今後の大きな変化の一つ」(酒居さん)
「今後、オフラインイベントのみを開催するという思考も変わる可能性がある。どちらも有機的につながる仕組みを考えるのも面白いと思います」(ヒラヤマさん)
ワークショップは、1時間50分をかけ、Zoomのブレイクアウトセッション機能を使用し、小グループ5つに分かれ、展開された。まとめはGoogleスライドを使っての発表となった。
5月1日時点での情報から、さらにアップデートが重ねられているオンラインイベントだが定期的に共有する場を設け、ノウハウのアウトプットをすることは有意義だったという意見が寄せられた。