まず、白石さんによるクラフトビールについての導入説明が開始される。アメリカ本土では「小規模で、独立していて、伝統的である」ことがクラフトビールの条件だが、キリンビールでは、「造り手の感性と独創性が楽しめるビール」と定義しているという。
白石さん曰く、クラフトビールの一番の特徴は、味わいやビールのスタイル=ビアスタイルの多様性だという。世の中にはおよそ100種類のビアスタイルがあるとされるが、これらはおおまかに「ラガータイプ」と「エールタイプ」の2つのカテゴリに分けられるという。下面発酵という酵母の発酵スタイルで、後味の爽やかなキレを特徴とするのが「ラガータイプ」。一番搾りやスーパードライ、黒ラベルなど、日本で最も多く発売される「ピルスナー」タイプのビールもこちらに含まれる。対してもう一つは「エールタイプ」、上面発酵という酵母の発酵スタイルで、香りの豊かさが特徴的なタイプだ。ヨーロッパのヴァイツェンなどがこちらに含まれる。
そんな多様なクラフトビールの中から、今回は代表的な6種類のビールが飲み比べ用に用意されているという。あらかじめ各席にセットされていたワークシート上の6つのカップ置き場にプラカップを並べ、順番にビールを注いでいく参加者たち。
今回は2種類のスナックも用意されており、ひとつはクラッカー。クラッカーには、飲み比べの最中にそれぞれのビールの味がわからなくなったときに、一口かじると、味覚をリセットしてくれるような効果があるという。もう一つのチョコレートは、一人当たり計3粒。うち一粒は、のちほどとっておきの場面で使用するとのことだ。
続いて、ビールの飲み順についての説明。料理と同じく、味の繊細なものから濃いものへと飲み進めていくのが適切だとのことで、ビールの場合、味の濃度はそのまま液体の色の濃さで見分けることが可能だという。香りの強さなどによって多少順序が入れ替わることはあるが、おおむね間違い無いそうだ。
用意された6種類のクラフトビールについても、白石さんの丁寧な解説が入る。
材料に小麦の麦芽を用いることで、香り高く、白ワインにも似た優しく柔らかでフルーティーな味わいを実現した、女性に人気の「グランドキリン WHITE ALE」。
こだわりの国内醸造所でつくられる、ほどよい飲み口とキレのよい喉越しを実現したピルスナータイプでありながら、パンを発酵させたような麦芽のよい甘みが自然と引き出された「COPELAND」。
国産原料にこだわった、ラガータイプのキレのあるスタイルを保ちながら、フローラルな戻り香が特徴の「グランドキリン JPL」。
クラフトビールの定番であるペールエールタイプで、アメリカ産の渋め柑橘系ポップとややローストした麦芽を用いた、グレープフルーツの皮のようなフルーティーな香りと飲みごたえのある香ばしいボディ感が特徴の「YONA YONA ALE」。
イギリスがインドを統治していた時代に遡る歴史を持つインディアンペールエールスタイルのビールで、柑橘系の明るめのホップを採用した、明るくフレッシュで華やかな香りの「グランドキリン IPA」。
そして最後が、用いる麦芽を真っ黒に焦がすことで香ばしさや甘みを引き出した、コーヒーのような豊かな風味が特徴の「Afterdark」。こちらはチョコレートとよく合うようで、先ほど言及された最後の一粒を使うべきポイントとのこと。
ビールを味わいながら話を聞くスタイルに、会場の盛り上がりは必至だ。もはや初対面同士の面子が集まったとは思えないテーブルのざわめきの中で、時に談笑しながら、時に真剣に、スライドに見入り解説を聞く参加者たち。
続いての質疑応答の時間でも、最初はやや照れや控えめさが見られたものの、徐々に積極的な姿勢が見られ、質問が次々と相次いだ。
Q.「瓶と缶で、ビールの味の違いはありますか?」
A.「実は、全くありません!なんなら、ビールは日光に弱いので、缶の方が美味しいという説すらあります。ビールの瓶の色が黒や茶なのはそういった理由です」
Q.「オススメのビールは?」
A.「今日用意したもの、全部おすすめです!(笑)けれど個人的に好きなのはホワイトエール、希少な厳選したホップを使って、非常に面白い特徴的な香りが生み出せたので。これでビール好きになる方もいます。開発にも苦労しました」
Q.「動画とは違うラッパ型のグラスもあるのはなぜですか?」
A.「のどごしを楽しむタイプは、香りもあまり強くないので、ラッパ型の方が液体の流量や流れるスピードも早く、楽しめるからです!」
Q.「ビールに合うおすすめのおつまみはありますか?」
A.「ビールの液体の色と、お料理や食材の色を合わせるといいですね。淡い色のビールには、鶏肉やポテトサラダ、白ワインに合うお料理など。濃い色のビールには、牛肉とか、脂身のあるもの、中華料理など。実は、脂身と苦味は相性がいいんです」
時おり会場全体が笑いの渦に包まれながら、参加者の積極的な姿勢とテンポが良く的確な白石さんの回答が相俟り、終始にぎやかで活気のあるやりとりが続いた。
最後に、新商品で期間限定の「GALAXY HOP」が姿を見せ、会場の盛り上がりもひとしおとなる。
白石さん:「せっかくご紹介したのに、“飲みたい”の声が聞こえないんですが…?」
会場全体:「飲みたーい!!」
盛り上がりに包まれた会場に、「飲みやすい」を意味する「セッション」の副題を冠した「GALAXY HOP」が配られる。その缶の見た目と最後を飾る華々しい登場
に、参加者は「かわいい!」「わーい、うれしい!」と大喜びだった。
白石さんからはイベント内でも紹介のあったIPLグラスの購入先と、クラフトビールについて詳しくなれるサイト、そして「Tap Marche」と呼ばれるクラフトビールのサーバーと取り扱い店舗についての紹介があり、今後の日常生活の中でもクラフトビールをたのしめるような導線でのクローズで、大反響の拍手喝采の中、セミナーは終了となった。
終盤に近くにつれ、どんどんと勢いを増して盛り上がりを見せていった今回のイベント。全体が一つになっていったような、和やかで楽しいムードの空気感が続く中、しばしのフリータイム中に談笑を続けるテーブルや男女ペアの参加者数組に、イベントの感想や気に入ったビールなどについて、話を聞いた。
全員:「たのしかったです!すごくたのしかった!」
女性陣:「私は今回のイベントではホワイトエールが好きでした!飲みやすかった」
男性1「僕はIPLが好きですね」
男性2「僕はIPAですね。もともとIPAが好きなので。」
テーブル全員:「超楽しかった!酔っ払ったー!今日のワークショップ自体が、隣の人との距離が近くてとっても良かったです。合コンみたいな雰囲気で、楽しめました(笑)」
参加者同士が初対面とは思えないほどの、距離の縮まり具合が感じられた。
他にも、多様な感想が見られた。
「ビールによって、“こんなに香りが違うんだ!”と思って。ビックリしました」
「プレゼン動画のお兄さんに感動しました。すごく面白かった。素晴らしいプレゼンっぷりでした」
「平日に飲めるって素晴らしいですねー!いろいろと飲めて、楽しかったです!」
盛り上がったイベントも、あっという間に閉会の時間となり、antenna*北見さんの挨拶で場は閉まった。おみやげがある旨のアナウンスで、再び会場が湧く。
参加者:「至れり尽くせりですね…!」
大盛り上がりの中、会場全体から参加者の満足度が高いことが感じ取れる空気感の中で収束した、今回のイベント。
イベントの開催後のインタビューで、キリンの高柳さんはこう語る。
「飲んでいただかないと伝わらない“ビール”という体験で、何か一つでも人それぞれでも、クラフトビールの価値を、お客様に持って帰っていただけたらいいなと思っていました。イベント後に「私はこのビールが好きだ」とか「グラスがとてもよかった」とか「気になってたことが明らかになった」とか、そういった感想を今日は生の声としてお伺いすることができたので、良かったなと思っています。クラフトビールの価値を伝えることができたんじゃないかと思いました。
普段はお客様に直接会ってお話ができるという機会があまりないので、新鮮でリアルなリアクションが伺えるという点でもよかったと思います。
また、今回はantenna*北見さんとの打ち合わせで、男女ペアでの参加者募集にしよう、という形になったのですが、それで普段の会よりも盛り上がりが見られたように思います。グループ感、といいますか。これで本当にご縁が繋がって素敵なエピソードが生まれたら素敵だな、と思います。何より、今回のイベントを通して楽しんでいただいて、クラフトビールを好きになっていただけたら、クラフトビールのアンバサダーになっていただける方々が増えていくんじゃないかとも思っているので、こうしたイベントの機会は今後も大切にしていきたいなと思います。ありがとうございました。」
また、antenna*の北見さんはこう語る。
「普段キリンビールさんがやられているイベントとの違いを出したいと思って、“男女ペアでの参加募集”という方向性を打ち出したのですが、ちょうど男女半々ぐらいいるantenna*のユーザー層とも合致して、良かったと思います。男性同士なら男性同士での飲み会のうんちく話、女性同士の飲み会なら“味が違う!”とかの気持ちの共感、その双方の、いいとこどりができるような形を作れたところが、コラボレーションさせていただけた強みかなと思います。
スマホの画面を介したメディアであるところのantenna*が、感度の高いユーザーのみなさんにどういったリアルなイベントを打ち出したら満足していただけるだろう、というところで、自分で日々いろいろな場所に足を運ぶ中で、こちらのキリンビールさんのイベントなら絶対に面白いと感じていただけるに違いない、と確信して今日のイベント開催に至りました。画面を超えた、実際に体験することの価値を提供できる面白みが、イベントの価値だと思っています。今日はお客様からも直接満足度が高かったというお声をいただけたので、今回の目標は達成できたかな、と思っています」
これからも、キリンビールとantenna*双方がそれぞれ提供できる部分を提供しあって、どちらかだけではなしえないイベントの面白味を追求していきたいという。
平成最後の夏の幕開けに、「男女ペアでの参加」という一風変わった条件のもとに集まった参加者同士が初対面という壁も超えてテーブルごとに盛り上がり、未来へ続く可能性をその空気感から感じさせた、大盛況の余韻が記事執筆をしている今もなお取材者脳裏に蘇るほどの、素晴らしいイベントであった。
今後も、参加者同士の縁が繋がって未来で様々なエピソードが生まれることも夢見つつ、一回一回が濃く楽しい時間になること請け合いの、引き続きのイベント開催を心待ちにしたい。