そのイベント、 ゴールに向かってますか? #3ボランティア活用 スキルアップ、モチベーションアップに

ICCEES(第 9 回国際中欧・東欧研究協議会幕張世界大会)
【ボランティア活用】
スキルアップ、モチベーションアップに

50 か国から約 800 人にのぼる参加者のあった ICCEES(第 9 回国際中欧・東欧研究協議会幕張世界大会)。学術会議の会場となった神田外語大学では、学生 27 名が語学ボランティアとして広い構内のガイド役を務めた。一方で学生たちにとってボランティアの経験は、どのような効果を生んだのか。経済波及だけではない、国際イベント開催の効果を探る。

phB_酒井学長_DSC_5320言葉だけでなく
異文化を知る体験に
神田外語大学 学長 酒井邦弥 氏

神田外語大学では、通訳ボランティアという学生の社会貢献をサポートする仕組みがあります。これまでは、スポーツの国際大会でのボランティア参加が中心でしたので、ICCEES という国際会議の場は、ほぼ初めてでした。また、約 800 名の外国人参加者をお迎えしたことも規模的になく、正直なところ、プレッシャーを感じていました。半面、大学のことを一番よく知っている学生たちに、構内のガイド役を担ってもらえたことで、心強くはありました。

開催後、学生に話を聞くと、参加者には国を代表するような研究者が多く、皆さんとの対話に、人間性を感じられる場面もあったようです。これは大きな教育効果だと感じています。学生たちにとっては東欧や中欧といった普段触れ合う機会の少ない方々と、欧米とはまた違った異文化交流もできたと思います。 グローバル人材を育てていくというのが当大学の使命ですが、外国語だけでなく異文化を知る、または異文化を愛する、もっと言えば異質を愛するということです。こういった異質を尊敬する気持ちがなければ、おそらくコミュニケーションはおろか、異文化交流にならないと思っています。

昨年6月には、全国外大連合(神田外語大学、東京外国語大学、名古屋外国語大学、京都外国語大学、関西外国語大学、神戸市外国語大学、長崎外国語大学)をつくり、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて取組みをはじめたばかり。今回、幕張新都心の地域一体となった取組みのように、今度は大学間で一丸となって助け合いながら通訳ボランティアを育成する体制を整えています。産学官、地域間の連携を図りながら、これまで以上に多くの国際イベントを学生に体験してもらいたいと思っています。

 

phA_学生インタビュー

島田莉奈 さん(左) 神田外語大学イベロアメリカ言語学科 1年ブラジル・ポルトガル語専攻
木村涼大 さん(右) 神田外語大学英米語学科  1年

 ―― ICCEES への参加動機は
島田 英語を使ったボランティアをしてみたいと思っていました。ICCEES 参加者の方々を構内で誘導をするという内容だったので、英語でコミュニケーションができると思って参加しました。ブラジル・ポルトガル語専攻ですが、ロシアや東欧にも興味があったということも参加のきっかけです。
木村 神田外語大学の学生がアクセスできるCampus Web というサイトがあるのですが、そこで募集をみて、申し込みました。国際会議にボランティア参加することで、いろいろな国の方々と直接話せるといいなと思ったのが理由です。
―― ボランティア参加の感想として、成果と感じたこと、課題として残ったこと
島田 もっと積極的に話しかけて、軽い会話であってもできたらよかったと思っています。それから、もっとわかりやすい説明の仕方はなかったのかなと、案内するたびに繰り返し感じました。もっと英語力をあげたいと強く思いました。
最初は緊張していて、「あぁ…」と言葉が出てこなかったり、それに対して参加者の方も “Well,” とお互いに意思の疎通が取れなかったりしたこともありましたが、日に日にリラックスして対応できるようにはなりましたね。
木村 英語を母語としている方と話すこともでき、生の英語を学ぶという体験ができました。何か問題が起こったときなどは、早口になるので聞き取ることが難しかったりして、リスニング力をあげたいと思いました。
普段の授業では、テーマが決まっているのである程度の予測もしやすいのですが、ボランティアのときにはフリーになるので臨機応変な対応が必要でした。今回、厳しいところがあったので、語彙力にも課題が残りました。
――ボランティア参加のメリットは
木村 実際に普段の授業とは違って、いろいろな国の方や初対面の人とも話すようになるので、スキルアップにつながっていると感じます。
島田 私の場合は、スキルアップもありますが、自分のモチベーションになっている部分が大きいですね。「あぁ、こんな世界があるんだ、もっとがんばらないと」と、自分の力不足を気づかされる場面が多いので。
――国際会議を運営する、誘致するといったお仕事への興味・関心について変化は
島田 これまでよりも興味が出てきました。機会があればできるだけ参加したいと思っていますし、いろいろな国の方を知ることのできる仕事だと思います。サポートする立場への関心も高まりました。
木村 仕事として魅力的だと思います。国際会議をすることでいろいろな国の人が一堂に集まり、そういった人たちと触れ合うことのできる仕事です。一つの選択肢になると思います。これまで国際会議や学会と聞くと、とても堅いイメージで、素人が入れない世界じゃないかと思っていましたが、体験したことでイメージが変わりました。
――ボランティア参加を通じて役立ったこと、次へのステップになりそうなこと
木村 実際に海外の方と話せて生の英語を学べたということで、ほかに国際イベントのボランティア参加のチャンスがあればトライしてみようというモチベーションが高まりました。いろんな国の人と話して、触れ合ってという経験はとても楽しかったので、次もぜひ参加したいと思っています。
島田 今回ボランティア参加してみて思ったのは、ICCEES に参加された研究者の皆さんは英語を第一言語でない国の方たちも多かったんですが、第二言語として英語を話すという意味では、私たち日本人と同じだということに気づきました。でも日本人と違って海外の方たちは、アクセントの場所の違いなどがあっても、自信をもって英語を使っているんです。日本人にはジャパニーズイングリッシュを恥ずかしがって話すのを躊躇してしまう人も多いけれど、そういうことは気にするべきじゃない、立派なジャパニーズイングリッシュでいこうじゃないかと気持ちを新たにしました。もちろんイギリス英語やアメリカ英語に近い発音にする努力はしますが、そこを重視せず、とにかく英語を使ってコミュニケーションをできるようになるといいなと思います。
木村 英語専攻でないのに、それだけ英語のことを語られてしまうと負けてしまいそうです(笑)。でもやっぱり、訛りなどは一度気にしてしまうと話せないですね。完全な英語の発音にすることは難しいので、自分で自信をもって話すということが英語でもポルトガル語でも大事なことかと思います。

 

phC_高橋さんph_DSC_5437幕張新都心にとっても新しい経験
ちば国際コンベンションビューロー MICE 事業部 MICE 担当課長
高橋真治 氏

ICCEES は、ロシア・東欧・ユーラシア研究者の会議で5年に1回開催されています。ちば国際コンベンションビューローでは、2010 年 8 月に強豪・英国グラスゴーを退け誘致成功に貢献しました。「欧米外で開催される初めての世界大会」としてアジア初、そして日本という “ 多くの西が多くの東に出会う場 ” での初開催は、アジア参加国の増加など学会に新しい風を起こし活性化を図る飛躍の回とされ、開催の意義深さを大会組織委員会の一員として事務局の先生方と共有しながら誘致後も引き続き運営サポートを続けてきました。

神田外語大学の全面協力をいただき、大学校舎というハードだけではなく語学ボランティアというソフトの両面から受け入れ態勢を整えることができ、いわゆる学術会議らしい会議で皆さんを迎えることができました。

幕張新都心にとっても新しい経験で、幕張メッセとの共同開催や周辺の商業施設で利用できるクーポン発行による回遊、市からの巡回無料バス提供など、面での展開が実現し、新しいパッケージングとしての可能性も見いだせました。駅前に多くの外国人がいる風景は、街の景色を変え、コンベンション都市として、住民の方の理解促進にもつながったと感じています。幕張新都心のエリアで産学官が一丸となった取組みは、今後の国際イベント開催に向けて大きな礎となりました。

 

【ICCEES 概要】
phD_DSC_4892第9回 国際中欧・東欧研究協議会  幕張世界大会
The IX World Congress of ICCEES in Makuhari, Japan (ICCEES:イクシーズ)

 

 

開催期間  2015年8月3日(月)〜8日(土)
会場  8月3日(月)   開会式 幕張メッセ
8月4日(火)〜8日(土)   神田外語大学
主催  国際中欧東欧研究協議会  (ICCEES)、日本ロシア・東欧研究  連絡協議会(JCREES)、  日本学術会議
参加者数  約1,310名  (内外国人783名)
参加国数  50ヶ国
手づくりの運営とプロのシステム活用
会議の運営や組織づくりは、事務局や実行委員会の手づくりだったが、論文や登録管理は PCO のコンベンションリンケージが担当。シンポジウム・ラウンドテーブルの受付、事前登録・オンライン決済、確認管理サイト、シンポジウムの状況分析表示、フルペーパー論文のアップロード・ダウンロードに対応するシステムを開発・利用した。

 

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