知って得する!販促活動に使える補助金・助成金【第3回】

展示会で補助金を活用した商品開発の成果をアピールし、受注拡大 

前回まで補助金・助成金の基本的な仕組みと販促活動への活用方法の全体イメージを示しました。今回は、開発系の補助金にスポットを当てます。

企業の研究開発や新製品・新商品開発を支援するための補助金は以前から多くあります。最近では、「ものづくり補助金」が人気の高い補助金として注目を集めています。「ものづくり補助金」は応募者となるための要件のハードルが低く、製造業だけでなく商業、サービス、IT関連事業者など、多くの中小事業者が申請できる開発系の補助金です。補助率が3分の2と比較的高く、開発業務だけでなく

設備投資にも利用できるのが特徴です。

なお、平成27年度の「ものづくり補助金(平成26年度補正予算)」は、1次公募が2月13日から5月8日にかけて行われました。2次公募は6月25日から8月5日にかけて行われました。本記事を執筆している時点では公募は行われていません。

 

  • これまでの「ものづくり補助金」
    平成24年度補正予算

    (平成25年度実施)

    平成25年度補正予算

    (平成26年度実施)

    平成26年度補正予算

    (平成27年度実施)

    予算 1,007億円 1,400億円 1,020億円
    公募数 23,971社 36,917社 17,128社
    採択件数 10,561社 14,431社 7,253社
    採択率 44% 39% 42%

*平成26年度補正予算(平成27年度実施)では、1次公募のデータです。

 

開発業務自体は、売上と利益を獲得するための前段階のプロセスに過ぎません。このため、開発の成果をどのように受注に結びつけていくか、開発を企画する段階から考えておきたいものです。

ところが多くの開発系の補助金では、販促活動に関する経費は補助対象外にされています。「ものづくり補助金」も、補助対象経費として認められているのはテスト販売までで、開発終了後の営業活動、販促活動に係る経費は補助対象外です。このため、開発系の補助金を活用して新製品等の開発を行う場合、開発業務ばかりに目を奪われてしまいがちです。開発が完了してから販売方法を考えるような姿勢では、時間や事業機会を逃してしまいます。

 

参考までに、経産省の「ものづくり補助金」(平成26年度補正予算)と、東京都の「市場開拓助成金(市場開拓助成事業)」(平成27年度)との、対象経費を示します。両者を組み合わせれば、開発からその後の販促活動まで、幅広い活動に係る経費の一部を、補助金・助成金で賄うことができます。

 

  • 「ものづくり補助金」と「市場開拓助成金」の対象費用
ものづくり補助金 

(経産省)

市場開拓助成金

(東京都)

機械装置費

原材料費

直接人件費

技術導入費

外注加工費

委託費

知的財産権等関連経費

運搬費

専門家経費

雑役務費

クラウド利用費

国内展示会等参加費

出展小間料

資材費

輸送費

販売促進費

海外展示会等参加費

出展小間料

資材費

輸送費

販売促進費

通訳費

広告費 (広告費のみは不可)

 

展示会は補助金を活用した開発の成果を、ターゲットとなる顧客やビジネスパートナーにアピールするための絶好の機会です。

最近は、展示会も業界や商品分野ごとに様々なものが企画・運営されています。自社の製品・商品やサービスにとって、出展することの効果が最も期待できそうな展示会があると思います。

規模の大きな展示会は、関東であれば東京ビッグサイトや幕張メッセ等の会場で、関西であればインテックス大阪やマイドームおおさか等の会場で行われています。これらの会場のイベントスケジュールを見るだけで、皆様の事業の業界に関連のある展示会イベントも見つかることでしょう。

また、地域の金融機関(信用金庫など)が取引先の商談機会を作るために開催している展示会もあります。

開発成果をスムーズに販促活動に役立てるため、補助金を活用した開発の成果が上がる時期を見越して、どの展示会を成果発表の場として活用できるかの見当を付けておくとよいでしょう。

「ものづくり補助金」を活用した開発では、展示会に出展するための製品サンプルをしっかりと用意しておくことをお勧めします。前述しましたとおり、「ものづくり補助金」ではテスト販売用の試作品の製作費が補助対象経費として認められていますので、製造原価のかさむサンプル品は、有償で提供することも検討されるとよいでしょう。

なお、他の企業の製造受託で製品を作っている事業者(いわゆる下請事業者)の場合には守秘義務があるために、実際の取引先の製品サンプルは販促活動に活用できないことが少なくありません。このため、そうした事業者が「ものづくり補助金」を活用して技術力の向上を図るのであれば、自社の技術力の高さを自社が誰に対しても自由にアピールできるようにするための試作品、すなわち自社で仕様を定めた試作品を用意しておくとよいでしょう。

事例を1つご紹介します。睦化工株式会社(http://www.mutsumikako.co.jp/)は、東京都大田区に本社と工場を持つ、プラスチック製品を製造・販売する中小企業です。私たちが日常生活で使っている、医薬品・食品・化粧品の容器のプラスチックキャップ、その他のプラスチック射出成形品が主な製品です。同社は、大田区から「大田区優工場(総合部門)」の認定を受けています。

同社は以前から補助金・助成金を活用してきましたが、平成25年に「ものづくり補助金」を活用して、3Dプリンターや3Dデジタイザーを活用した、プラスチック製品の試作から量産までをワンストップで対応する新サービスを開発しました。同社が3Dプリンターを導入したのは平成22年で、3Dプリンターにいち早く着目し、これを使いこなすための課題を把握し、ノウハウも蓄積していました。

その開発成果をアピールできる数々の試作品や、導入した装置を機械要素技術展、産業交流展、大田区加工技術展示商談会といった展示会に出展し、販促活動・営業活動に役立てています。

 

  • 睦化工(株)の3Dデジタルトータルソリューションサービス(サンプル)

DaisankaiPhoto

同社によれば、取引先から示される製品イメージ案を3Dプリンターで「実物化」して検討することによって、当初のイメージとは異なるものになっていくことが多いそうです。パソコン画面を見てイメージできるものと、実物とではやはり異なるということでしょう。また、品質面や使い勝手等に関しても、「実物化」することによって課題に早く気づき、同社としての改良提案を行うことで短期間・低コストで製品開発ができるとのことです。

最近は、医療、介護、ロボット関連の引き合いや相談が増え、新サービスの受注を大きく伸長させています。こうした積極的な取り組みが評価され、同社の古川亮一社長は、大田区の将来を担う優秀技術者として平成26年度の「大田の工匠」の表彰を受けています。

 

次回は、補助金・助成金の海外事業展開への活用について、お届けします。

執筆者:

松平竹央


中小企業診断士 一般社団法人城西コンサルタントグループ(JCG)事業部副部長 前職の富士電機(株)では商品開発、販売促進、新事業開発等に従事。 現在、製造業(電機、環境機器、食品等)を中心にコンサルティングを実施。補助金申請支援では、小規模事業者持続化補助金、創業補助金、ものづくり補助金等に採択実績あり。

 

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