街にしみだすオープンなプロモーション〜
- 2019/4/1
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写真は「インタラクティブ」「音楽」「映画」の3つの要素で構成されるSXSW。公式マップのStroly(本紙34号参照)を開くと他拠点すぎてピンで埋め尽くされるほど。写真提供:未来予報
運営のしかた01
多拠点型 街イベントの広がり
3月はさまざまなメディアやSNS のフィードからも米国オースティンで開催されていた「SXSW(サウスバイサウスウエスト)」の話題が流れた。今年は経済産業省主催、落合陽一さんが統括ディレクターを務めた日本館「The New Japan Island」などの影響もあったのか、テック系、音楽系など専門性が高くアツい関心を寄せるコア層向け記事だけでなく、一般ニュースで映像でもみることも多かった。
ウェアラブル端末やサブスクリプションモデル、倫理とAI などテクノロジーとその思想などトレンドが詰まったSXSW はイノベーターを集める先端イベントでもあり、街に広がった多拠点型イベント運営の先端事例でもある。
SXSW のカンファレンス会場だけでも、オースティンコンベンションセンターや、ヒルトン、ウェスティン、マリオット、インターコンチネンタルなどのホテル、多目的施設Palmer Events Center といった各所で展開。もちろん主催会社のSXSW,LLC のロジスティック部署が交渉を行い、管理している。また、 移動手段のスポンサー(今年はライドシェアの電動スクーターUber JUMP がスポンサード)が公式でつく仕組みで、移動サポートが必要なほど多拠点で街全体が会場だ。前述の経産省主催の日本館も800 Congress というイベント会場で実施されており、期間中は各国や企業がカフェやレストラン、民家など街中のあらゆるスペースを活用し、ブランドの体験を提供しプロモーションする。参加者はコンファレンスのセッションや音楽ライブなどのプログラム以外にこうしたハウスを巡る。
SXSW,LLC の主催する街全体に広がるイベントは、この期間の経済効果が380 億円と試算されるほど地元への貢献も高く、オースティンの自治体と緊密な協力体制をとりながら常勤200 名のスタッフ体制で成立させている。(本紙24 号参照)
日本でも、SXSW をロールモデルとするイベントが立ち上がり、札幌「No Maps」、福岡「明星和楽」、神戸「078Kobe」としてそれぞれ展開されている。最近では、渋谷区も街を代表するSXSW のようなアイコンイベントをと、「SOCIAL INNOVATION WEEKSHIBUYA」を多拠点で行うなど、いずれも街、都市のアイデンティティを感じるような方向性が特徴だ。
たとえばNo Maps の場合は、イベント名そのものに現れる通り、地図のない場所の地図を創ろうという開拓者精神を表す。こうした発信に呼応するように、都市間コラボも生んで、No Maps とSOCIALINNOVATION WEEK SHIBUYA は連携したプログラムをつくった。
近い分野のビジネスイベントの同時開催による垂直方向の深い相乗効果とはまた異なった、異分野の融合によるイノベーション、6次産業の創出など、水平方向の広い横の弱いつながりが必要な場所では多拠点型の街イベントはヒントになるのではないだろうか。