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社外の「ロールモデル」から学ぶ、プロフェッショナルへのキャリアプラン ~シリーズ1.外資系人事のプロフェッショナルから本物の人事を知る〜
- 2020/1/31
- イベミラReport
2019年12月4日(水)、東京・虎ノ門ヒルズフォーラムにて、セミナー形式のイベントが開催された。タイトルは、『社外の「ロールモデル」から学ぶ、プロフェッショナルへのキャリアプラン~シリーズ1.外資系人事のプロフェッショナルから本物の人事を知る〜』。主催は、「イベントの未来をつくる105人」、イベント開催のオーガナイザー達が集い、面白いイベントを仕掛けていく試みを行うコミュニティだ。
今回の登壇者は以下の4名。
松林大輔氏
【プロフィール】株式会社ストリートスマート代表取締役/一般社団法人at Will Work代表理事。“「働き方」を選択できる社会へ”というスローガンのもと、虎ノ門ヒルズで年に数回、「働き方」に絡めたイベントを開催。政界の要人も招くなど、その規模の大きさは日本随一を誇る。コミュニティ「イベントの未来をつくる105人」のボードメンバーである。
安田雅彦氏
【プロフィール】株式会社ラッシュジャパン人事部長。1989年に大学卒業後、新卒でセゾングループ・西友に入社、3年後から人事部勤務となる。1999年に子会社・エルエルビージャパンに出向。その後、2001年にグッチグループジャパン、2008年にジョンション・エンド・ジョンソン、2013にアストラゼネカ、2015にラッシュジャパンに転職を果たし、国内企業・外資系企業の各社において人事部門を担当。現在に至るまで、通算27年間の人事業務経験を持つ。
佐藤留美氏
【プロフィール】株式会社ニューズピックス副編集長。雙葉学園で学んだのち、青山学院大学に進学、在学中に学生結婚。卒業後、紆余曲折を経て株式会社キャリアデザインセンターに籍を置き、その傍らで副業として執筆業を開始。30代の10年間はフリーランスのライターとして活躍し、「週刊東洋経済」「PRESIDENT (プレジデント)」等で執筆活動を行う。2007年、編集部の立ち上げ当初から経済メディア・ニューズピックスに参画。社内のタレントマネンジメントにも携わっている。
杉浦佳浩氏
【プロフィール】代表世話人株式会社®代表取締役。証券会社からキャリアをスタートし、株式会社キーエンスを経て、三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後20年間勤務。30代の初頭で「サード・プレイスの重要性」や、「会社内外における仲間の融合」といったテーマについて考えを巡らせたことを契機に、「人と人とを繋げる人でありたい」という自身の活動方針へと至る。現在、人との縁を大切にしながら、数十社を超える会社において顧問として活躍、世話人役を務めている。
司会進行役は、松林氏が務めた。イベントは2部構成となっており、第1部は安田氏によるセミナー形式、第2部は安田氏・佐藤氏・杉浦氏・松林氏によるパネルディスカッション形式で進められた。終了後には隣接のスペースで、登壇者を含む参加者同士の交流を目的とした懇親会が催された。
第1部が幕を開けると、まずは安田氏が登壇。自身の多彩な業界における人事勤務経験を踏まえ、「キャリアドライブの仕方」「組織におけるキャリア開発の方法」「人事の役割の心構え」といったテーマで、話を展開させていった。
後半では、「ビジネスパートナーとしての人事の在り方」や、「これからの社会で求められる人事の姿」といった話題へ。最後に今回の講演の核心である「タレント戦略の立て方」というテーマに迫り、その「基本の考え方」に続き「ビジネスゴールの見極め方とそこへ向けたアプローチ法」「組織力診断のシート形式によるチェック法」「全体像の把握について」「サクセッションプランニング(後継者育成計画)の立て方」「人材育成・獲得計画の立て方」「タレントレビューのための共有・討議の方法」といった、深い学びに溢れた内容で第1部を締めくくった。
そのままの流れで第2部へと移行すると、安田氏に加わる形で佐藤氏と杉浦氏、司会役の松林氏が登壇し、パネルディスカッションが開始された。
第2部は、Q&A方式による進行。最初に、スクリーンに映し出されたQRコードを経由して、会場にいる参加者が各々の所持端末から登壇者への質問を送る。すると、それらが再度スクリーンに反映され、最終的に集まった質問内容を会場全体で共有できる、という画期的な方法が取られていた。
Q.退職勧奨のプロセスを、ストレートに知りたい。
A.安田氏:退職勧奨をされた側の人が辿る、普遍的な心理の動きというのがある。
1.怒り:「どうして俺が退職勧奨されなければならないんだ」と思う時期。
2.拒絶:退職勧奨をなかったものにしたいがための行動(会議に出ない、メール返信をしないなど)を起こす時期。
3.探索:拒絶するエネルギーを使い果たし、退職金や次の就職先について考え始める時期。
4.受容:退職勧奨を受け入れる時期。
人事の役目は、この4つの心理の動きにきちんと付き合うこと。退職勧奨のアプローチは計4回、1ヶ月ほどの期間で決着をつけるというのが基本となる。
大切なのは、一度肩を叩いたら、最後まで絶対にやり通すこと。これは鉄則で、退職勧奨が退けられる事例があったら甘さが出るし、強い信念を持って切り出した話を簡単に撤回する方が、筋が通らず失礼にあたる。
Q.個人の成長にフォーカスしている印象を受ける「タレント戦略」と、組織全体の「課題解決」との相関性について知りたい。
A.安田氏:かつてのタレント戦略には、2つの側面があった。
1つは、「一人の素晴らしいリーダーが、組織を引っ張っていく」という組織モデルを作ること。つまりは、「圧倒的なリーダーを育てていく」という仕組み。
もう1つは、個々人のタレント=ケイパビリティについて、全体で話し合ってレビューしていく過程で、組織の問題解決に繋げていくこと。
しかし、最近の新しい流れでは、「一人のリーダーに頼らず、複数のリーダーを育てていこう」という動きへと変わってきている。個人の成長だけにフォーカスせずに、個々人のタレントへのレビューや、複数のリーダーを育てていく組織全体の過程の中で、「課題の解決」に迫っていくことが大切。
Q.素晴らしいリーダーが持っている共通スキルについての見解とは。
A.佐藤氏:これからやってくるAIの時代において、リーダー及び優秀な人とは、「一人で多様なスキルを多く持つ」か、あるいは「多様性を受け入れる土台のある」人。
日本では従来、本業一筋の「職人タイプ」が尊敬されがちだが、これからは、「ワン・スキル・イズ・リスキー」の時代。少し多動気味なほどに、多様なことをやっている人の方が、リーダーとして価値を発揮してくる。たくさんの仕事を兼務できる能力を持っていたり、個人としての「お品書き」、「タグ」が多い人が重宝される時代になっていく。
杉浦氏:かつてドラッカー氏が言っていた話として、「これからは、単一のことしかできない“プロフェッショナル”の時代は終わって、“多様性のあるコミュニケーションが取れる人材”の時代がくるはず」というものがある。私自身の長年の動きにも似たような側面があり、「サード・プレイス」というものについて思いを巡らせつつ活動する中で、社内外に多くの繋がりを作った。結果、「社外上司」や「社外部下」といった存在がたくさんできることで、会社のためにも、個人のキャリアのためにもなっていく、というようなことが起きた。ようやくそういう時代が来たのかと、身を以て感じている。
他にも、時間内には受け答えしきれないほどの多くの質問が、積極的に参加者から寄せられた。時に笑いを交え、わかりやすい具体例なども挙げられながら、明るく活気ある雰囲気の中で、会は進行した。閉幕後も、登壇者との対話をさらに深めたい参加者達が各登壇者の周囲に列をなし、懇親会の時間中にも、活発な質疑応答の様子が見受けられた。
(撮影・取材=本田理恵)