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第1回 イベント未来予想図2020–コミュニティ文化とイノベーションを加速するイベントの仕掛け方
- 2020/3/31
- イベミラReport
11月27日、イベントの未来をつくる105人のコミュニティが主催するシリーズイベント“データからひも解くイベントの未来ラボ”が開催された。第1回目には、イベントプラットフォームを提供するイベントレジストの小笹文さんとPeatix藤田祐司さんが登場。「コミュニティマーケティング」(日本実業出版社)著者で、CMC_Meetupを主宰する、パラレルマーケターの小島英揮さんとともに、イベントの未来予想図を語った。
プラットフォーム創設のストーリー
小島 きょうのテーマは、『イベント未来予想図』。イベントに関わっている方が多く参加されて、これからイベントってどうなるんだろうという関心の高い層かと思います。ある意味、日本で誰よりもイベントの裏側を見てきたイベントレジストとPeatixというイベントプラットフォームを提供する2社からお二人を招いてお話を聞いていきたいと思います。
小笹 イベントレジスト(以下、イベレジ)は2011年の3月に創業しました。私自身は新卒でリクルートに入社後、Googleに移り、Google時代の同僚の一人だったヒラヤマとイベントレジストを立ち上げ、執行役員COOをしています。
創業時は、いわゆるソーシャルチケッティングと呼ばれる会社が台頭してきた年で、私たちは2011年11月にサービスをリリースしました。今は、皆さんに比較的BtoB寄りのイベントプラットフォームとして認識いただいているかと思いますが、実は最初はPeatixさんのように、toCの個人向けに展開していたんです。周囲にBtoBのマーケティング担当者が多かったこともあり、リリース後3カ月でBtoBへと方向転換しました。今年7月に日本経済新聞社に株式譲渡して、今はグループ会社という位置付けになっています。
サービスとして最近のトピックスでは、『KAOPASS』と呼ばれる顔認証で受付ができるようになりました。それ以外にも、例えば、MAやビーコンなどを組み合わせて、エンタープライズのお客さまからニーズのある機能を提供しています。
藤田 僕のキャリアからお話すると、インテリジェンス(現パーソル)という人材紹介の営業から、2003年頭に黎明期のAmazonに移り、Amazonにいたメンバーで、Peatixの前進になるOrinocoという会社を2007年に創業しました。
Peatixのサービス自体は、2011年の5月に開始しています。ちょうど、震災の直後、世の中が自粛ムードで、例えばエンターテインメントのイベントが全然できない時期でした。震災復興のためにNPOがかなり立ち上がっていた時期だったので、われわれとしては、いわゆる草の根の活動をしている人たちを支援しようというところからはじめて、当初からコミュニティーをサポートするという形で展開しています。
自分たちでもたとえばイベント主催者のための「イベントサロン」というコミュニティや「コミュコレ!」という地域軸で面白い活動をしているひとを集めたコミュニティの運営もしています。今、ユーザー数は400万人を超え、世界でも27カ国で使われて、拠点もかなりふえてきました。
プラットフォーム後の変化イベントの集客
小島 まだイベレジやPeatixのようなプラットフォームがなかった頃、それこそ僕がAWS時代にイベントを担当していた当初は、参加登録一つとっても“毎回”CGI作成の発注をしたり、主催者であるにもかかわらず参加者データをすぐに確認できず取り寄せが必要だったり、さらに有料でと、買い切り型でイベント開催のハードルが高かった。
プラットフォームができて、こうしたことが解消されただけでなく、データが扱いやすくなって、イベンター側のスキルが、プラットフォームによってPDCAを回せるようになった。これはイベントを進化させているのではないかと思います。
小笹 申込みを受付中にもイベントページのPV数、申込数をグラフとしてみられますし、リストなどをみられるので、目標としている数だけでなく、層に届いているのか、来てもらえているのかがわかると、次の集客の施策を回すことができます。主催者さんもよくみていらっしゃいます。
藤田 BtoCイベントだと、チケット業界ではデータを渡しませんというところもあります。Peatixではフォームでデータは取れるようになっていますが、主催者がいつでも自由に情報を引き出せるというのは実は大きい変化だと思います。
アフターデジタル OMO時代のイベント活用術
小島 リアルとデジタルは割と分断された世界だったのに比べて、もともとオフラインだった行動がモバイルやセンサーによってオンラインデータになりIDに紐づく融合した世界観のことを「アフターデジタル」と言われます。イベントもとても変わってきていると思うんですが、いかがですか。
小笹 少し前まではデジタルはそのイベントを補完するものとか、イベントをどうやって
デジタルで後に残そうとか、そう考えられていたかと思いますが、その視点がガラリと変わったのが、一昨年行ったSalesforce主催の「Dreamforce」というイベントでした。
サンフランシスコを1週間ほぼジャックするような大規模な年次カンファレンスで、17万人が参加します。それは、イベントの中だけで完結するのかなと思っていたんですけれど、ふたを開けてみたら、17万人の参加者の後ろで1300万人の人がライブストリーミングを視聴しているんですよ。キーノートのセッションスピーカーもカメラに向かって語りかけていて、建て付けとしては公開収録なんだと感じました。
その体験から、イベントのつくり方って、そのイベントをどれだけパーフェクトに、すてきな感じに仕上げるかっていうことじゃないんだなって、ものすごいマインドセットが変わりました。
藤田 「アフターデジタル」の考え方で言うと、Peatixはサービサーという立ち位置になるかと思うんです。行動属性みたいなものをデータとして取れるようになって、それをどう活用するかという意味で。Peatixの場合には、それぞれのイベントがどういう属性を持っているかをすべて持っています。
例えば、小島さんが過去に参加したイベントから、きっとこういうイベント好きだよねというレコメンドとしてメールなどでお知らせをしています。われわれが行動属性をデジタルとして料理をして、皆さんに届けることによって、リアルな場とつないでいくみたいな感じになっている。
また、ここはいろんな議論があると思うんですけど、いわゆる信用経済的な流れでいえば、イベントにも、参加者にも信用スコアみたいなものがあるかなと。主催者にとってはスコアが悪い参加者に来ないでと言うために必要なのではなくて、参加率が悪いかもしれないとあらかじめわかっておけば、オーバーブッキングにしておこう、といった判断の最適化につながっていくと思います。
イベントの多様性が生み出すイノベーション
小島 イベントプラットフォームがあるから簡単に集客したり、申し込みを受けたりできる。それによって、いろんな、今までだったら考えられないイベントもたくさん出るようになって、その多様性がイノベーションにつながっていく、そんな流れを感じますがどうでしょうか。
藤田 1970年代にアメリカのスタンフォード大学の社会学者の方が提唱していた、弱い紐帯っていう、弱いつながりを表す概念があります。
一方で、じゃあ、逆に強いつながりって何かっていうと、家族であるとか、すごい親友であるとか、ものすごく近しい人が逆に強いつながりで。つまり、弱い紐帯っていうのは、こういうイベントでたまに会ったり、2週間に1回顔を見るみたいな感じのつながりなんですが、実はそれこそがすご強いんだっていう考え方です。まさにコミュニティとかイベントっていうのは、そういう場になっていくと思うんです。
小笹 心理的な安心感のある、一回心がちょっと緩くなって、いろいろな情報発信ができたり、他の普段の社会、自分の社会とは違う人とコミュニケーションが取れるようになったりする。そうすると、まさにリアルが溶解していくというか、自分はもっと広がってっていいんだ、というようなところのブーストになるのがイベントや、コミュニティだったりするのかなっていう気はしますね。
そうすると、来る人たちのマインドセットがちょっとずつ変わってきている、ということでもあって、主催者さん側もイベントをどうつくっていくか、は大事かなと思います。
小島 主催者の言いたいことだけ言うイベン ト、1対 N のイベントはおしまいなんじゃな いかなと思います。 日本人にはいま閉塞感が出てきているので、 それを突破する場っていうのはいろんな意味 で求められる。個人からも求められるし、社 会からも求められると思います。じゃあ、その 場にどう皆さんがつくるイベントをどう差し込 んでいくか、そういう発想で考えていくと、イ ベントって今まで以上にすごく大事なポジショ ンを得るんじゃないかなと思います。