【特集】映像がつくるイベントの未来 Part 3 -アフターコロナに向けて 進化続けるイベント映像-
- 2020/6/19
- 特集個別ページ
特集「映像がつくるイベントの未来」では各社の配信パッケージプランや新しい表現を追求するメーカーの動きまでをPart 1〜Part 4まので全4回で紹介する。(※Part 4は掲載準備中)
Part 3の今回はアフターコロナに向けて 進化続けるイベント映像について。
Withコロナで脚光を浴びた映像配信。
一方イベント自粛で表舞台から消えたようにみえるイベントでの大型映像演出だが、Afterコロナーに向けて着々と進化している。そのようすを覗いてみよう。
分離することで高輝度でも省スペースに
―― クリスティ
ドバイ万博に、オフィシャル・プロジェクション&ディスプレイパートナーとして高輝度プロジェクター約250台を納入したクリスティ。
万博の開催は延期になり、また、ユーザーである大型テーマパークや映画館などの施設も休止しているが、それぞれの再開を視野に入れ、新製品の市場投入準備にイベント再開に向けて、新商品の導入準備に余念がない。
なかでもイベントプランナーが注目すべきアイテムは、今年2月のISE(Integrated Systems Europe)で発表されたMirage SSTだろう。
特長の一つが、プロジェクターヘッドとレーザーユニット(光源)、チラー(冷却機)が分離式になっていること。
高輝度のプロジェクターは、構造上大きく重くなってしまい、ライブ会場ではステージが見渡せるもっともいい場所を占拠してしまううえに、その存在感が、コンテンツのじゃまをしてしまう。
Mirage SSTは重量でいえば全体の約1/4にあたるプロジェクターヘッド(51kg)だけステージ近くに設置し、他の機構は独自の光ファイバーで接続することで、最大50m先まで離れた場所に置くことができる。
次いで挙げられるのは、120Hzフレームレートを2分割して、左右の目用に別々な映像を映し出し、高解像度を保ちながら3D投影する、フレームシーケンシャル機構だ。
オープンな空間、複数が同時体験できるため、イベントでのバーチャルコンテンツに適している。
イベントでの疑似体験にどれだけのめりこませられるかは、高輝度・高解像度・色域の表現といった映像の品質に関わっている。Mirage SSTは3万5,000から最大5万ルーメンの高輝度、4K高解像度に加え、色純度が高いRGBレーザー光源の採用によりRec.2020の色域のほぼ全域カバーするなど、次世代の映像規格を備えた仕様になっている。
もう一つイベントプランナーにとってありがたい特長は、長時間の上映中に映像をとめることなく、キャリブレーション(調整)できるクリスティ・ガーディアンという機能だ(オプション)。
調整に必要な格子柄の映像を目に見えない1フレームだけ投影し、内蔵カメラで映像を捉え自動補正するしくみだ。
ウシオライティング㈱クリスティ事業部マーケティング担当の根岸健次郎さんは「イベント自粛が続いていますが、この時期に新しいコンテンツの開発を皆様進めていらっしゃるようです。
当社も新技術の開発やスタッフのスキルアップを行っており、再開後にこれまでより進化した新しいイベントのカタチに見合った、映像表現ができるよう準備をしています」
コロナ後、スタートダッシュを切るうえで、この時期を有効活用できるかが、次に向けてのカギとなりそうだ。
ライブ映像もIT/IP化へ
―― パナソニック
パナソニックはIT/IPベースのライブ映像プラットフォーム“KAIROS(ケイロス)”の今夏発売を発表した。
ST 2110、NDI、SDIなど多様な映像入出力に対応し、HD/UHDなどさまざまな解像度とフォーマット、16:9だけでなく32:9など特殊な画角にも対応する。
ME数・KEY数の制約に縛られずGPUパワーの許す限りレイヤーを重ねられるといった特長を備え、従来のライブスイッチャーと比べて非常に高い自由度を提供。
ライブ映像制作のクオリティと生産性を飛躍的に向上させる次世代ライブ映像システムとなっている。
また、一般的な画像編集アプリのような直感的で使いやすいGUIと、レイアウトを自由にカスタマイズできるコントロールパネルによって、ユーザーの創造性を解き放ち、操作性を高めつつ、省スペースの運用を実現する。最短1フレームの遅延を実現し、PTP(Precision Time Protocol)同期もサポートしている。
さらに、オープンソフトウェアアーキテクチャーに基づくIT/IPプラットフォームなためシステムの拡張や統合化が容易で、フレキシブル、ダイナミック、かつパワフルな制作システムを構築できる。
スポーツ、コンサート、各種イベントの映像制作・会場演出において、表現力豊かなライブ映像を効率よく制作・運用できる。
以前より同社はより魅力あるコンテンツを効率良く制作する「スマートスタジオ」のコンセプトを提唱していた。
そのような中、新型コロナウイルスによる感染拡大により、人々の生活スタイル、企業活動においても、さまざまな新しい技術や手法への転換が加速しており、映像分野でもさまざまなニーズが掘り起こされている。
そのなかでIT/IP による映像制御は、すべての信号をGPU/CPUで処理するため、さまざまな映像フォーマットの混在運用や外部機器連携、システムの統合化、オペレーションの制御・自動化など、IT技術の進化を映像分野にそのまま取り込めるようになる。同社では、映像制作ワークフローを効率的に運用するソリューションを提供し、コロナ後のイベント開催に向けた要望・期待に応えている。
同社は5月7日にオンラインイベント「The Future of Video Production: Virtual Broadcast」を開催した。映像制作の未来をテーマに制作現場にむけたソリューションを紹介した。
さらに詳しい様子は下記のURLから
→https://panasonic.biz/cns/sav/event/
高精細を支える細部へのこだわり
―― ヒビノ
コンサートの音響システムやイベントの映像システムの企画、運営をてがけるヒビノ㈱は、新しくROE Visual 社の1.5mmピッチLEDパネル「SAPPHIRE 1.5」の運用を開始した。
同製品は横494.4mm、高さ278.1mmとパネル1枚が16:9のアスペクト比となっている。
またフレームとパネルが分離した設計も特徴でコストと生産性の双方を高める。
このフレームは奥行方向にもドライバー1本で微調整できる。施工と撤去を繰り返すイベントでの利用によって、パネルのそりやフレームの歪みが生じることもある。
それにより画面上に黒い線が見えてしまったり、画像のゆがみにもつながる。
映像が高精細になればなるほど、コンマ数ミリの小さなズレが映像品質に大きな影響を与える。
そのほかコネクタの堅牢性向上などイベントでの使用に適した仕様になっている。
2月末にヒビノ社内で行われた内覧会では、「SAPPHIRE 1.5」を使用して約12mx3mのスクリーンを構築し、横7680、縦2160ピクセルのワイド8Kオリジナルコンテンツを上映し、高い表現力を映像関係者にアピールした。アメリカでの在庫も含めるとフル8Kの映像も構築できるという。
同社業務部長の菊地利之さんは「現在はライブコンサートやスポーツの大会といった大型LEDを使用するイベントは開催できない状況にありますが、その間にこの商品を含めた、新製品のプロセッシングの部分の調整や、表現手法の研究などを行って、コロナ後の需要に備えています。
映像の分野は撮影・制作、送出などすべての分野で進化しつづけています。
ライブや展示会で使用するLEDパネルも、以前は9mmや5mmのものが多かったのですが、そろそろ1mm台のピッチが主流になってきそうです」。
メガイベントの開催で高精細な映像が普及していくことが予想されるが、現場を支える技術は着実に進化している。
【特集】映像がつくるイベントの未来