Google、Facebook、Uber、Airbnb、アリババ…次なる開拓者輩出も − WIT SINGAPORE 2015レポート
- 2015/11/19
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オンライン旅行業界のトップリーダが集まる国際会議「WIT SINGAPORE 2015(Web in Travel)」が10月19日から21日、シンガポールのマリーナ・ベイ・サンズ(19日は別会場)で開催された。登壇者は、SNSやECサイトの巨人から話題のサービスを提供するベンチャー企業のイノベーターまで、いずれも”トラベル”を進化させる勢いのある布陣。内容もさることながら、ほかではみる機会の少ないめずらしい組合せがみられたりと、エキサイティングなイベントとなった。(取材=ヒラヤマ コウスケ氏/イベントレジストCEO)
WIT (Web In Travel)は、今年11回目の開催を迎えた、アジア太平洋地域最大規模のオンライントラベル業界における国際カンファレンス。旅行業界向け商談展示会「ITB Asia」と共同で開催されており、WITはマーケティングとネットワーキングに強みをもつラウンドテーブル形式のカンファレンススタイルをとっている。旅行業界のダボス会議と称されることもあるほど、毎回、スピーカー陣には豪華な顔ぶれが揃う。
また、初日に行われるBootcampでは、より現場に近いマーケッターに向けたパネルディスカッションや、トラベル業界におけるスタートアップにフォーカスしたセッションも行っており、毎年Start-up Pitchも実施し次なる開拓者も輩出している。今回は、無料のモバイルアクセスを取得し、旅行中のローカルアプリを発見するRimotoと国際マラソンを簡単に申込めるだけでなくホテル宿泊も予約できる42 raceが最終選考を突破した。
オンライントラベル2015年の傾向
トラベルという括りには移動手段も含むため、既存の旅行関連商品だけではなく、近年話題のベンチャーの東南アジア代表たちが一堂に集う豪華なセッションとなった。
宿泊施設、移動手段、チケッティング、アクティビティー、バケーション、ビジネストリップ、などそれぞれの分野で幅広くディスカッションが繰り広げられた。
Google, FacebookなどのITの巨人はもちろん、シェアリングサービスのAirbnbやUberといった話題のサービスを提供する先進企業,また、勢いのあるベンチャー企業のGrab Taxi(マレーシアに本社を置くタクシー呼び寄せサービス)などもこぞって登壇する注目のセッションが目白押しとなった。
トレンドとして、多くの登壇者から挙がっていたのが次の3点。
- アジアの旅行市場の拡大(特に中国人トラベラーの拡大)
- モバイル、アプリ
- シェアリングエコノミー
特にモバイルの普及がもたらす変化は、本イベント名の”Web” In Travelが”Mobile” in Travelに変更される日も近いのかな?と想像してしまうほどの頻出ワードとなっていた。一例を挙げると、オンライントラベルの世界傾向を発表した調査結果では、航空チケットの予約をパソコンよりもモバイルで行う利用者が急速に増えてきており、国別でみると、特に中国ではモバイルによる予約が53%と、想像以上に高いことが興味深かった。
来年の日本開催にも期待
今回、日本からの登壇者は、少なかったが、旅行観光ガイド「Travel.jpたびねす」など国内外の旅行情報サイト「Travel.jp」を運営するベンチャーリパブリックの代表取締役社長柴田啓さんは、WITのパネルディスカッションとITBのキーノートスピーチの両イベントに登壇。
また、日本の「旅館」ブランドを代表して、創業57年の旅館紅鮎三代目の山本享平氏がパネルディスカッションで日本の旅館文化をアピールした。
そのほか、楽天の執行役員トラベル事業長で楽天トラベルを担当する山本考伸さんが登壇し、アリババグループのAlitrip担当者とプラットフォームをキーワードにプレゼンテーションを行った。双方、グループ全体の強みを活かしたエコシステムの特徴を紹介し、ビッグデータ分析によるスケールメリットの最大化を実現、個々の趣味嗜好やライフサイクルに応じたサポートが顧客満足につながっていく新しい旅行販売のフローを説明した。
全体を振り返ってみると、ベンチャー業界で話題の企業が一堂に会するイベントという印象で、規制も多い旅行産業だからこそ、裏を返せばディストラクティブイノベーションのチャンスが眠っていると感じた。ベンチャー企業にとって可能性のある分野と言える。
日本では、来年6月2日・3日に東京お台場で「WIT Japan & North Asia 2016」の開催が決定している。日本でどんなイノベーティブなサービスが登場するだろうか。