人形師 山本由也さん〜失われた気配を、五感を研ぎ澄まして感じる

 

「月刊イベントマーケティング」04号 インタビュー

人形師
山本 由也 さん

人形師として、生身の人間では表現できない世界をつくり出す山本由也さん。人形を はじめ、ストーリーや舞台美術に至るまですべてがオリジナルでゼロから生み出してい る。人形の後ろで山本さんが操作をする出遣いという手法であっても、みていると自然 と山本さんの存在は消え、人形がまるで役者として生きているよう。どうしてこのような 表現が可能なのだろうか。

――人形師として活躍されていますが、人形劇に興味を持たれたきっかけ、原体験は

山本 高校時代に、NHK の人形劇で辻村ジュ サブローさんの「南総里見八犬伝」を観て、 人形劇に、子供向けではなく大人に通用する世 界も有るんだと思い、興味をもったのがきっか けです。自分もつくってみたいし、演ってみた いと高校を卒業してそのまま劇団を紹介しても らって、大学には入らずに入団しました。

――どのようにキャリアを積まれ、独立されたんでしょうか

山本 高校卒業後にすぐ入った劇団では下から操るスタイルの棒遣いの経験を積み、その後、日本の伝統的な糸操り人形の劇団、東京都無 形文化財の竹田人形座に入りました。竹田人 形座では、操演と人形製作を学びました。 しかし、自分の中で手法が棒遣いや糸操り だけでは、どうしても表現の限界が出てきまし た。もっと人形で自分なりの自由な表現をした いという欲求が募り、演目から人形作りまでオ リジナルなもので表現するために、劇団かわせ み座を 1982 年に創立。33 年になります。

――ストーリー自体も創作される事が多いです ね

山本  ほとんどが原作のない作品です。やはり小説や本になっていると、原作を読んだ個々の 読者のイメージが強いですよね、私は、読者の イメージのほうが優れていると思っているので、 原作のないオリジナル作品をおみせしています。

スクリーンショット 2015-11-24 12.21.33 また、人形は美術・デザイン・構造・操作方 法もオリジナル。すべてゼロから作り上げ、一体一体その人形にふさわしい材料を探し、動き に合わせた機構を考えて、100 以上のパーツで 組み立て、調整をしながら半年前後かけて創 作します。毎回、完成した人形だけのオリジナ ルな人形操作の練習を積んで初めて、役者としての人形が生まれるのです。

――本日、稽古をされていた「まほろばのこだま」もそうですが、実在するものではない題材が多いのはなぜでしょうか

山本  実在しないものや、架空のものをとい うよりはアニミズム的なものの見方をしたいの で、森羅万象… 基本的に、生物・無機物を問わないすべてのものの中に精霊が宿っているという考え方が好きだし、作品に活かしたいと 思っています。 また、人間が演じる役をわざわざ人形でやる 必要もないと思っています。人形だからこそ、 人形でないと表現できない舞台作品を心掛け ています。

――稽古のワンシーンでは、人形だけでなく 俳優さんも一緒に共演され、人形の向きが少し変わっただけで、「すごく視線を感じて怖い」と話されているのが印象深かったです

 山本  稽古していた「まほろばのこだま」は、ジブリの高畑勲さんが演出してくださった作品で、「日本の精霊たちをモチーフに、それを一つの作品としてつなげていくためには、人間の存在なり、同じ場所に住んでいる生き物を登場させていくべきだ」と仰っています。ですから、

人形と俳優が舞台に共存する形をとっていま す。人間の代表として童を登場させ、座敷童子 は「一緒にあやとりやお手玉をしたい」、「友達 になりたい」と思って関わろうとするけど、人 間の童からは見えない。結局、存在に気づいて もらえず、闇にすーっと消えていく… ちょっと 切ない感じを、人が入ることでより一層伝える ことができるようになりました。こうした雰囲 気を一貫してもっているような作品なんです。

――どんなメッセージをこめていらっしゃるん でしょうか

山本  気配を感じることの必要性ですね。そろ そろ雨が降りそうだとか、季節が変わったとか、視覚的なものだけではなく、いろんなものの気配を五感を研ぎ澄まして感じる事は、すごく大切だと思うし、そうすることで自然を大切にしなければいけない、ものを敬っていなかければいけない…という思いにつながっていくと思います。

――それをあえて言葉で伝えず、気配だったり、動きだったりで伝えていらっしゃる

山本  やっぱり言葉というのは、人間の芝居で 使うもの。人形が表現する場合は、言葉を使 わず人形たちの表現だけで伝えたいと思うんで す。それが私自身が描く人形劇の本質だと考え ています。


人形師 山本由也 「劇人形作品展」

山本由也さんが制作した人形約 30 点を展示。 多彩なゲストと人形とのコラボレーションラ イブも 16 ステージ開催する。
■会期:11 月 17 日 ( 火 ) 〜 12 月 6 日 ( 日 )

■会場:Space Cafe ポレポレ坐(東京中野区)

詳細:http://za.polepoletimes.jp/news/

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