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ローカルシフトを考える 広聴型MICEのススメ
- 2019/3/22
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MICE 活性化のヒントはどこにあるんだろうか。
いま、世界ではMICE について再定義が進んでいる。
地方創生につながるMICE を開発するためには、広く聴き、多くとつながることが重要だ。用途や場所、概念などを一度忘れて、新しい目で可能性を考えてみたい。
ローカルMICE の今
先月、全国のMICE 関係者が集まった「国際ミーティングEXPO2015」のセミナー会場で、ほぼ満席となる人気の講演があった。「世界が注目するローカルMICE の可能性〜いまなぜローカルMICE なのか?」をテーマにしたMPI 対談だ。登壇者は、MPI(MeetingProfessionals International)ジャパンチャプターの地方創生アンバサダーで、元気ジャパン代表理事/XPJP 代表取締役社長の渡邉賢一氏と、同副会長兼教育委員長で、ホットスケープ代表取締役の前野伸幸氏。 22 カ国18,500 人の会員をもつグローバル組織であるMPI をはじめ、ミーティングプランナーが集まる海外団体では” Possibility toincrease local MICE knowledge.(ローカルMICE に対して知識を共有しながらミーティングプランナーの質を高めていこう)” という議論がされ、そこでは、ビーチ、クルーザー、砂漠、城、森がMICE の開催場所として再定義されているという。
ニーズの変化
現在のニーズ変化を3つに分解してみると、「用途の拡大」「エリア・ベニューの拡大」「概念の拡大」が挙げられる。
これまでは、いわゆるMICE というと、会議施設やホテルがベニューで、目的も国際会議やカンファレンスだったが、細分化されている。そのひとつに、5年ほど前からユニークベニューという言葉が盛んに使われるようになったが、ベニューとして会議場やホテル以外に、神社や庭園、レストランなどに広がってきた流れがいまも続いており、街全体、地域全体がベニュー化してきている。たとえば3,000 人クラスの大規模ではなく、10 人単位の少人数もMICE と言われるようになり、概念の拡大化が時代のテーマになってきているのではないかと、指摘する。
前野氏からはセミナーの冒頭に「2020 年までに東京以外で新設・増床の計画がある1,000人以上収容または1,000㎡のMICE 施設は20プロジェクトあるが、果たして利益を生む施設になれるだろうか、また大型施設がないとMICE 誘致はできないだろうか」との疑問が投げかけられ、改めて地方都市におけるMICE の可能性を、渡邉氏が数字データから紐解く、という試みがされた
数字で見る傾向
- 国際会議件数の伸び率1位は富山県 MICE のなかで国際会議の開催件数(JNTO資料より)では、東京が一番多く、神奈川、福岡と大都市圏が上位となっているが、伸び率という側面で渡邊氏が独自計算したところ、都道府県別では1位富山県、(2005 年から2014 年で12 倍)、2位島根県(同8 倍)、3位福島県(同7倍)、4位岡山県(4. 7 倍)、5位佐賀県(4倍)と、近年は地方での増加が顕在化している。
市町村別でも1位千葉県柏市(同12 倍)、2位沖縄県恩納村(12 倍)、3位富山県富山市(同11 倍)、4位沖縄県名護市(同8倍)、5位島根県松江市(同8倍)と、細分化してもローカルシフトが目立っていることがわかった。
- ビジネストリップの約半数は
東アジアと欧米、残りの半分は?
現在、日本を訪れる外国人の約10%がビジネストリップと言われている。1990 年には90万人がMICEを含めた商用旅行に来ているが、現在では、約2倍の160 万人ほど。リーマンショックの直前2007 年に商用旅行はピークを迎え、2015 年にその数字を抜く勢いになった。そのうち全体の半数が韓国、中国、アメリカの3カ国で占められている。この3カ国のみを追っていけばよいのかというと、そうではなく、残りの半数は40 カ国で按分されている。ここが、もしかすると各市町村にとって勝負どころだろう。
キーワード
渡邉氏は、また、これまで、商用旅行もFIT も含めて、ツ−リストと言っている時代が長かったが、「エクスペリエンス・コレクター」と言い換えてもいいのではないかと提案。たとえば総務部のインセンティブ担当者や、法人で開発合宿をする方は、その目的を達成するための、目的満足度を高めるためにエクスペリエンスを必ずみている。その地域に行ったときにベニューだけをみているのではなく、エクスカーションをどうするのか、その地域ならではのプラスアルファをどうするのか、アクティビティをどうするのか、エクスペリエンスとどうコネクティングしていくのかが、ベニューサイドとプランナーの間で大事なことだ。
また、ローカルMICE を考えるうえで、ポイントについては、
- 地方目線でおらが村に来いやという売り込み目線だけではなく、外国人目線でいまなにが動いているのか、ミーティングプランナーが、いま、なにをやりたいのか、ローカルMICE になにを求めているのか、海外目線が重要
- 2番目はグランドデザイン。標識のデザインも含め、この街をどうしていくのか、交流人口増を含めてどうしていくのかグランドデザインなしではむずかしい
- もはや既存の業界や職場、部署にこだわっている時代ではない。なにもやらなくてもインバウンドの市場はふえていく。クロスボーダーできる環境で企画会議をやるなり、みんなでアイディアを出すなりして、この需要にどう立ち向かっていくのかと、3つを挙げた。
地方創生とローカルMICE
必要なのは広聴型
地方創生の大きな背景にあるのは、人口減の問題だ。現在、伸びているのが首都圏4都県と近畿2府県、福岡と沖縄で残りは人口が半減すると言われている。2050 年には3,000万人減る。3,000万人というと東北6県、北陸、中国地方、四国、九州全県合わせて2960 万人となる。その全県が0人になる規模が3,000万人減ということ。そういった深刻な人口減の話もあるなか、明るい話題もある。
定住人口が1人減ると114 万円消費額が減ると言われています。ただし、一人当たり14 万円使っている外国人が8人来ると112万円の利益になる。定住人口減を交流人口増でカバーするというのは立派な地方創生の戦略なのではないかと、渡邉氏は言う。
また、地方創生でも、ローカルMICE でも、よく何が課題かを聞くと、プロモーションやメディアマーケティングという声を聞くが、渡邉氏が提唱するのが、広報型地方創生や広報型MICE ではなく、広聴型ディステイネーションマーケティング、広聴型MICE だ。 いま、何が求められているかを聴き、チューニングしていくことが必要なのだ。
ITC 活用し分析
そんななか、ICT を活用し、広聴型MICEを推進するのが、福岡市の「ビッグデータの活用によるMICE参加者の行動分析」。携帯電話の位置情報等を用いて,MICE参加者の行動を分析し,交通アクセスや市内各地への回遊(アフターコンベンション)などの課題対応に向けた実証的な分析をはじめるとしている。
また、民間でも、ビッグデータを活用した取り組みがスタートしている。inbound&outbound,D.M.O. サービスを2016 年から2020 年までの事業テーマとするうぶすなが1月からスタートさせるのが、「訪日外国人行動分析レポートサービス〜行脚〜」だ。訪日外国旅行者のSNS 上のつぶやきを収集し、行動分析を行いレポートするサービスで、これまで訪日外国人の国内での周遊ルートがわかりづらかった部分が解明される。すでに北海道の自治体は導入を検討しているという。
DMO が重要な役割に
うぶすなの吉井靖代表取締役は「現在、政府の地方創生戦略のなかで、ビッグデータ活用は必要不可欠となっている」と話す。それは、政府の「まち・ひと・しごと創生基本方針2015 〜日本版DMO を核とする観光地域づくり・ブランドづくりの推進〜」においても、ビッグデータ等を活用したマーケティング、KPI 設定・PDCA サイクル確率等による戦略策定が義務づけられているからだ。吉井氏は、「その中核組織となるのは、DMO(DestinationManagement/Marketing Organization)となる」と続ける。
すでに今年度交付された地方創生先行型の交付金を活用し、多くの自治体がDMOを創設。また、昨年12 月には地方創生事業の平成27 年度補正予算として1,000 億円の追加予算(地方創生加速化交付金)が閣議決定され、DMOの取り組みも支援対象となっている。
加速化交付金の審査では、連携が鍵となっており、「官民連携」、「市町村連携」、「政策間連携」など少なくとも2つ、できれば3つとも満たしていることがよいと指示されている。先に採択されている事例でも、『瀬戸内ブランド推進体制「せとうちDMO」』などは、兵庫県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県と7県というDMOでももっとも広域で、推進役は民間出身者を登用するなど、地域の総合的な戦略と専門人材による運営に期待がされるDMO だ。 今後新しいカタチのMICE が各地で生まれそうだ