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BtoBマーケター庭山一郎からみた展示会エトセトラ 第1回 量と質どちらが大事? 日米の展示会の違い【ノーカット版】
- 2016/4/8
- シンフォニーマーケティング
BtoBマーケター庭山一郎から見た展示会エトセトラ
【第1回】量と質どちらが大事? 日米の展示会の違い
皆さん、こんにちは。シンフォニーマーケティング株式会社の庭山一郎です。
私は、日本のBtoB企業のマーケティングに25年以上携わって参りました。その経験から、日本のBtoBマーケティングにおけるイベントの役割や考え方について、書いてみようと思います。
第1回のテーマは、日本の展示会と海外、特に欧米で開催される展示会の違いについてです。
商談をするのか、リードとして名刺を獲得するのか?重要なのはどちらなのでしょうか? このテーマを整理するためには日米の展示会の違いを理解する必要があるのです。「良い、悪い」、「正しい、間違っている」ではなく、「違う」のです。
日本と米国や欧州の展示会は雰囲気も出展企業のブース運営も大きく異なります。そのため、外資系企業の本社マーケティングの人が来日して日本の展示会を見ると「こんな職位の低い人ばかりの展示会なら出る意味は無いから来年度はもう予算をつけない」と言う人がいます。そんな時は日本と米国の違いを理解してその違いや日本市場の特徴をきちんと説明できないと本当に予算が獲れなくなり、リードジェネレーションの重要なチャネルを失うことになってしまいます。
濃い商談の欧米展示会
まず、欧米の展示会ですが、参加した経験が有る方は判ると思いますが、大都市から離れた場所、例えばフロリダ州のオーランドやネバダ州のラスベガス、テネシー州のナッシュビルなどに在る巨大なコンベンション施設で開催されることがほとんどです。来場者の多くは、遠方から飛行機でやって来て、多くの場合併設のホテルに宿泊し、2日~3日以上をかけて会場をじっくりと回ります。その目的は「濃い商談」なのです。ですから来場者には企業経営者などのエグゼクティブが多く、ブースやコンベンション施設内に設けられた多くの商談コーナーや部屋で商談をします。ときに開会期間中に大型商談が成立することさえあります。
つまり、欧米で開催される展示会は、良い商材を求めるリセラーや、優秀な販売代理店を獲得したいメーカーなどの“商談の場”としての位置づけなのです。ですから集めた名刺の数などより、質つまり商談の数が大切と言えます。
情報収集中心の日本
一方、日本の展示会は、東京ビッグサイトや幕張メッセ、横浜パシフィコなど、大半が首都圏内で開催されています。来場者のほとんどは、片道30分~1時間程度の距離から足を運びます。展示会場の滞留時間は平均で4~5時間と言われており、その時間内に25から多い人で40社近くのブースを見て回ります。さらに来場者の役職をみると、役員などのエグゼクティブクラスは出展企業を除くと少数で、課長や課長代理、係長などのリーダークラス以下が最も多くなります。
つまり、日本の展示会は、来場者が広く浅く製品やトレンドなどの情報を収集することが目的なのです。
来場者と話していると判りますが、1ヶ月前に展示会に行く日時を明確に決めている人は少なく、決めているのは「その展示会に行く」ということだけです。何日目に行くかも時間も決めていませんから商談予約を求められてもハードルが高く、さらに時間を予約してもその時間に目的のブースに着けるかどうかは当日の混み具合にも左右されます。ですからせっかくブース内にコストを掛けて商談コーナーを設置しても、活用されないことが多いのです。
さらに、日本企業での意思決定プロセスは、米国などのトップダウンと異なり、下から上に稟議を上げるボトムアップです。日本企業で稟議書を起案する人は課長クラスが多く、稟議書を上げる時には商談は価格、納期、サポートなどの細部まで既に決まっています。ですから日本では営業ターゲットは稟議書を起案する課長クラスであり、展示会に来場して広く浅く情報収集する人なのです。
このように日本と欧米では、展示会に来場する人たちの目的が大きく異なります。ですから、日本の展示会において重要なのは、商談ではなく収集するリードの “量”だと私は考えています。