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バリアをバリューに変えていこう
- 2016/3/22
- 今月の裏表紙インタビュー
[インタビュー]
株式会社ミライロ 代表取締役社長 垣内俊哉 さん
ユニバーサルデザインのコンサルティング会社ミライロを創業し、現在、ユニバーサルマナー検定などを通じて企業や自治体、学校法人など、さまざまな場でバリアバリューという新しい考え方を広めている垣内俊哉さん。少し先の東京の あるべき姿から、いますべきことを聞いた。
——「バリアバリューから新しい社会をデザインする」を理念に掲げられていますが、バリアフリーではなく、“ バリアバリュー ” とは
垣内 バリアフリーという言葉には、障がいを 取り除こうとする、あるいはマイナスをゼロに と、障がいをマイナスと捉えるような印象があ ります。私は、生まれつき骨が弱くて折れやす い骨形成不全症のため、車いす生活を送って いますが、106cm の視点だからこそ見える景 色があり、気づけることがあります。一見する とネガティブなものも捉え方を変えると価値に なる。バリアバリューは、バリア(障がい)を バリュー(価値)に変えていこうという思いを 表しています。
——ミライロではどのようなプロダクトやサー ビスを展開しているんでしょうか
垣内 大きく分けてハードとソフトの2つの領 域でユニバーサルデザインのコンサルティング を展開しています。 ハード領域では、施設や製品について、障 がいのある方の1万人の声を元に新製品の開 発などに取り組んでいます。たとえばこの4月 には寝具メーカーとの共同開発製品のリリース を予定しています。クッションなどの製品は、 長時間椅子に座っている車いす利用者の意見 がメーカーにとっても参考になりますし、同時 に障がい者の雇用を創出することにも貢献す るという仕組みです。 また、ソフト領域ではユニバーサルマナー 検定という障がい者との向き合い方を知る学 びの場をつくっています。検定の根底にある「ハードは変えられなくてもハートは変えられ る」という考え方は、やりたくてもコスト負担が大きかったり、現実的でなかったりといった 課題をクリアにする方法として受け入れられ ています。受講者から「何からしたら良いか わからず不安だった気持ちが楽になった」と 感想を聞くのは、多くの企業や団体が考え過 ぎていたのではないかと思います。
——現在、バリアフリー情報収集のアプリを 開発中だと伺いました。どのような内容ですか
垣内 これまでのハード・ソフト領域でのノウ ハウを広く情報として発信するもので、飲食 店などの入口の段数や車いす用駐車場の有無 などバリアフリー情報を利用者が登録して共 有する地図アプリになります。 具体的には「段数」「フラット ( 平面 )」「広い」「車いす用駐車場」「車いす対応トイレ」「エレベーター」「貸し出し車いす」(車いすユーザー に便利な情報)、「静か」(聴覚過敏のある知的 障害者や精神障害者に便利な情報)、「明るい」、「クレジットカード対応」「電子マネー対応」(視 覚障害者に便利な情報)、「授乳室」「貸し出し ベビーカー」(子育て層に便利な情報)、「補助犬(Welcome!)」(補助犬ユーザーに便利な情報)、「一般駐車場」「コンセント」「公衆 Wi- Fi」「禁煙・喫煙スペース」(ビジネスマンに有 益な情報)などの情報をシェアできます。アプリは今年4月にリリースを予定しており、ま ずは日本語・英語の2ヶ国語からになりますが、 世界標準のないバリアフリー情報のなかで世 界スタンダードになることを目指しています。
——「未来の色」と「未来の路」に由来して ミライロという社名をつけられたとのことです が、垣内さんのイメージする 2020 年の東京のミライロはどのような色になるでしょうか
垣内 超高齢社会の日本だからこそ、ハード、 ソフト、情報面で進んでいる日本の状況を、 世界のスタンダートにできたら。 高齢化は一見してネガティブと捉えられが ちですが、見方を変えれば大きなバリューな のです。 バリューをもってして、新しくできたコンテ ンツやソリューションを世界に出していく、モ ノづくりが日本の誇りであるように、ユニバーサルデザイン、ユニバーサルマナーが日本の 誇りだとして世界に PR できる場になればいい なと思います。 また、それは社会貢献としてではなく、経 済活動としてもです。 社会的に必要なことだからこそ、2020 年で 終了としてはいけません。続けていかないと意 味が無いからです。社会性、経済性の両軸で、 企業にとって高齢者や障害者に向き合うこと が当たり前になればと願います。