「アートの力で地球を回そう!vol.5 ~いま、私たちがアートの力でできること~」が5月27日、東京・六本木のeggcellentで開催され、約50名のアーティスト・アートの力を信じる関係者が集まった。
「アートの力で地球を回そう!」は、アート&ビジネスの情報交流の場として、SNSグループで現在153名(5月末日現在)のメンバーで構成され、定期的な交流会を毎回テーマ、場所、幹事を変えて行っている。今回の幹事は、蒼山隆之さんと大塚智子さん。大塚智子さんは熊本県出身の福岡県育ちで、今回の熊本地震の被災地へは、「防災ガール」(全国・海外で“防災”をもっとオシャレでわかりやすくするソーシャルスタートアップ)の活動として現地入りし、その最新現状についても報告した。
5回目の交流会では、熊本・大分の地震をうけ、これまでにアートの文脈で被災地域に関わってきたアーティストをゲストに、被災地での活動から”アートにできること”、”アートだからできること”、”アートの入るタイミング”などを共有する場となった。
1stセッションには、女子美術大学准教授で、東北でアーティスト・イン・レジデンスを展開する日沼禎子さんと鳥取藝住祭の総合ディレクター、六本木アートナイトのディレクター等を務め、特定非営利活動法人インビジブルでマネージング・ディレクターを務める林 曉甫さんが登場。それぞれの体験をもとに、『アーティストが関わることで、社会や地域にどのような変化が起きるのか』をテーマにセッションを展開した。
アートが被災地と関わる意味について日沼さんは、「わたしも迷いながらだったけれど、何かをしようとしているひとにアートは新しい視点を与えることができる」と語り、アーティストが被災地など地元で活動をするには、「必要とされる時を待つこと、地元のひとたちが立ち上げたソーシャルコミュニティとともに進めることが大切で、地元だけで考えている際にともすると内包的になる部分に視点を当てる、その力を発揮することがアーティストの役割ではないか」と問いかけた。
林さんは「僕らが行っているアーティスト活動というのは、いわゆる美術館に行って作品をみて『すばらしい』という関係性をつくろうとしていることではなく、われわれが社会や生活のなかでみえないものを、違う角度からカタチづくるもの」と自身の活動について解説。また、「アーティスト性というものは、アーティストだけでなく、皆がもっているもの」とし、自分たちは触媒のようなものとして、個々の力を引き出すのがアーティスト、アートの役割だと話した。
2ndセッションでは、「天国のくじら」や「ともしび」プロジェクトなど、東北での人との交流をつうじてのアート活動をされている画家の長友心平さん、東北で若手漫画家の育成を行っている漫画家の川口まどかさんが、『アートは震災を風化させない』というテーマで、自身の活動内容を紹介した。
また、アートの入るタイミングという課題に対して、長友さんは熊本地震の避難所に隣接するペット預かり所で行なうペットの似顔絵での活動で、人とペット、人と人の交流をつなぐという試みをもとに、「アートがあると日常に溶け込むことができる。ペットの写真を貼り出すだけでは飼い主さんだけがみることが多いけれど、似顔絵にすることで交流が広がるだろう。アートは交流のチャンスや新しいアイデアが生まれる」とアートを日常に芽生えさせるという発想を提案した。
川口さんは「少女漫画の世界にホラーを加えた独自の感覚で多数の作品を通じ”死”を描いているが、東北大震災の直後は一人机に向かい、何もできない自分に悩んだこともあった。3、4年が過ぎ、作品のファンを通じてようやくいま、岩手のアートプロジェクトに参加し、岩手で漫画家を目指す若者たちに描き方やコツを教えることで少しでも救いになれれば」と話し「いつでも遅くない」と伝えた。
さいごに、熊本県出身の歌手、満屋 ケルピィ 絵美さんは、熊本の地震によって被害を受けた文化発信地の復興支援「Artists for Kumamoto」の活動について説明。現在、クラウドファンディングCAMPFIREで主に個人経営のライブハウスやギャラリー、クラブや劇場の修繕費や備品・設備再購入費に充てる支援金を募集している。https://camp-fire.jp/projects/view/6205
今回vol.5の幹事を務めた蒼山隆之さん、大塚智子さんは、「会を単なる交流会にはしたくない、何か次なるアクションにつながるものにしたい、という思いが根底にある」と今回のテーマを設定し、アクションし続けているアーティストのセッションを企画。アートの定義に「間接的に社会に影響を与えるもの」とあるように、アートというものが持つ役割や可能性をともに語り、次につなげていこうと参加者に伝えた。
なお、今回の「アートの力で地球を回そう!vol.5 」の参加費から出た余剰金は、東日本大震災発生後、「教訓」「つながり」「復興」の「風化防止」の重要さを全国各地で伝える学生団体『つながり大作戦』に寄附された。
会の終了後、参加者からは、「アートがこんなに生活に近いものだと思わなかった」、「人間、みんながアーティストなんですね」、「アートというアプローチでこんなに寄り添えることを知った」という感想が幹事らに寄せられていた。
(写真=フォトグラファー白石 隆一氏)
▽参加アーティストの活動について
日沼 禎子さん
・「さいたまトリエンナーレ2016」 (プロジェクトディレクター)
林 曉甫さん
・特定非営利活動法人インビジブル(マネージング・ディレクター)
長友 心平さん
http://nagatomo-shinpei.jimdo.com/
・希望郷いわて国体(招待作家)
http://www.iwate2016.jp/
・いわてアートプロジェクト
http://iwate-art-project.net/
川口 まどかさん
・いわてアートプロジェクト
http://iwate-art-project.net/
満屋 ケルピィ 絵美さん
・Artists for Kumamoto
https://camp-fire.jp/projects/view/6205
▽アートの力で地球を回そうメンバーが関わっている熊本支援プロジェクト
・BRIDGE KUMAMOTO
『創造力は奪えない』BRIDGE KUMAMOTO 東京キックオフDAY
(6月9日@六本木アカデミーヒルズ オーディトリアム)
http://eventregist.com/e/BRIDGE_KUMAMOTO
・熊本「ヒノデ米」プロジェクト
https://camp-fire.jp/projects/view/6991
熊本の美味しいお米を、田んぼを守りたい!というプロジェクト
・熊本プロバスケチーム「ボルターズ」支援
益城町を本拠地におくプロバスケチームを支援する活動
▷応援クラウドファンティング 目標2000万円
https://camp-fire.jp/projects/view/7076
▷Yahoo募金 Tポイントで寄付ができる
http://donation.yahoo.co.jp/detail/5067001/
・熊本城支援プロジェクト
http://donation.yahoo.co.jp/detail/5064001/