明日のマーケターはどうあるべきか? − Marketo Nation Summit 2016 参加レポート
- 2016/6/24
- 海外リポート
What is tomorrow’s marketer ?
2016年5月9日から12日までの4日間、USラスベガスでマーケターのためのマーケターによる注目のイベントMarketo Nation Summit 2016が催された。
tomorrow’s marketer をテーマに展開された多くのマーケターにとって刺激あるイベントだ。まず、イベントの主催者であるマルケト社について簡単に紹介すると、マーケティングオートメーション(MA)の提供ベンダーで、2006年に米国で創業。唯一のマーケティング専業ベンダーとして世界39か国、5000社を超える企業から選ばれている。
2014年3月には日本法人も設立され、国内でも導入企業数を大きく伸ばしており、本紙の読者の多くもその存在を知っていると思う。
マルケトは今年で設立10年だが、設立以来、最新のマーケティングトレンドやベストプラクティスを発表し共有する機会を設けてきた。今年のMarketo Nation Summit には実に5000人を超えるマーケターがラスベガスのMGMグランドホテルに集結した。
`What happend in Las Vagas stays in Las Vagas‘
LAS VEGASで起こったことは外には漏れない(漏らさない)という慣用句があるが、以下にラスベガスでのイベントレポートをお届けしたい。
参加者はユーザー企業のCEO,CMOなどの要職をはじめとして、セールス部門やマーケティング部門の担当者、マルケトユーザーのコミュニティ内でその活躍を支持された「CHAMPION」と称されるスーパーユーザーなど。
日本のこうした大型イベントでは同業他社や関連パートナーの参加も多くみられるが、まさにマーケターによるマーケターのためのイベントといえるだろう。
さらに今回は、多くのゲストも招かれ、彼らの哲学を通じて「マーケティング」の考え方に多くの学びを与えてくれた。マーケティングの発想・アプローチはビジネス領域だけでなく、多方面に学びの機会があることを感じさせるものだった。
初日には、Keynoteセッションが行われ、会場を埋め尽くす盛況ぶりと活気の中で始まった。
Keynoteでは、マルケトCEOであるPhil Fernandezが、この10年を「昨日」と称し、「明日」からのマーケッターにとって何が必要であるかを次のように発信した。
- マーケティングの役割は企業経営そのものであると心得る
マーケティング部門の機能や役割は今まではセールス組織のサポーターとしての役割を主としていた。これからのマーケターは、直接お客様と接する存在であり、戦略家であり、
自社に留まらず産業界全体やイノベーションマネジメントを考えるような存在になっていくし、なっていかなければならない。より会社経営と直結する存在となっていくことで、当然に責任も期待される成果も大きなものになっていくが、誰よりも「お客様に寄り添い離れない存在」「顧客の経験やライフサイクルを深く考える存在」「誰よりも顧客のことを知っている存在」になる必要がある。
Philは、IKMC – I know my customer の精神で進んでいくべきであると表現した。
- 感覚的なマーケティングから脱却すること。データ主導を心得る
「昨日まで」はマーケティングの責任や役割が限定的であったがゆえに、マーケティング活動が感覚的な施策の実行や振り返りになっていた側面もあるだろう。実際にその成果は?と具体的な数値を聞かれると耳が痛くなるマーケターも多かったはずだ。
企業経営と直結した明日のマーケターにとっては、もはやデータから逃げることはできない。あらゆる企業や企業担当者に関する情報を集約し、売上状況・商談状況・自社にとっての関係性を数値化する。
こうしたデータに基づき、リソースの投資を決めるというコストセンタの発想が、より重要になってくる。
- 顧客一人一人にあわせた顧客体験を提供し、1日に数十億のお客様と会話をする気概を持つ
86%のCMOが2020年までに顧客一人ひとりにあわせた顧客体験を提供すると言われている(マルケト調べ)。顧客が触れている全てのコミュニケーション手段を対象に、購買検討から利活用に至るまで顧客体験全体を視野に入れて、何度も何度も顧客の状態にあわせた関連性のあるコンテンツを実行することが重要だ。
1日に数十億のお客様と1対1で会話をしていくぐらいの発想の転換が必要である。
こうした考え方に基づき、マルケトは1対1で顧客と会話するための「オーディエンスハブ」や営業との協業を強化するコラボレーションツール、よりリアルタイム・大量に配信できるプラットフォームの整備など今後のテクノロジーの強化に触れた。
機能強化は「PROJECT ORION」として進行中で、一部デモ動画などが公開された。これらは、テクノロジーの進化によるマーケティングシーンの変化を予感させるものだった。
- ゲストセッション
活躍する場は違えど、「マーケティング」の考え方に多くの学びを与えてくれたゲストたちのセッションもあった。
Levineは、エベレストへの登頂に成功した女性登山家だ。彼女は、登頂という成功を通じて、成功に唯一の道はないと振り返った。むしろ山頂に近づきベースキャンプに戻るということを何度も繰り返しながら自らを鍛え・慣らしていかなければ、とても山頂付近の環境に身体は耐えられない。成功には「前向きな後退」を繰り返すことが重要であった、と。
マーケティングの実践に例えると、目前の成果につながらないこと、組織間の調整など事前準備に多くの工数をかけるシーンがある。
そんな状況に頻繁に直面するマーケターにとって大きな支えとなるストーリーとなったのではないか。
また、Rapパフォーマンスとともに登場した、日本でも有名なウィルスミス。
彼はアクターとして役を演じるその前に、演じようとしている人・関連する人と向き合い、彼らの心情・問題を見つけることから始めるという。そうして初めて、本質的な振る舞いが生まれるのだ、と。マーケティングとは社内外とのコミュニケーションの連続。ウィルは前述したIKMCのアプローチの本質を示唆してくれた。
本イベントでは、ワークショップやインフルエンサーなどによる104のブレイクセッションが用意された。このセッションを通じた多くの気づきは書ききれないものがあるが、PhilのKeynoteにも触れられたように具体的な成果・数値を意識したマーケティング実行のポイントが、多くのスピーカーによって話され、実践的なUSでのマーケティングを学ぶ貴重な機会となった。
人気のセッションなどその内容がマルケト社からオンライン動画で公開されている。(6月14日現在)
https://events.marketo.com/summit/2016/sessions/
本イベントはマルケトのサービスパートナー、ソリューションパートナーなど100を超えるスポンサーが支えている。
ブースに立ち寄ると、「やぁ、あなたのビジネスを教えて?今どんなマーケティングをしているんだい?」 そんな会話が始まる。
そこにはいわゆる展示会場ではなく、自然とマーケッターたちが「つながる」場所がうまれていた。
-編集後記-
2016年5月末に、マルケト社の買収が発表された。マルケトはこの10年マーケターによるマーケターのためのソリューションを提供し続けてきたが今回のイベントも、まさにマーケターによるマーケターのための時間が流れていたと言える。こうした企業風土やDNAが決して失われることなく、明日のマーケターと共にあって欲しいと思う。
また、日本でも2016年7月6日(水)に今回紹介した「THE MARKETING NATION SUMMIT 2016」の日本版の開催が、グランド ハイアット東京で予定されている。ぜひ本イベントを日本でも体感してみてください。
2BC株式会社取締役 COO
同志社大学法学部卒
2004年日本ヒューレット・パッカード株式会社に入社。製造業向けのソリューション営業に従事。
2006年株式会社リクルートに入社。人材系媒体の営業・拠点リーダーを経験後、B2BのIT選定媒体の営業マネジメント・商品企画プロジェクトリーダーを歴任。
営業個人やプロジェクト・組織マネジメントの功績として通期MVPを含む10回以上の四半期MVPを受賞。
2012年株式会社セールスフォース・ドットコムに入社。中堅~大手企業向けのアカウント営業に従事。初年度から営業目標を達成し、以降も進取性の高い顧客事例を数多く創出
2014年2BCの設立と同時にクライアントサクセスマネージャー(マーケティングコンサルタント)として参画。コンサルタントとして戦略策定からシステム運用まで幅広いサービスを提供