VISUAL EXPERIENCEの可能性
- 2016/6/24
- 特集個別ページ
T × T
株式会社テー・オー・ダブリュー 福島裕介さん
太陽企画株式会社 小畑瑞輝さん
イベントの企画・制作で40年の実績あるテー・オー・ダブリュー(TOW)とTVCM制作で50年の実績ある太陽企画は昨年10月、リアルと映像の力で新たなブランド体験の可能性を目指すヴィジュアル・エクスペリエンスユニット『T×T』を結成した。
TOWはイベント、太陽企画は映像の制作現場で両社とも半世紀近いノウハウをもつ異業界のプロフェッショナルだが、PRという領域では同じクライアントのキャンペーン案件を分業することもある近い存在だった。ユニット誕生の前から同じ案件のリアルキャンペーンとCM、体験イベントとWebなど、それぞれの持ち場を担当する間柄で、その距離感が以前にくらべ特に最近は近くなってきた。その変化が『T×T』に至ったと経緯を説明する。
T×Tのメンバーで、TOWではインタラクティブプロモーション室に在籍する福島裕介さんは「イベント体験をCM映像にしたい、あるいはCMの世界観をイベントで再現したいといったオーダーがふえてきた」と話す。それまでは別々に分業していたことも、イベント時には映像を意識した制作をするようになり、もっとコミュニケーションを密にする必要を感じていたと話す。
同じくT×Tメンバーで、太陽企画では映像プロモーションのプロデューサーをしてきた小畑瑞輝さんも「一緒に組むことで、プロモーションの最初からゴールイメージを共有でき、映像クオリティを高く、体験をリッチにすることできるようになった」とT×T結成の有効性を感じていると、これまでの案件を振り返る。
たとえば、T×Tの結成以前にもコラボで実現したプロモーションでは、TVCMでも話題になった「Sprite Splash Vending Machine」や、期間限定でオープンしたポップアップショップ「PEPSI STRONG BALL」などを手がけている。リアル体験した方や映像をみた、あるいはSNSで知ったという方も多いのではないだろうか。
「マニュライフ生命『未来自販機』」は、TVCMを実体験させるというもので、“未来の味は、あなたが決める”というコンセプトのもと展開されたTVCM「未来自動販売機」を、実際に街頭に設置。自分の未来をイメージして「あっかる〜い」「くら〜い」の2種類のドリンクを体験者に選んでもらうイベントを実施し、映像のコンセプトをリアルな体験でより深く伝えるキャンペーンとなった。
「T×T」としてもっとも最近の事例では、「サントリー『伊右衛門』の飲み比べ体験」を4月に実施。伊右衛門は、季節ごとに味わいを変えているが、そのことを広く伝えるための体験プロモーションだ。LED大型モニターで3面を囲んだ特設ブースで、1組25人に春夏秋冬の映像とともに季節の風や香りを連動させた仕掛けの空間で、伊右衛門を味わうというもので、五感で季節ごとの味わいを深く届ける。
福島さんは「こうした深いブランド体験の提供は、映像テクノロジーの進化なしには実現できなかったもの。昔からイベントには映像演出があったけれど、現在は質が高いからこそ、その世界観に没入する演出ができ、どんな視覚体験を提供すれば心に刺さる体感を持ち帰ってもらえるのか、人にシェアしたくなるのかを考えられやすくなった。テクノロジーの発展によって、もっとさまざまなヴィジュアル・エクスペリエンスを提供できる」と期待する。
小畑さんは「これまで、映像を観るという態度はスマホで視る、スクリーンを観るなど単純だった。最近はイベントやリアルプロモーションでもその単純性が変わってきていてショー化している。音楽ライブでアーティストのパフォーマンスと映像に炎が上がるというようなエキサイティングな演出をするように、総体のなかの一部として映像があって、映像の枠が広がってきた。リアルな場で体感する幅はもっと広がるだろう」と可能性は大きいと話す。
視覚から入っても、視覚だけで終わらせずに体験として持ち帰ってもらうことが「T×T」の仕掛けるヴィジュアル・エクスペリエンスだ。
(月刊イベントマーケティング11号「特集:リアル×映像・照明の体験」より)