【第1回】
助成金を上手に活用して新規顧客開拓に成功! A社の場合
「展示会出展に使える補助金があるなんて。早く知っていればなあ・・・。」
皆さま、こんにちは。中小企業診断士のコンサルタント集団JCGの松平です。中小企業診断士として相談を受けていると、冒頭のように言われることがよくあります。そこで今回は、より多くの方に補助金や助成金について知ることで、ビジネスチャンスを広げていただきたいと、わかりやすい事例とともに6回に渡って、「知って得する! 販促活動に使える補助金・助成金」と題して中小企業の皆さまに役立つ情報を提供致します。
皆さまの会社では、受注獲得のために、どのような販促活動に取り組んでおられますか?
厳しい事業環境においても業績を伸ばしている企業においては、補助金・助成金を上手に活用していることが少なくありません。
今回は、助成金を用いて展示会に出展し、新規顧客の獲得に成功したA社の場合を紹介します。
A社は、2011年に新事業として環境関連機器の卸売業を開始した中小企業です。新事業を開始してからしばらくは訪問のアポさえもとれない状況が続きました。A社が苦境を脱するきっかけとなったのが、2014年1月に東京ビッグサイトで行われた「第5回国際水ソリューション総合展」という展示会への出展でした。
A社では、東京都の「市場開拓助成事業」という助成金を獲得しました。これは助成率が2分の1のものでしたので、総額約100万円の出展関連経費のうち、約50万円は東京都に負担してもらうことができました(図1)。
A社では、この助成金を用いて販売促進資料も整え、Webサイトもリニューアルして展示会に出展しました。事前準備や展示会終了後の営業活動もしっかりと行った結果、新規顧客の開拓に成功しました。
図1 A社の展示会出展費と負担額
では販促活動に使える補助金・助成金は、どのようなものがあるのでしょうか?いくつかを表1にリストアップしました。
販促活動に使える補助金・助成金のほとんどは、中小事業者を対象としたものです。
残念ながら、ほとんどの場合は、申請しただけでは支給されません。申請書類の審査が行われ、審査にパスした事業者が補助金・助成金の支給対象者として採択されます。
助成率は2分の1から3分の2程度のものが多いようです。助成率が3分の2ということは、事業者の負担が3分の1で済むことになります。助成率の高いものは、人気も高く、審査にパスするための難易度が高くなるといえます。
表1 販売促進活動に利用できる補助金・助成金の例 (平成27年)
*上記は、情報を簡略化して掲載したものです。例外的事項等は割愛しています。
では、展示会に出展するため、A社ではいつからどのような準備活動をしていたのでしょうか?
展示会の出展申込は、会期の数ケ月前には締め切られます。出展申込をする時点では、補助金・助成金がもらえることを確実なものにしておきたいところですね。
A社では、展示会会期の1年4ケ月も前となる、2012年9月に準備に着手しました。(図2) なぜこれほど早く準備する必要があったのでしょうか?
A社では、自社の事業の内容から、展示会に出展するのであれば、「国際水ソリューション総合展」という展示会が最適であろうと見当を付けていました。そこで、2014年1月に実施される回に出展することを想定して企画・検討に入りました。
図2 助成金獲得と展示会出展のスケジュール表
A社では、出展費用の一部を補助金・助成金で賄いたいと考え、東京都の「市場開拓助成事業」という助成金に応募することにしました。
補助金・助成金には、支給対象者となるための条件、すなわち申請者資格が設けられているのが通常です。A社が獲得を目指した、「市場開拓助成事業」という助成金にも申請者資格がありました。この申請者資格を得るために、2012年9月には準備に着手する必要があったのです。 東京都の「市場開拓助成事業」の募集は、2013年1月下旬ころに始まり、2月下旬に締め切られます。 助成金の申請書類には、何のために、いつ何を行い、いくらの経費がかかるのかについて、具体的かつ詳細に記載しなければなりません。このためA社では2013年1月初旬には出展企画の検討に入りました。そしてA社は、A社が出展をする回の前回分の「国際水ソリューション総合展」を実際に視察して、他社の出展内容等も参考にしました。 A社の助成金の申請は、めでたく審査にパスしました(2013年4月末頃)。 そして、6月頃に展示会の出展を申し込み、翌2014年1月に出展を果たすことができました。
さて、この連載の第1回目では、補助金・助成金を活用して販促活動を行うということはどのようなものか、全体的なイメージをつかんで頂くための事項をお伝えしました。
次回は、そもそも補助金・助成金とはいかなるものであるか、メリットや留意点などについてお伝えいたします。
松平竹央
中小企業診断士 一般社団法人城西コンサルタントグループ(JCG)事業部副部長 前職の富士電機(株)では商品開発、販売促進、新事業開発等に従事。 現在、製造業(電機、環境機器、食品等)を中心にコンサルティングを実施。補助金申請支援では、小規模事業者持続化補助金、創業補助金、ものづくり補助金等に採択実績あり。