いま、「イベント」×「マーケティング」の理由~EMS Report#3

Why Event?
Why Experientcial?
キーノートスピーチで語られたことを含め、全64セッションを通じた内容を一言でまとめるにはむずかしいが、EMSは、「顧客にブランド体験を与えるための学びカンファレンス」という場だ。
体験マーケティングの海外トレンドを知りたい、あるいは、ビッグアイデアのキャンペーンについて企画から実行までのプロセスの事例を知りたいという関係者にとっては、CMO的見地や現場運営、予算管理など、さまざまな立場の目線で実例を聞くことができる。

さて、改めて、ブランド体験にとってイベントとは何だろうか。

EMSのマクドナルド社のセッションでの言葉を引用すれば、「見たことの20%を人は覚えていられるけれど、体験したことの80%は覚えていられる」というのが、マーケティング視点でもっともわかりやすく、イベントの意義というものを表していた。裏を返して言うと、来てみたけれど何もなかったねと言われるイベントというのは、何も体験できなかったとも言い換えられる。ほかのセッションでも、スーパーボールのCMをトリガーとしたイベントの話が紹介されていたが、30秒で数億円単位をかけた広告にも、広告単体でなくイベントをプラスすることでブランド体験をつくるのがトレンドになっている。

なぜ、いまイベントが必要とされているのか、いくつかのセッションでもトレンドのヒントとなる、メッセージがあった。
1. Mobile & Social
デバイスの普及と伝達手段の多様化で、Webで得られる情報量がふえただけでなく、伝達手段としての手軽さはますます加速化している。2、3年前までメールでやり取りしていた内容も、いまではチャットでTwitterやFacebookを使って、レスポンスの速さは格段に進化した。

イベントの場に置き換えて話すと、そのイベントで聞いたりみたりしたことを参加者が「あ~、面白かった」で終わっていたものが、いまや、その場にいる一人ひとりの後ろに何十、何百という友達がいて、一回のイベントで何万人という友達に一気に拡散する。BacardiのDima氏もソーシャルメディアを意識することを重要なことの一つに挙げていた。「アカウントだけでも用意すれば自主的に広げてくれるから」と。

参加者が持っているスマートフォンは、単なるカメラではなく、中継手段であり通信手段であって、一人ひとりがテレビ局のような状態だということ。オンライン参加者を考慮するということも今後の課題かも知れない。

2. Community
EMCでは、BtoCビジネスにおけるブランド体験の重要性、イベントの意味だけでなく、BtoBビジネスにおいても同様に語られた。マクドナルド社のセッション「LESSONS FROM MCDONALD’S: 5 TIPS FOR CREATING A B-TO-B EXPERIENCE ATTENDEES LOVE」もその一つ。マクドナルド社は、BtoC企業だろうと不思議に思っていると、「皆さんが行っているお店はフランチャイズ店なので、BtoBビジネスなんです」という説明でようやく納得した。フランチャイズビジネスにとって、オーナー同士のコミュニティは非常に重要で、お金ではないモチベーション、たとえばマクドナルド社のメンバーの一員であるということの誇りや、そのなかでナンバーワンになりたいという向上心、あるいは横の連携をイベントを通じてつくることで、ブランドを体験することにつながる。

自社企業の(あるいはサービスの)コミュニティを活性化させることは、フランチャイズビジネスに限らずあらゆるサービスにおいても重要だ。Facebookやインスタグラムなどのローンチ時にはヒアリングの場をつくったり、ファンをつくったりするのをイベントでミートアップをして、身近なコミュニティをつくるのにイベントを利用している。欧米の企業では、コミュニティマネージャーという職種が一般的で、ベンチャー企業であれば最初に採用するというほど重視される。

つまり、給料という形でモチベーションを提供したり、サービスの価値を企業側から提供するというこれまでの方法は、一方的ですべてを発信側が背負い込んでいるような構造だったのが、コミュニティがあることで価値の交換が生まれ、一方通行ではなくなる、ということだ。コミュニティの活性に、イベントが必要だということで、企業にとってチャレンジングだけれどトライしているという話がEMSでもあった。

3. MA(マーケティングオートメーション)
日本でも、Oracle Marketing Cloud HubspotやMaruketoなどをはじめとしたマーケティングオートメーションが導入されはじめている。マーケティング関係者がこれまで実施してきたリード管理(潜在顧客管理)は、オンラインが主流だったが、さまざまなサービスが導入され、これまでトラッキングできなかった情報も、収集、分析できるようになって、リアルイベントの情報も統合していける時代になった。

EMSでも、データ分析での成功事例についてのセッションがあった。メールマガジンで、開封した人に対して次にどんな内容を送るかを自動化するというもの。一人ひとりにカスタマイズができないので、予めシナリオに応じたコミュニケーション内容をプログラミングしたものなどを自動設定して、2回目に開封したひとにはこの内容で送るといったキャンペーンプログラムでは、10万人にセットした結果、売上があがったという内容。

MAの導入は、イベントで接触した参加者が最終的に成約につながったかどうか、データで紐づけることができるため、これまで可視化しづらいと言われてきたイベントの効果測定に期待ができるトレンドだ。

ここで紹介したトレンドは、当たり前だが5年前にはまだみられなかったもので、少なくとも当時はアーリーアダプターが取り入れてきたことだ。
いずれの要素も、イベントの付加価値を上げる要素の一つだと感じていたが、今回のEMS参加で実感することができた。
(取材=ヒラヤマ・コウスケ)

ヒラヤマ・コウスケ氏
イベントレジスト株式会社
CEO

企業イベントや展示会などで導入されているオンラインイベントプラットフォーム「EventRegist」を開発、運営。http://eventregist.com

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