[Interview with Event Organizers] #4 「NoMaps2016」
- 2016/10/3
- Interview
No Mapsは地元愛でできている
BACKSTAGEのSession9「地域から日本とアジア、世界を変える為にイべントができること」に登壇した伊藤博之さんが実行委員長を務めるNoMaps2016が10月10日から7日間、札幌市内中心部のホール等や狸小路周辺を中心に市内広域で展開される。
No Mapsはこれまで10年間開催し国際的な知名度を得ている札幌国際短編映画祭を核に、音楽とインタラクティブ(IT先端技術など)を加えて再編成するもので、今年、プレ開催として実施するものだ。来年からの本格開催に向けて、さまざまな取組みが行われる。
事務局の廣瀬岳史さんは、No Maps成立の経緯について「2つの想いがタイミングよく融合した結果」だと語る。
一つ目は、映画祭側の、“イベントとしての認知度は高いが国内の短編映画市場拡大が遅れており需要喚起をしたい”という想い。もう一つは、音楽フェスを手がける(株)ウエスの小島紳次郎さんや初音ミクなどインタラクティブ事業を手がけるクリプトン・フューチャー・メディア(株)の伊藤博之さんが抱く“フロンティア精神がある地元北海道でSXSW(サウスバイサウスウエスト)のようなイベントを開催したい”という想いだ。
では、No Mapsの目指すところは日本版SXSWなのか?
廣瀬さんは「3分野がそれぞれ連携しイノベーションを生むという点でSXSWをリスペクトし学ぶところは多い。しかしそれが最終ゴールではない」と言う。No Mapsの名前は文字通り、地図のない場所の地図を創ろうという開拓者精神を表すもの。札幌・北海道を通じて多様なイノベーションをアジアに発信していく。ピッチコンテストやアイデアソン・ハッカソンを実施することで、海外の投資家や起業家の参加も視野に入れる。北海道で開催する意義は一次産業や観光といった地場産業に3分野のクリエイティビティを波及させ、さらなる発展を目指すというものだ。
映画・音楽・インタラクティブの3者が融合するNo Mapsには行政の支援も加わっている。札幌市はもともと映画祭の文化的側面だけでなく、経済的側面を重視し、映画祭をコンテンツビジネスの場として支援していた。音楽とインタラクティブの分野に広がりを見せNo Mapsへと進化するにあたっては、札幌市等のさまざまイベントがNo Maps連携事業として位置づけられている。札幌・北海道をクリエィティブ産業・IT産業の集積地としたい、起業家や就労者が新しいものを生むなら北海道という機運を醸成したい、という官民一体となったムーブメントが起こりそうだ。また創業支援制度の充実など「創造都市さっぽろ」の基盤づくりも狙い。インタラクティブ技術が向上し都心以外での事業化、働き場所という選択肢を増やしていることも追い風になっている。
廣瀬さんがNo Mapsの事務局に参加したきっかけは、所属するシンクタンクが受託した札幌国際短編映画祭の今後のあり方にかかる調査の案件だという。調査で得た情報や知見をもとにNo Mapsが札幌と北海道の発展のエンジンとなるように、施策を打っている。業界文化も共通言語も異なる3分野を、うまく融合させるべく日夜奮闘している。そんな廣瀬さんのエンジンは地元北海道発展にかける想い。No Mapsは多くの人の地元愛で作り上げられている。
9月9日には三度目の記者会見が行われ、「VRシアター」、「Tresor25years」など、分野をまたぐ新たなイベント内容も発表された。3分野の複合融合イベントの幕が開けようとしている。
「大型コンベンション施設が足りないので、街なかの色々な場所で分離開催することになった」と語るが、街なかで実施することで、市民への周知を高め、参加促進のプロモーションになる。日本になかなかない、街中がイベントの色に染まる新たな風景をつくりだしそうだ。
——EventSummary——
NoMaps2016
2016年10月10〜16日
札幌市内広域
主催:NoMaps実行委員会