誰かが所有するモノやサービスなどを、インターネット上のプラットフォームを介して個人間で共有する「シェアリングエコノミー」が登場し、注目を集めている。
自治体においても、遊休資産などをシェアによって活用し、サスティナブルな発展を実現させる取り組みが、全国で見られるようになってきた。
こうした状況を背景に、秋田県湯沢市、千葉県千葉市、静岡県浜松市、佐賀県多久市、長崎県島原市の5都市は2016年11月24日、「シェアリングシティ」宣言を、東京・千代田区のNagatacho GRIDにおいて行った。 冒頭、シェアリングエコノミー協会 代表理事 上田祐司氏(ガイアックス 代表執行役社長)は「当協会は2016年1月に設立し、すでに100社を超える企業が参加している。我々はすべての人がさまざまな形態で経済行為に参加できる社会の実現を目指している」と協会の理念について説明した。
また、同協会のも
うひとりの代表理事である重松大輔氏(スペースマーケット代表取締役)は「海外ではソウルやモントリオールなどがシェアリングエコノミーサービスを積極的に推進し、そのことを世界中に発信している。そうした海外の都市と連携しながら進めていきたい」と語った。
挨拶に立った内閣官房IT総合戦略室 企画官 松田昇剛氏は「これまでは企業が主役だったが、これからは個人が主役になっていくだろう。こうした展望を踏まえながら、世界に先駆けてシェアリングエコノミー推進プログラムをまとめた。政府としても先進的な自治体と一緒になってシェアリングエコノミーを進展させたい」と、政府も推進させていく意向を示した。
国、自治体、事業者が一体でシェアリングシティ実現へ
この日は、シェアリングエコノミーを推進している5都市の首長らがプレゼンテーションを行った。長崎県島原市 古川隆三郎市長は「これまで当市は観光の司令塔が不在だった」と話し、従来の観光関連団体を解散して、新たに島原観光ビューローを設立したことを発表。島原城の天守閣などの観光資産をシェアリングエコノミーによって活用していく考えを明らかにした。
佐賀県多久市は、クラウドソーシングサービス「クラウドワークス」と提携して、在宅での仕事を推進している。横尾俊彦市長はシェアリングエコノミーについて「大変大きな可能性がある」と話す。
静岡県浜松市は、2016年4月から若手職員をスペースマーケットへ出向させ、シェアリングシティを推進させるための人材育成を行っている。鈴木康友市長は「浜松市は道路も橋も日本一たくさん保有している。ファシリティマネジメントに取り組んでいる浜松市にとって、シェアリングエコノミーは課題解決に役立つだろう」と展望を語る。
千葉県千葉市は、スペースマーケットと提携して、MICE誘致に大きな効果を発揮するユニークべニューの活用を推進中だ。熊谷俊人市長は「国や事業者とともに、できるところから始めたい」と話す。
秋田県湯沢市は、同じ幼稚園・保育園や小学校に通う子どもの親や近隣住民らが、子どもの送迎や託児を頼り合う仕組み「アズママ」を立ち上げ活用している。藤井延之副市長は「地域ぐるみで子育てをしているエリアは出生率が高いようなので、アズママをこれからも推進していきたい」と、アズママへの期待を語った。
登壇者のプレゼンテーションからは、国、自治体、事業者が一体となって「シェア」というアプローチから課題解決に取り組んでいく熱意が伝わってきた。シェアリングエコノミーが、経済の拡大と人々の豊かな暮らしに役立つよう期待したい。
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