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【第7回】同時開催は誰のため? B to B マーケター庭山一郎から見た 展示会エトセトラ
- 2017/1/29
- Column, シンフォニーマーケティング
私の会社は、クライアント企業のデータマネジメントと分析を生業としています。
お預かりしたクライアントの顧客データを精緻に分析すると、出展する展示会によって収集するリードの質が異なることに気がつきます。しかも、規模が大きな展示会でクライアントもそれなりに大きなブースで出展した時の方が良くないのです。さらに調べてみるとどうも原因は同時開催でした。
主催者は同時開催の総来場者数をアナウンスしますから、出展する側は自社のターゲットがそんなに集まるのなら、と予算を組んで大きなブースで出展します。しかし、この数字は「同じ主催者によって同時に開催される複数の展示会の合計」ですから、全来場者に占める自社ターゲットの含有率は、同時開催の展示会の数が増える程どんどん低下していきます。
たとえ売り物が違っても「ターゲットは一致する」というケースはもちろんあります。機能性樹脂と半導体デバイスは、電子デバイスとそのハウジングという関係になりますから、ターゲットは電子部品メーカーの設計者で一致します。高解像度の顕微鏡と試薬は、薬品開発やバイオテクノロジーの研究で使われますから、ターゲットは大学などの研究機関か、メーカーのラボに勤務する研究者で一致します。
このようにターゲットが一致するならまだ良いのですが、まったく一致しない同時開催で参加者を集めても、出展社も来場者も誰もうれしくない展示会になってしまいます。
これは私の予想なのですが、イベントを主催するサイドの人たちは、出展社が展示会で収集したデータを分析するスキルが急激に向上していることを知らないのではないかと考えています。
だから、同時開催イベントを増やし、総来場者を増やし、最終日には通路が人でごった返す様子を見て大成功、と言っているのだと思います。もうそういう定性的な評価の時代は終わりました。成功の定義は、「そこで集めたリードデータを精査した出展社が来年も出展しようと意思決定する」以外には無いはずです。現実はその逆に、データを精査した結果、もうその展示会への出展はやめる、という結論に至るケースが少なくありません。
私は、リードデータの収集という目的では、日本の展示会はとても有効だと考えて、クライアント企業に対して展示会に積極的に出展するようにアドバイスしてきましたが、それでも近年の同時開催には大いに疑問を感じています。