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【第9回】既存顧客を守るのに展示会は必要か? B to B マーケター庭山一郎から見た 展示会エトセトラ
- 2017/1/29
- Column, シンフォニーマーケティング
展示会に出展していない企業の方と話していると、その理由をこう説明してくれます。
「ウチはニッチな仕事なので新規取引ってほとんど無いのですよ。売り上げも既存顧客からが毎年90% 以上になります。既存顧客には営業や代理店がしっかり付いていますから、展示会には出ません」
でも、この考え方だと既存顧客を守れないかも知れません。
ABM という言葉をご存じでしょうか?マーケティングの先進国である米国で2012 年頃から普及し、今では大きなムーブメントになっているマーケティングの概念で、別の言い方をすれば、「営業視点で再設計されたマーケティング」と言うこともできます。このABM は既存顧客からの売り上げを最大化するという特徴を持っています。
ターゲット企業の中でメールや電話、対面などでコンタクトできる人間をコンタクトポイントと呼びます。存在は知っていても会ったことがない、メールアドレスを知らない、という人はコンタクトポイントではありません。情報を送ることが出来る、つまりコミュニケーション可能な人間だけをこう呼びます。
既存顧客を「点」ではなく「面」で守るにはこのコンタクトポイントの数が重要な要素になります。
「既存顧客は担当営業や代理店がしっかりフォローしています」もよく聞く説明ですが、毎週顧客企業を訪問している営業でも、訪問するのは同じ部署で会うのは同じ人、というケースが圧倒的です。つまりグリップしているように見えても「点」でしか繋がっていないのです。
この問題に対する答えは、その顧客企業内のコンタクトポイントを増やすことで、営業個人の「点」でも、部署としての「線」でもなく、企業全体の「面」で関係を再構築することです。これが、既存顧客からの売り上げの最大化を目指す最適な方法であり、ABM なのです。顧客企業内の営業が訪問していない事業所や部署でのコンタクトポイントを増やすために、私は展示会を積極的に活用することを提案しています。工業用ロボットの設計者が集まる展示会、IoT の研究開発部門の人が集まる展示会、物流企業の情報システム部門の人が集まる展示会、そうした顧客内の他部署のコンタクトポイントを増やすために、展示会は非常に重要な意味を持つと考えています。
個人に依存した「点と点」の関係より、複数の部署に対して、多くの製品やサービスによって「面」で繋がる方が顧客を守れるのは言うまでもありません。