二度見させる仕掛けー丹青社クロスメディアインキュベートセンター
- 2017/3/1
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パシフィコ横浜で開催された商業空間ビジネス向けの展示会「SCビジネスフェア2017」で、会期の3日間でもっとも二度見されたブースと言ってもいいのが、丹青社のブースだ。
丹青社は、「まちの未来を描く~品川から望む風景~」と題し、アーティストのsense + KAZと丹青社の演出技術チームによるライブペイントで、3日間かけて作品を完成させた。初見では動くアニメーションに気を取られ、白い横長のキャンパスに映像を映しているかのようにみえて、どこか違和感を感じさせる。もう一度よくみてみると、画面にペンで直に描き足されていくパフォーマンスが同時進行していて、リアルとデジタルの融合した世界に、すっと足が引き込まれるという仕掛けだ。
「毎年出展し顔なじみのお客さまも多いのですが、ライブペイントにまず注目していただいたため、後からブースのロゴをみつけて、『あっ、丹青社でしたか』と驚かれることが多くありました」と、菅野敦夫さんは意図が伝わったことを楽しそうに話す。
このブースは、菅野さんが率いるクロスメディアインキュベートセンターのメンバーが手がけた。この2月に新設された、丹青社初の内装ハード以外を武器にしたICT・演出技術施策のセンターだ。
「狙いは、商業、文化、パブリック、ビジネス、ホスピタリティ、イベントといった、それぞれの空間領域におけるアイディアやノウハウを横断的にプロデュースして付加価値の高い提案をすること。たとえば博物館での空間づくりで培ったノウハウをメーカーショールームや店舗にも展開する、空間づくりに別の切り口から付加価値を与えるという試みです」(菅野さん)
またカテゴリー横断だけでなく、最新技術を集合知化する部隊でもある。プレゼンの時点から、パース図にデジタルサイネージのCG動画をはめこんで集客時のイメージも合わせて提案する、3Dウォークスルーによってひとの視点で空間を移動しながらシミュレーションができるように提案もする。「先端技術を使ってクライアントと絵を共有することで空間のイメージが膨らみ、意思決定の早さにつながっています」と菅野さんは、その後のブラッシュアップにもつながっていく表現技術による時短を、“時間価値の向上”とし、積極的に取り組んでいる。
現在センターには33人が所属しているが、外部クリエイターや研究者も引き込むことで、収益性を考える文化施設や時間共有できる商業施設など、空間づくりにイノベーションを起こしそうだ。
空間づくりって、つまり、そこでどんな時間を過ごすのかということ。時間に対する価値観の置き方も合わせて改革していこうとするスタイルは、空間デザインの概念も拡張させるのではないだろうか。
▽「まちの未来を描く~品川から望む風景~」
エフェクトアニメーションは、描き上げたライブペイントのデータを丹青社本社にいる担当者へ送り、街に明かりを灯けたり、花火を打ち上げたり、街に彩りを加える工程を遠距離操作でリアルタイムに進行した
【作品クレジット】
ビジュアルデザイン:渡部由香
映像・CG:清水隆弘/平野友宏/五十嵐優作
音響・ライブオペレーション:河村徹
アーティスト:sense+KAZ
(月刊イベントマーケティング20号「特集:リアル×映像・照明の体験」より)