「ユニバーサルキャンプin八丈島」のエッセンスを
ボッチャ、ブラインドサッカーなどを体験
「都心で開催しないと、2020年までに間に合わない」と話すのは、ユニバーサルキャンプTOKYO実行委員会メンバーである内山早苗さん。“ダイバーシティ(多様性を受け入れる)”のある共生社会の浸透、実現を訴える。内山さんは、2005年から「ユニバーサルキャンプin八丈島」を主催するユニバーサルイベント協会の代表理事だ。東京都・八丈島で毎年9月に開催される、2泊3日のキャンププログラム「ユニバーサルキャンプin八丈島」をダイバーシティの考え方のもと12年間継続して運営してきた。
4月28・29日に開催された「ユニバーサルキャンプTOKYO2017」は、八丈島だけでなく、都心でもダイバーシティの価値体験を伝えようと初開催されたイベント。場所は品川港南口から徒歩6分のシーズンテラス イベント広場と3階オフィスロビーで、イベント広場は都心の駅近であることに驚くほど広大な緑地が広がる。初日は平日とあって、スーツ姿の品川周辺のビジネスマンも多数参加しており、イベント広場の一角の「ブラインドサッカー」エリアでは、アイマスクをつけた丹青社の新入社員らが「はい、ボールいきます」と声を掛け合ってプログラムをさっそく体験している姿があった。
そのほかボッチャ体験など、体験プログラムとして用意されたものは実際に八丈島でのプログラムでも実施されており、八丈島では年齢や障がいの有無にかかわらず誰もが楽しめるスポーツを考えるというプログラムとしてルールづくりから考え、青空のもと実施していくものだという。今回の「ユニバーサルキャンプTOKYO2017」では、まずは競技として簡易体験を提供するという趣旨で小さなエリアで展開がされた。
ボッチャ体験には「テレビで観て、やってみたいと思っていた」という参加者もおり、ボールの重量感やプレイのむずかしさを身をもって体感していた。
29日の土曜日には交流プログラム「ダイバーシティ・コミュニケーション」も展開。交流を通じ、多様な障がいのあるひとたちを知ることを目的にユニバーサルイベント協会の特別講師たちによる体験型コミュニケーションも行われた。
誰もが楽しめるコンテンツと最新技術
展開されたコンテンツはいずれもユニバーサルキャンプin八丈島の考え方をベースにアレンジされたものだが、イベント用にステージでバラリンピアによるトークショー、手話パフォーマーやマイノリティー、人種差別、国際交流、異文化共存などをテーマに活動するミュージシャンによるエンターテインメントなど、純粋に楽しんでもらう要素も入っている。実際にエンターテインメントプログラムを実施したステージ前では、パフォーマー、ミュージシャンとインタラクティブなコミュニケーションを通じて一体感ある空間がつくられていた。
ユニバーサルキャンプTOKYO実行委員会のメンバーであり、都心版ユニバーサルキャンプの企画を提案し、模索してきた丹青社の関係者が、盛り上がるステージを目の当たりにして、「(ダイバーシティというテーマに都心にも)こんなにひとが集まる光景を目にする日がくるとは…」と感慨深げに言った一言が印象的だった。
そのほか、「ユニバーサルキャンプTOKYO2017」の運営では、みんなが一緒に楽しめるための最新技術もあった。ステージ脇のモニターに設置されていた「UDトーク」もその一つ。コミュニケーション支援・会話の見える化アプリで、トークショーやミュージシャンの発した言葉が即時に音声認識されテキストとして表示される。誤認識された音声は、その場でひとの手によって修正されるが、認識精度自体も上がっているという。また、VRによって体験を提供するブースも展開され、パラスポーツVRエンターテイメント「CYBER WHEEL」として、5つのステージを駆け抜けるタイムトライヤルを実施、車椅子型の専用コントローラーを採用し、体感スピードは世界のロードレースと同じ速さを再現。参加者はパラリンピアンのトップ選手のスピードを追体験した。
社会を変えるのは、企業から
今回の初開催した「ユニバーサルキャンプTOKYO2017」には、港区や港区教育委員会、東京都のほか、港南振興会という港南地域の企業会を巻き込んだ。品川駅の港南口には実際に大企業も多い。内山さんは、「品川からダイバーシティを広げようと、地域を巻き込んだ街づくりも含めてやりましょう」となり、輪が広がったという。「私は、社会を変えるのは企業が変わらないと、変わらないと思っています」とも話す。
「企業もいま悩みが多いんです。ダイバーシティを進めなければいけない、障害者の雇用も進めなくてはいけない、差別はしてはいけない、高齢者も雇わなくてはいけない、高齢者も定年が伸びるのでいつまでもいてもらわなくては困ると、企業はこれまでの考え方で仕事をしていたら立ち行かなくなってしまうんです。だったら、ダイバーシティを逆手にとって、それを戦略として価値と捉えて、多様なひとたちを行き来できる環境をつくっていけば自ずと企業は元気になるし、商品もサービスも自分たちが提供するものが変わっていく。だからその捉え方を『こりゃ大変だ』とネガティブに捉えるというより『チャンスだ』と『戦略にしよう』と思ってもらいたい」
考え方の転換が必要ないま、そのスイッチになるイベントとなりそうだ。