特集 集客力の正体
- 2019/5/7
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集客力って一体、なんだろう。
要素が複合的に重なっていそうだけれど、因数分解してみたらきっとその正体がみえてくるはず。
CASE 01
5,000 名超えのビジネスカンファレンス
Sansan Innovation Project 2019
企業・ブランド名を冠にしたブランディング目的のイベントはBtoC 企業だけでなく、さいきんはBtoB 企業でも多く開催されている。規模も大きくなっていたり、スタイルも多様化したりと変化している。
ユーザー会やコミュニティといったイベント、業界展示会とは、規模や主体が異なる企業のビジネスカンファレンスは、どのような集客を行っているのだろうか。タッチポイントを数多くもちたいけれど、ある程度セグメントされた質も担保する、こうした集客の実現にはどんなポイントがあるのだろうか。
クラウド名刺管理サービスを提供するSansan では今年3月、主催したビジネスカンファレンス「Sansan Innovation Project2019」で5,150 名を集めた。この規模ではめずらしく「集客についてはすべて内製化している」と話すSansan マーケティング部の松尾佳亮さんは、同イベントを全体統括し、集客のプランニングから実務までを担当したという。
開催から1ヶ月が経過し、現在はパートナー企業、参加者からフィードバックを受けているところという松尾さんに、今回の「SansanInnovation Project 2019」を振り返っていただき、集客力の正体を直撃した。なお、項目は編集部が8つを抽出。松尾さんには、それぞれの項目ごとに集客への貢献度という観点から5点満点評価で自己採点してもらった。
タイトル:3点
「Sansan Innovation Project 2019」と今回シンプルなタイトル。2016 年に第1 回目をスタートしてから2018 年まで付けていた副題を思い切って取っている。「原点回帰ですね。働き方改革のサブテーマは時代と合わせて『ちょっと未来の働き方(2016)』『働き方進化論(17)』『働き方2020(18)』と続けてきましたが、同テーマのイベントがでてきたこと、また、4回目でリピート参加の方も増えてきたことから、“Innovation” という本来の大テーマのみにしました。ただ、集客貢献度としてはそこまで高くないと感じています」
企画:5点
「企画=キャスティングというくらい、ほぼ同義と捉えると、どちらも5点。もっとも貢献していると考えます。テーマ設定、意外性ある組合せなど、“Innovation” というキーワードを表現する企画に注力しました」
企画実現にはアドバイザリーボードの導入、集客アップのための社内コンテストなど、企画力を活用して社内外を巻き込んだ。
タイミング:3点
「3月開催は実は歩留まりが悪いんです。タイミングとしては3点ですね。それほど低評価にしなかったのは、事前に予測はあったので、集客スタート時期を考慮したことです。VIP向け、一般向けと2つに分けて、早めに取組みました」
VIP 向けの集客は、営業部との協力で昨年10 月末からスタート。「普段は連絡が取りにくいような方にイベントをきっかけにアポイントを取る」という形で実施。実来場500 名、登録700 名を目標に置きスケジュール管理した。一般向けは年明け1月7日にスタート。松尾さんは開催まで1日平均100 〜120 名の登録を目標にデイリーリポートで管理していたという。
キャスティング:5点
セッションはスポンサー枠を含め全体で120名のスピーカーが登壇している。
「基調講演のキャスティングはVIP 向け集客スタートの昨年10 月末に合わせて8月から動きはじめていました。一般向け集客開始の1月には約6割のキャスティングが決まっている状態でした」
キャスティングの選定は、アドバイザリーボード制を初めて導入。良質なセッションアイデアの提案、イベント登壇以外にも営業や研究開発分野でコラボ推進、スピーカー招聘などをする役割で、11 名のメンバーとともに、全体の3割のスピーカーを決定した。
ターゲティング:2点
「ターゲティングをそれほど絞らずに実施しました。Sansan のサービスがあまり業種・業態を選ばないため、そういう意味では貢献度は低いかなと思います。結果的な満足度の話になってしまうのですが、強いて言えば、情報感度、IT リテラシーの高い方の参加が多く、出展された企業から『最初から踏み込んだ話ができた』とよろこばれました。集客力のあるキャスティングではありましたが、テーマに沿わないスピーカーを入れなかったことも影響していると思います」
メディア:4点
「もう少し異なった新しい媒体も探したかったという反省を込めて4点です」
集客媒体は大分類で10 個の項目で展開したという。①日経関連の媒体、②マーケティング部に蓄積された見込み顧客データおよび、法人向け名刺管理サービス「Sansan」を利用した社内人脈、③既存顧客、④法人向け名刺管理サービス「Sansan」ログイン画面での広告実装、⑤ Web メディアでの記事広告⑥Facebook 広告、⑦チラシ配布、⑧ Google広告、⑨集客コンテストの実施(社内)、⑩その他(各種メディア記事、SNS 発信)。 予算:3点 「集客の予算は昨年比2割減でしたが、1.8倍の参加がありました」予算があるに越したことはないが、ありきではないようだ。
その他(社内体制):5点
「集客にはひと起点が重要です。社内協力はとても大事なポイントです」
上記の7項目以外に、大切なポイントとして挙がったのが「社内体制」。現在400 名の社員がいるが、特に営業やカスタマーサクセスの担当者には、売上に直結する場としてイベントの活用イメージを過去3回の実績から共有するなどして、集客のモチベーションアップにつなげたという。また、集客コンテストを企画し集客自体をイベント化したりと巻き込んだことが大きかったと話す。
Sansan Innovation Project は、2016 年にブランディングを目的にスタートした年1回の大きなイベント。
参加者数が約3,000 名と、前年比2倍近くに伸びた2018 年からは売上戦略としての位置付けにシフト。社内協力の仕掛けづくりも明確になって、大きな集客チャネルとして貢献しているようだ。
5,000 名以上のビジネスカンファレンスで集客を担当する機会はそれほど多くはないかもしれないが、一つひとつの項目をみていくと集客に直結するスケジュール管理の大切さ、巻き込む仕掛けなど、小規模のイベントにもヒントとなるようなポイントが読みとれる。
CASE 1.5
エンジニア向けイベント 「Sansan Builders Box」の場合
(2018 年11月10 日(土)開催)
タイトル:1点
初めてのイベントで、タイトル以外に注力すべきことがたくさんあったため、集客のフックになるようなサブタイトルなどをつけることができなかった。
企画:5点
イベントとしての知名度は0 の中、Sansan エンジニアが「Sharing Knowledge」というテーマでセッションを企画し、様々な分野の技術について現場目線で語るというコンテンツに期待いただき来場いただけたと感じている。
タイミング:2点
ものづくりに関わる人達は概ね学習欲が高く、情報収集のためには休日であっても勉強会等に参加している層が多いという仮定のもと、また、会社(所属組織)からの参加許可を得るといったハードルをなくすためにあえて休日に開催してみたが、特段それが集客にプラスに働いたわけではなかった。(平日に行うイベントとほぼ変わらない歩留まりだった。)
キャスティング:3点
理由:「企画」と繋がるがSansan に所属するエンジニアだけで構成した点がよかった。しかしながらセッション内容と紐付いて初めて成立するのでキャスティングのみという観点では集客貢献度はさほど高くない。
ターゲティング:4点
エンジニア(ものづくりに関わる人たち)に特化しているためターゲットは明確で集客も行いやすかった。
メディア:4点
理由:ターゲティングと紐づくが、エンジニアがよく利用するメディアに絞ったことでノイズ無く集客に貢献。
予算:2点
装飾や懇親会、手土産などそれなりに予算をかけたが、特に事前にそれらを訴求していたわけではないので集客への貢献はそこまでない。次回以降のリピーター増加のための投資と見ています。
その他(ブログ)
弊社技術ブログもこのイベントと同名の「Sansan Builders Box」で公開しており、その初回リリースをイベント開催時期に合わせたことで両方の認知を上げることができた。
ブログの閲覧数も伸びており、次回のイベントはその読者も巻き込みさらに集客を加速できる見込み。
Sansan 株式会社
マーケティング部
松尾 佳亮さん
CASE 02
プロレス興行の新規ファン獲得策から学ぶ
予算がないけど集客するヒント
ネットからリアルへの集客支援をテーマに、ソリューションを提供するリアルクロスの代表取締役社長山口義徳さん。プロレスの興行やサッカーJリーグ、バスケットボールBリーグなどスポーツイベントでの来場者数アップ施策を手がけてきた。チーム・団体からの依頼で多いのは「予算がないけど集客したい」という本音だ。
山口さんはこの声を受け、団体の予算と初心者の来場マインドのハードルをどちらも下げる、チケットアフェリエイトという新しい集客サービスをつくった。ファンの外へと訴求する強力な販売ルートを成果報酬型で提案する。
「初心者には応援ルールや服装など楽しみ方を伝えたり、女性用にかわいいグッズがあったりと一般層に向けて訴求しないと収益も集客も伸びません。玄人目線のこうあるべきより、チャレンジ精神のある集客が必要です」
集客支援の立場から山口義徳さんのみる
プロレス興行での集客貢献度(5点満点評価)
タイトル:2点
ネーミングセンスは大事。
企画:5点
プロレスの企画力は、マッチメーカーの生み出すカードと因縁対決などストーリーづくり。
タイミング:4点
どの興行でもそうですが、大会・試合は土日が大入り。月曜日はひとが入りません。
キャスティング:5点
企画と似ていますが、マッチメイクのキャスティングは大事。新規層への集客には若手のスターなどを育成しているかが問われます。
ターゲティング:3点
もし自分たちの団体に合う客層ばかりをターゲットにしていたら当然ですがシュリンクしていきます。理想的な割合はマニア1:固定客6:新規客3ですね。マニアは「あのひとが言っているんだから行かなくちゃ」といった価値観の選定になる存在。
メディア:4点
プロレスメディアなどは、選手の人間性をみたり、ストーリーを感じるうえできっかけになる存在です。ちなみに一般メディアなどでは単発的だったり、web専門メディアは有料だったりのなかで、弊社の「プロレスTODAY」は無料で楽しめるNEWSサイトですよ。
予算:1点
実際に単独黒字を出している団体はほぼありません。予算も少ないのが現状です。
その他(場所):5点
現在プロレス団体は国内で300ほどあって、主要20団体は東京が多いんです。地方分散が必要だと思っています。
株式会社リアルクロス
代表取締役社長 山口義徳さん
集客ツール(1)イベントレジスト
来場者の特性でターゲティング
FacebookなどSNS広告で集客しているイベント主催者は多い。しかしFacebookの強みである興味・関心によるターゲティングは、自分のイベントにあったキーワードを設定できないことも多い。そんな悩みを解決するのが、イベント管理プラットフォームのイベントレジストが、提供する新たな集客サービス「Facebookイベントレジストデータ拡張配信」だ。
イベントレジストが採用されている多くのイベントのなかから、カテゴリーごとに分類された来場者の、性別・年代・興味関心・行動履歴の共通項を抽出し、類似ユーザーをターゲットにしたFacebook広告を配信する。イベントのカテゴリーは、マーケティング、環境・エネルギー、飲食店経営など、ビジネス系12、テクノロジー系14、マネー5、ライフ11の詳細に分類されており、ユーザーを絞り込んで効率的な配信ができる。
予算内で配信希望回数・人数に到達するように、カテゴリーごとに類似性を調整して運用していく。出稿料は表示回数によるCPM課金で、予算感は配信数とカテゴリーによって異なる。例えば、ビジネス系イベントでの想定配信設計は、4万人に各5回配信で20万円程度、テクノロジー系で東京都の地域指定では15万配信で20万円程度、マネー系で女性20〜30代、東京に市域指定で5万配信で10万円といった、想定配信シミュレーションが可能なので、相談してみよう
自分のイベントにあった集客のスタイルをみつけだそう。
イベントレジスト株式会社
岸田真由子さん
集客ツール (2) スプラシア
手軽な動画制作で魅力伝える
ちかごろはティザー動画やイベントのイメージ、主催者のメッセージなどの動画を、イベントの告知・集客で活用することが多くなっている。とくにモバイル端末用の、手軽に低コストで何本もつくれる動画制作サービスの需要は伸びているようだ。
展示会やイベントを手がける博展のグループ企業スプラシアは、初期費用・月額費用なしで、1本5万円からの動画制作サービス「CM STUDIO」を提供開始した。
不動産・医療・イベントといった“業界”、会社紹介や採用といった“用途”、“秒数”、“画角”を選びそれにあったテンプレートに、自社で所有している写真・動画素材やテキストを追加するほか、提携しているアマナイメージズ、オーディオストックの写真・映像・音源も使用して制作が可能だ。無料のナレーション機能もある。テンプレートは得意分野が異なる複数の映像制作会社と提携しており、人材採用、会社紹介、イベントや展示会のアタック動画など実用性の高いものが揃っている。今後も月に50種類のペースで追加していく。
また、アシスタントモードでは、動画のテーマ、長さ、画角など、会話形式で質問に答えてロゴや写真素材をアップロードするだけで、品質の高い動画広告を制作、およそ5分後にはサンプルが見れるようになる。相応しい画像がなければ、アシスタントが素材のなかから適宜選んでくれる。動画の制作は何本でも無料で、気に入ったものを購入する際に費用が発生するため好みに合うものができるまで、何度も試すこともできる。
多くの映像を作成する企業にむけて月額プランも用意されている。多くの動画広告を駆使して、ターゲット別に個別のアプローチをするなど、多様な施策がうてそうだ。
株式会社スプラシア
代表取締役社長
中島優太さん