配信に振り切った コロナ禍の施設の在り方を考える【特集】イベント会場と都市づくりを つなぐ人 より

フクラシア配信サポートサービス

フクラシアのブランド名で、貸会議室、イベントホール、宿泊施設の運営を行うマックスパートが2021 年1 月に開始した「出張型フクラシア配信サポート」。貸会議室の会社が部屋を貸さずに、利用者のオフィスでオンラインイベントができるサービスをはじめた。

ハードとソフトの環境整備

コロナ禍のイベント開催制限により同社の運営施設は、2020 年度の宿泊研修型ホテルの稼働が前年比70%減、貸会議室が50%減と、他社施設同様に厳しい状況になっている。

そのなかでマックスパートの会議施設フクラシアではオンラインイベントが約1,500 件行われている。そのニーズに応えるため、東京駅周辺のフクラシアブランド、東京ステーション、丸の内オアゾ、八重洲(東京)の3施設とフクラシア品川クリスタル(港南)に法人専用回線を導入するなど通信環境の整備、配信関連機器の拡充も行った。

ハード面だけでなくソフト面でのデジタル対応も進める。配信チームだけでなく、営業や会場担当など全スタッフを対象に、2か月半にわたり、週1 回オンライン知識を高める勉強会を実施した。利用者との打合せに、会場レイアウト図に加えて、配信システム構造図も使うようになった。

配信サポートを事業に

感染拡大第二波、第三波という言葉がメディアを賑わすと「コロナ終息まで待ってリアルイベントで取り返す、という考えから、このままイベント制限が続く覚悟で配信サービスを拡充し新規取組みに挑戦するように変わってきた」と亀田さんは、2020 年10 月にプロジェクトを開始し今年4 月にスマートコミュニケーション推進事業部が設立した背景を語る。

「100 点の満足でなく、120%の感動を提供して、ファンをつくろう」という同社の片山達哉社長の言葉がフクラシアのコンセプトになっている。「会議室をお貸しするだけでなく、お客様がイベントを通じてなにを実現したいかを理解し一緒に考えています。イベントが開催できない状況をどう改善していくか相談しあった結果、配信のサポートをすることになりました」と亀田さんは言う。

今年1 月には、出張型フクラシア配信サポートを開始。利用者のオフィスに機材を搬入設置、配信を代行する。貸会議室の事業とバッティングするようにも見えるが「お客様の課題解決という意味では同じ」(亀田さん)。

マックスパートではケータリング事業も行っており、亀田さん自身も担当していた。貸会議室としては競合の別会社施設にもサービスを提供するのも「特別なことではない」という。ホテル事業で培ったホスピタリティの高さは、コロナ禍で新しい需要となる企業の配信でも効果を発揮しそうだ。機材が多くスタッフもいかにも“ 現場” という雰囲気ではなく、ホテル並みの対応をすることで企業トップやVIP 登壇でも安心だ。

もちろん、フクラシアのデザイン性が高い会場から配信・収録はさらに上質な接遇をしながら配信・収録も行うことができるので、コロナ終息後の稼働回復にも一役買いそうだ。

会場の枠を超えた事業展開が、新しい会場の価値を見出していく。

亀田 直人 さん
株式会社マックスパート
スマートコミュニケーション
推進事業部
2007 年4 月 に入社。
2018 年ケータリング事業部 マネージャーを経て、
2019 年ホテルフクラシア晴海 支配人に
2021 年4 月 新事業、スマートコミュニケーション
推進事業部 事業部長に就任。

 

 

 


コロナ禍と緊急事態宣言によってイベントのリアル開催がことごとく中止・延期になり、厳しい状況に追い込まれたイベント施設の担当者たち。そのなかから、配信サポートを事業として立上げ、リアルイベントと競合ともなりえるオンラインイベントのサポート・推進をはじめた、マックスパート。

フクラシアのブランドで展開する貸会議室やイベントホール運営会社の危機を、真逆の事業に取り組むことで救うことができるか。

月刊イベントマーケティング70号(4月30日発行)の特集「イベント会場と都市づくりをつなぐ人」より

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