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40年の歴史と蓄積したノウハウ、安全への取組みで展示会の聖地に インテックス大阪
- 2025/4/9
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イベント会場特集:特集 聖地巡礼・進化するコンテンツと 機能するインフラ
40年の歴史と蓄積したノウハウ、安全への取組みで展示会の聖地に
一般財団法人 大阪国際経済振興センター(インテックス大阪)インテックス事業本部 係長(営業・催事運営担当)田口 勤さん インテックス事業本部(営業・催事運営担当) 中村 磨里奈さん
大阪の南港に位置するインテックス大阪が今年で開業40周年を迎える。第1回日本国際工作機械見本市(JIMTOF)が開催された大阪国際見本市港会場から移転し、1985年に開業した同施設は、西日本最大の国際展示場として、関西経済の発展に大きく貢献してきた。7万平方メートルという広大な展示面積を誇り、多様なイベントが開催されるインテックス大阪は、どのように「聖地」としての地位を確立してきたのか。その歴史と現在、そして未来について探る。
西日本最大の展示会場として発展した40年の歴史
インテックス大阪の前身は、1954年に日本初の国際見本市が開催された大阪国際見本市港会場だった。当時は港区の八幡屋公園にあり、総展示面積は27,116㎡。しかし、展示会場の需要は日増しに増加し、1984年に開催された第16回大阪国際見本市では6館もの仮設展示館を建設する必要があったという。
また、老朽化が進んできたこともあり、港会場に代わる新たな国際見本市会場が望まれるようになっていった。こうして現在の南港の地に、展示館7館、展示総面積45,000㎡の規模を有する新たな国際見本市会場「インテックス大阪」が誕生した。
開業以来、「ものづくりワールド大阪」「国際アパレルマシンショー(JIAM)」などの産業展示会をはじめ、G20大阪サミット(2019年)などの国際会議から人気アイドルグループの握手会まで、多種多様なイベントを開催。その実績がインテックス大阪のブランド力向上につながり、国内外から展示会・イベント会場としてのニーズが増えている。
インテックス大阪の運営母体となっているのは一般財団法人大阪国際経済振興センターだ。インテックス大阪を管理運営するために設立された組織で、現在は鹿島建物総合管理株式会社との共同企業体(JV)を結成し、施設の管理運営を担っている。鹿島建物総合管理がハード面の施設管理や修繕工事、日々のメンテナンスを担当し、財団側がイベントの営業やオペレーションを担当と、役割分担している。
「インテックス大阪の管理運営だけでなく、展示会の誘致を通した大阪の国際的な経済への寄与が、私たちの大きな役割です」と田口さんは強調する。大阪市の経済戦略局が管掌しており、インテックス大阪は市の経済振興策の重要な一翼を担っている。
東京一極集中の状態で差別化戦略
日本の展示会産業は東京に一極集中する傾向があり、東京ビッグサイトが中心的存在となっている。そうした中で、インテックス大阪はどのような差別化戦略を取ってきたのだろうか。
「西日本地域で70,000㎡の規模を誇る展示会場はインテックス大阪のみという最大の強みを活かして、日頃から主催者とのコミュニケーションを欠かさないようにしています」と田口さんは語る。
営業活動においては、関東圏の会場で展示会を開催している主催者に定期的にアプローチしているという。多くの場合、主催者は東京で展示会を立ち上げ、それを育てた後で関西マーケットにも進出するというパターンが多い。
「BtoB展示会は東京からスタートして、その後関西マーケットも開拓したいということで大阪でも開催するケースが一般的です。大阪・関西万博の開催やIRの開業(2030年)など、大阪・関西の経済が今後ますます賑わっていくことが期待されるため、今がまさに大阪へ展示会を誘致する絶好の機会です」と田口さんは説明する。
「安心・安全」を最優先するオペレーション力
インテックス大阪が聖地としての地位を確立できた大きな要因の一つに、その優れたオペレーション力がある。7万㎡の大型会場で年間200件以上の展示会・イベントを滞りなく無事に開催するために、それぞれの主催者との打ち合わせやイベント間の調整など、オペレーション担当の存在が欠かせないものとなっている。
「同じ日に2つ、3つのイベントが開催されていることが多いんです。それぞれの主催者は自社のイベントの成功に注力していますが、我々は各イベントの成功をサポートさせて頂きながらも施設全体をコントロールしていく必要があります」。
この調整役を担うのが中村さんらのオペレーションチームだ。中村さんは次のように説明する。「事前に図面や運営計画をチェックして安全性を確認したり、イベント同士の干渉が起きないように調整をしています。また、主催者からいただく運営面の相談に乗ることもあります。さまざまなセクションの方と連携を取りながら、とにかくイベントが安全で円滑に開催いただけるよう動いています。」
特に力を入れているのは安全面だ。インテックス大阪は大規模展示会場として唯一、「安全大会」を開催し、展示会・イベントの設営に携わる方への安全啓発活動を実施している。「安心安全というキーワードを施設運営の大前提として掲げており、2017年から開催している安全大会を通じて、搬入出作業に携わる方々に対して安全面の啓発を根気よく続けてきた結果、開業以来大きな事故なく運営できています」と中村さんは言う。
「痒い所に手が届く」細やかな主催者サポートを日々実施しているのもインテックス大阪の特徴だ。開業から40年にわたり、インテックス大阪が会場として選ばれ続けてきたのは、ハードだけではなく、ソフト(人)の面で尽力してきたことが大きな要因となっている。
さらに、近隣の住民や施設に配慮した運営も行っている。「近隣には住宅地や小学校があり、インテックスの前が通学路にもなっています。地域の皆様にご迷惑をおかけすることのないよう、細心の注意を払って日々の施設運営を心掛けています」
緑のある開放的な空間やベイエリア連携 個性と地域の力もブランド力に
インテックス大阪の施設的な特徴として、1号館から5号館がコの字型に配置され、中央に広場があるレイアウトが挙げられる。インテックスプラザとスカイプラザという広場があり、そこでオープニングセレモニーの実施や入場待機列の形成などができる。「緑のある開放的な空間を持つ展示会場は全国的にみてもインテックス大阪だけではないでしょうか」と田口さんは語る。
3号館と5号館は柱がなく、大人数での式典やパーティの開催にも対応しており、海外からのインセンティブ案件なども近年需要が高まっている。
また、ATCなど近隣の施設と「大阪ベイエリアMICE」を立ち上げ、大阪・関西万博の開催や2030年のIR開業により、世界最高水準の国際観光・MICE拠点となる大阪ベイエリアの経済活性化を担うべく、活動を行っている。
「以前より定期的な会議を実施し情報の共有とベイアリア活性化のためのアイデア出し等を行っています。また、2024年5月には同エリアへの国際会議や大規模展示会の誘致、主催者支援およびサステナブルの取組み強化を目的とし、包括的連携協定を締結しました。」と田口さんは説明する。大規模展示会場、宿泊施設、会議室など、それぞれの強みを活かし、お互いに足りない機能を補うことで、ベイエリアへのMICE誘致に取り組んでいる。
自らMICE産業の振興を担う Japan MICE EXPOを開催
大阪国際経済振興センターはインテックス大阪の施設管理・会場運営事業だけでなく、MICE業界の振興・発展、業界全体のネットワーク強化のために「Japan MICE EXPO」を開催するなど、自主企画事業にも取り組んでいる。「大阪・関西経済の振興につながるという想いから、私たちもMICE業界の一員として業界の発展に貢献していきたい」と田口さんは話す。
開業以来40年の中で培った経験を活かし、MICE業界全体のプレゼンスを高め、ネットワークを強化する役割を担い、大阪・関西の経済に貢献することで、インテックス大阪の稼働率アップにも繋がると考えている。
「MICE業界の次世代人材育成にもフォーカスし、業界全体で取り組めるような仕掛けを我々が中心になって作っていきたい」と田口さんは意気込みを語る。
また、かつての大阪国際見本市委員会から引き継いだ事業もある。毎年9月に開催される「浙江省輸出商品(大阪)交易会」や、テレビ大阪エクスプロと共催する「防犯防災総合展」などがその例だ。その他にも、今年で第10回目を迎える「関西教育ICT展」は、テレビ大阪エクスプロや日本教育情報化振興会(JAPET&CEC)と共同で立ち上げた展示会で、毎年高い評価を得ている。
万博、IRを見据えた未来への展望
2025年に開催される大阪・関西万博に関連・連携した展示会として、医療機器・ヘルスケア関連製品の国際見本市「Japan Health」と、モノづくりやロボット関連、先端テクノロジーなどの優れた製品・技術が集まる展示会「未来モノづくり国際EXPO」が開催される。
さらに、2030年頃にオープン予定の統合型リゾート(IR)についても視野に入れる。「当初はIRにも10万㎡規模の展示場を作る構想もありましたが、現在は2万㎡からのスタートになる見込みです。そのため、インテックスも引き続き大きな役割を担っていくことになります」と田口さんは言う。
IR開業後の大阪・関西へのMICE誘致件数の増加を見据えて、インテックス大阪は2027年度より長寿命化のための大規模改修工事を実施し、国際見本市会場として万全の体制を整える計画だ。大阪市はプロポーザル方式でIRとの共存を視野に入れた施設の在り方についてのアイデアを募集している。
ソフト面での発展への取り組み
ハード面の整備だけでなく、ソフト面での発展も重要な課題だ。特に近年は万博を契機に海外からの問い合わせや案件が増えており、対応力の強化が急務となっている。
インフォメーションセンターに多言語通訳ツールを導入するなど、コミュニケーションに支障がないよう対策している。
中村さんも「主催者のニーズは年々多様化しており、次々と新しい仕掛けを取り入れられているので、インテックス大阪としてもできる限りご要望に応えられるよう、ブラッシュアップしていきたい。また、来場者へのサービス面においてもより便利で快適に過ごしていただける施設を目指したい。」と語る。
イベント会場の「聖地」としての存在感
2025年で開業40周年を迎えるインテックス大阪。西日本最大の展示会場として培ってきたブランド力、安心・安全への徹底したこだわり、柔軟できめ細やかなオペレーション力が、インテックス大阪を“聖地”と呼ぶにふさわしい存在にしている。
「時代によって人気のあるコンテンツは変わります。アンテナを張っておいて、次のトレンドがきた時にすぐに対応できるようにしておく必要があります」と田口さんは言う。
自らMICE産業の振興役を担い、ベイエリア全体の発展を視野に入れた連携を進め、大阪・関西万博やIR開業という大きな転機を控え、インテックス大阪はさらなる進化を遂げようとしている。
70,000㎡の広大な展示スペース、緑あふれる開放的な空間、複数イベントの同時開催を可能にする高度なオペレーション力。そして何より、40年間無事故で運営してきた安全への徹底したこだわり。これらがインテックス大阪の強みであり、今後も西日本の展示会産業の“聖地”として発展していく原動力となるに違いない。
西日本の展示会産業を支え続けてきたインテックス大阪は、大阪・関西の経済振興の要として、そして次の50年、60年に向けて、新たな歴史の1ページを刻み始めている。