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eスポーツ・アーティストイベント 行き過ぎた?高機能化とソフト面で”万能”の聖地へ ― イベントスペースEBiS303
- 2025/4/9
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- #特集_映像照明で体感する新たな世界観

イベント会場特集:特集 聖地巡礼・進化するコンテンツと 機能するインフラ
eスポーツ・アーティストイベント 行き過ぎた?高機能化とソフト面で”万能”の聖地へ ― イベントスペースEBiS303
スバル興産株式会社 EBiS303運営部 部長代理 阿部拓未 さん
1つの分野に特化するのではなく、どんなイベントにも対応できる“万能”の聖地へと進化した会場が、イベントスペースEBiS303だ。パンデミック時の対応から、驚異的な通信環境や高輝度プロジェクターといったハード面の充実と、経験豊富なスタッフによるきめ細かなサポートというソフト面を兼ね備え、企業の発表会、アパレル展示会からアーティストイベント、eスポーツ大会まで幅広く受け入れている。
イベントシーンの劇的な変化に対応するための万能化
JR恵比寿駅から徒歩3分。スバル興産が運営するイベントホールとカンファレンススペース「EBiS303」は、今年設立10周年を迎えた。この10年の間、イベントシーンの劇的な変化に柔軟に対応してきた。
「特定の分野に特化するよりも、どういう流れが来ても受け止められるように進化させてきた」と語るのは、スバル興産㈱ EBiS303運営部 部長代理の阿部拓未さんだ。
開業当初のEBiS303では、恵比寿という場所がらもあり、アパレル関連の展示・販売会場としての利用が多くを占めていた。しかし、業界環境の変化に伴い、状況は大きく変わっていった。
アパレル業界では、アウトレットモールの台頭やECサイトの浸透で、実店舗の余剰商品をセール会場に流通することが少なくなり、展示会やセール目的の利用は減少した。さらに2019年からのパンデミックによる打撃は深刻だった。
しかし、この危機が新たな方向性を模索するきっかけとなった。
次世代イベントを見据えたハードウェアの強化
この時期にEBiS303が注目したのは、他の多くの会場が注目した「オンライン」と「ハイブリッド」に対応する設備強化だった。しかし、他の会場と異なるのは、力の入れ具合。
EBiS303専用に光ファイバー屋外から引き込みビルテナントとの通信干渉を避け、更に“10Gbps回線を64回線”という驚異的な通信環境のインフラを整備した。プロリーグでも5~6回線使用するくらいした例があるくらいで、うちの回線余力はまだまだあり、利用者の使用意図に合った場所に開通する事ができる」という自信を持つ。これにより、現在よりもさらに高品質な映像配信や会場外の多数のプレイヤーとの対戦も可能で、発展を続ける今後のeスポーツ大会にも対応できる。
また、映像面では東京五輪2020大会に使用された50,000lmという超高輝度なプロジェクター製品を導入、多彩な映像演出への対応を図っている。
照明設備も充実している。保有しているスポットライトは300台以上あり、持ち込みなしてでも十分な演出が可能だ。また、電動で昇降ができる15基のグリッドバトンと14本のシングルバトンで、フレキシブルな映像・音響機器の配置が可能で、複雑で特殊な演出も実現できる。
華麗な演出を実現するための電力供給もけた違いだ。「建替えの際に、もっとも多く電力使うイベントを基準に最大供給337kVAを備え、電源車の持ち込みの必要がありません」と阿部さんは胸を張る。
ここまでの設備投資が可能なのは、施設オーナーのスバル興産がイベント運営者も兼ねているからだろう。会場賃貸料での投資回収ではなく、施設の付加価値向上という視点ならではの大胆な施策だ、と考えたようだ。
新たな需要の取り込み ―アーティストイベントからeスポーツまで
こうした高スペックな設備は、新たな利用形態を呼び込んだ。eスポーツについては、「専用設備のある会場には及ばない点もあるかもしれないが、オーディエンスを入れて行うプロプレイヤーの対戦を映像で見せるような、トーナメントの決勝戦や準決勝など、盛り上がりを見せるイベントには最適だ」と阿部さんは自負する。スタジオでは一般観客を入れる設定がほとんどないので、配信とリアル観戦の両立という点では、イベントホールに軍配があがりそうだ。
最近で顕著に増えているのはアーティストイベントで「2月の週末は、ミニコンサートと握手会やチェキ撮影会、トークショーなどが開催された」という。20〜30組が集まって、ライブ以外も物販などでホワイエに滞在し、同時進行で複数のグループが活動するような多彩な使い方が定着しつつある。
柔軟な運営体制がもたらす競争力
EBiS303の強みはハード面だけではない。柔軟な運営体制も大きな魅力となっている。例えば「直前割引」や「セレクトプラン」など、空き時間や空きスペースを有効活用する料金プランの導入だ。
「直前割引で1日貸すと通常より安く、さらに狭いエリアだけを使う『セレクトプラン』も用意しています」と担当者。当初は平均単価が下がることを懸念したが、「空いている時間が埋まり、備品利用などを含めると想定よりむしろ売上が上がった」という好結果につながった。
また、ワンストップの運営体制も大きな特徴だ。「打ち合わせから契約、利用、撤収まで基本的に1人の担当者が面倒をみるスタイル」を取り入れている。これはイベント運営に不慣れな利用者にとって大きな価値となっている。
「主催者や制作会社のご担当者に、タイムテーブルの組み方や、タレントの移動時間、裏動線、控室の確保など、我々の経験からアドバイスできることが多い」と話す。たとえば飲食関連では、保健所の届出が必要かどうかなど、経験豊富なスタッフがきめ細かくサポートする。
単に会場を貸すだけでなく、イベントの成功までサポートする姿勢が制作会社からの信頼を集めている。「一度利用したお客様からのリピート率は高く、お客様に『EBiS303のスタッフは頼りになる』と評価していただいているようです。」と阿部さんは笑顔で語る。
機材の取り扱いや会場特性を熟知しており、イベント中のトラブル対応も迅速だ。照明や音響の基本的なEBiS303の自社スタッフが対応し、専門業者との連携も密にとれる体制で2重の備えをしている。
「何でもできる会場」としてのブランド確立
EBiS303の歴史は意外なところから始まった。実はボウリング場の跡地を活用したのが始まりだという。「当時は富士重工業(現・SUBARU)が恵比寿地区に持っていたボウリング場があって、それが下火になった時に、レーンをなるべく改修しないでできることを考えた結果、ホールに転換した」と阿部さんは明かす。
そこからイベントシーンの劇的な変革に対応して、eスポーツやアーティストイベントの利用が増えているが、「今はありがたいですが、特定のジャンルに偏り過ぎないよう注意しています」と阿部さんは語る。目指すのは、どこかの分野に特化するというよりも、あそこの会場に行けば何でもできる、というブランドの確立だ。ハードとソフト両面の充実により、これからもイベント業界の変化に柔軟に対応していくだろう。