株式会社サンシャインシティ コンベンション事業部 エキスパートの上原良太朗さん

イベント会場特集:特集 聖地巡礼・進化するコンテンツと 機能するインフラ

アイドル系イベントと都市型展示会の聖地「サンシャインシティ」 

株式会社サンシャインシティ コンベンション事業部 エキスパート上原良太朗 さん

「アーティストの登竜門」として知られる噴水広場と多様な展示イベントに対応する展示ホール。アイドルライブから業界展示会まで、多彩なイベントが常に催されるサンシャインシティは、池袋のランドマークだ。数々の有名アイドルが立った噴水広場のステージ、そしてビジネス展示会から最新アニメの原画展まで開催されている展示ホール。東京屈指の複合型会場としての魅力の源泉を株式会社サンシャインシティ コンベンション事業部 エキスパートの上原良太朗さんにうかがった。

街づくりの理念が生んだコンベンションセンター いくつかのビルではなく“街”として設計された

サンシャインシティは1978年に開業した池袋東口の大規模複合施設だ。オフィスビル、ショッピングセンター、水族館、展望台などが集まる「街」として、池袋の一角を形成している。多くの展示会場やイベントホールが単独施設として建設される中、なぜサンシャインシティは商業施設やオフィスビルとともに複合施設の中に展示ホールを配置したのか。

「サンシャインシティは複合的な機能を持った施設で、一つの『街』として捉えています。多様な方々が集まる中で、展示ホールはこの『街』への集客装置の一つとして機能し、サンシャインシティというブランディングを構築する核となる役割を果たしています」と上原さんは語る。

開業当初の構想では、文化会館ビルには博物館や劇場などの文化的施設が配置され、展示会場は「文化会館ビル」に置かれた。

オフィスビルは毎日通勤するワーカーの利便性を優先し、イベント施設は開催時と非開催時の利用頻度の差を考慮して配置されたと上原さんは説明する。また、低層にバスターミナルを設置することで、広域からのアクセス拠点としての機能も備えていた。

文化会館ビルには博物館、劇場、スポーツ施設などが集められ、多目的な用途を想定。この「街」全体の集客を高める装置として、展示ホールは位置づけられてきた。そして現在は、ビジネス展示会からファンイベントまで、幅広いジャンルのイベントに対応し、地域全体の集客装置として進化している。

アイドルイベントお披露目サンシャインシティ 噴水広場

噴水広場でアイドルのイベントが行われるワケ

サンシャインシティの象徴的存在となっているのが噴水広場だ。現在では「アーティストの登竜門」と呼ばれ、新人アイドルのデビューや、CDリリースイベントの定番会場として定着している。

この噴水広場がアイドル文化の聖地となった経緯について上原さんは「噴水広場は開業時の1978年からありまして、施設全体のへその部分に位置しています。そこで常に面白いコンテンツを発信していく拠点にするというコンセプトがあり、オープニングイベントでは著名なアーティストの方々にステージに立っていただきました」と説明する。

開業当初からにぎわいを演出するイベントスペースだったが、時代とともに変化していった。ショッピングセンターの地下1階にレコードショップが入居していたこともあり、音楽系イベントが多く行われていた。1979年から80年代頃にかけて、デビュー間もないアイドルたちの利用が増え、徐々に「アーティストの登竜門」というイメージが浸透していったという。

噴水広場がアイドルイベントの定番会場になった背景には、場所の認知度と集客力の高さがある。また、ここでデビューした後に有名になったアイドルが多かったことで、ジンクス的なブランド価値も生まれた。

「屋内施設であることと、複合施設なのでファンだけでなく多様な人が集まるという質的な強みもあります」と上原さんは付け加える。

「アーティストの登竜門」はサンシャインシティが戦略的に打ち出したものではなく、自然発生的なブランディングだった。偶然の産物だったブランド価値だが、それを大切に育てていくことで、現在も音楽イベントだけでなく多様なイベントの場として活用されている。

 

進化するイベント会場としての機能と特徴 複合施設の強みが生む相乗効果

サンシャインシティの展示ホールの最大の特徴は、複合施設の中にあることで生まれる相乗効果だ。池袋という都心の好立地に加え、商業施設やイベント施設が集まることによる圧倒的な集客力を持つ。さらに、単独イベントではなく“面”での展開が可能な点も大きな強みだ。

施設内の噴水広場や商業施設、水族館、展望台なども含めた施設間連携により、複合的なイベント展開が可能になっている。例えば、夏休みやゴールデンウィークには、ファミリー向けイベントやアニメ関連イベントを開催する際、レストラン街とのコラボメニュー展開や、イベントチケットによる水族館・展望台の割引入場など、様々な仕掛けを提供している。

「イベントをきっかけにサンシャインシティに来たお客様に、施設全体を楽しんでいただくことで、施設のブランディングやプロモーションにもつながります」と上原さんは話す。

BtoB展示会においても、この複合施設の強みが発揮される。『インターナショナルプレミアム・インセンティブショー』や『焼肉ビジネスフェア』などのビジネスイベント開催時には、来場者の飲食ニーズにレストラン街が応え、出展者向けのアフターパーティーの場としても施設内のスペースが活用される。

アフターコンベンションのサポート面では、大型BtoB向けイベントで出展者を招いたパーティー会場を提供できる点が強みだという。イベント専用会場ではパーティーの開催は難しいが、商業施設であればレストランや店舗が常時揃っており、イベントの稼働日・非稼働日の差に関わらず、サービスを提供できる体制が整っている。

 

アイドルイベントを支える機能と対応力

アイドルイベントの会場として長い歴史を持つ噴水広場。その特徴は特別な設備というよりも、基本的な音響設備やオペレーター対応の充実、そして数年前に設置された大型ビジョンによるステージの魅力向上にある。

「屋内であることも強みの1つです」と上原さんは語る。競合となる同規模の会場と比較すると、屋外会場が多い中、天候に左右されない安定性は大きなアドバンテージとなる。雨天時でも確実にイベントを実施できることは、主催者にとって大きな安心材料だ。

また、アイドルイベントならではの運営ノウハウも蓄積されている。アイドルイベントはBtoBイベントと比べて、お客様の熱量が高く、対応も異なる。SNSでの拡散力も強いため、トラブル対応だけでなく、ファンを喜ばせる仕掛けも重要となる。

近年はVTuberやYouTubeゲーム配信者等のイベント需要も増加しており、顔出しNGの出演者へのエスコート対応など、専門的なノウハウも日々蓄積されている。

 

BtoCとBtoBで異なる運営ノウハウを蓄積

 ビジネス向けかエンタメイベントかでイベントでは対応すべき点も異なる。BtoBでは企業のブランドを背負った参加者が多く、商習慣など共通認識をもとにものごとを進められが、BtoCではお客様の熱量や行動特性に応じた対応が求められる。

アニメ系イベントや若年層向けイベントでは、熱心なファンの方が多く集まり、SNSでの拡散力も強いため、トラブル対応はもちろん、ちょっとした配慮や仕掛けが大きな効果を生むと上原さんは説明する。

サンシャインシティ 展示会 即売会

アニメ・サブカルチャーの聖地としての発展

近年のサンシャインシティで注目されるのが、アニメ・サブカルチャー関連のイベント増加だ。池袋自体がアニメの聖地として注目される中、サンシャインシティはその中核的な会場としての役割を担っている。

「池袋という街全体に年々アニメ文化が根付いてきています」と上原さんは指摘する。アニメイトを含め女性のアニメファンが集まる店舗が並んでいたことなどから、「乙女ロード」と呼ばれる女性向けアニメファンの聖地があるなど、街との親和性が高まっているという。

展示ホールではアニメや漫画の原画展が増加し、水族館や展望台などでもアニメとのコラボ企画が多数実施されている。例えば、アニメ「アオのハコ」とのコラボでは、水族館の水槽がアニメのワンシーンとして登場し、そこがファンの「聖地」となる仕掛けも行われた。

アニメのシーンのパネルを実際の場所に展示したり、描き下ろしイラストを使ったフォトスポットやグッズ販売を行ったりすることで、ファンを集客する工夫を施している。作品との接点は様々で、アニメ制作側からのオファーで作品に登場することもあれば、放送や映画公開に合わせたコラボが実現することもあるという。

また、「池袋ハロウィンコスプレフェス」は豊島区長や区の担当者、区内の企業、サンシャインシティの社長も参加していて、地域全体で盛り上げている。。渋谷や新宿のハロウィンイベントが混乱を招く一方で、池袋では行政と民間が協力し、秩序あるコスプレイベントを成功させている。

サンシャインシティで開催されるコスプレイベント「acosta!」では、ルールやマナーが厳格で、しっかりレギュレーションが定められていると上原さんは説明する。池袋ではそういった秩序あるコスプレの楽しみ方が定着している。

この背景には豊島区の「国際アートカルチャー都市構想」があり、サブカルチャーを街づくりの一環として積極的に取り入れる行政の姿勢もある。民間で育ったブランディングを行政がサポートし、さらに発展させる好循環が生まれている。

 

ビジネスとエンタメの両立がもたらす相乗効果 異なるタイプのイベントを同一施設で扱う意義

アーティスト(アイドル)イベントやBtoB展示会といった異なる性質のイベントを同じ施設内で開催する意義は何だろうか。上原さんは会場側の視点として、複合施設の魅力が多様な来訪者にあると説明し、イベントのバランスを取ることで様々な側面を見せていくことの重要性を指摘する。ビジネス向けイベント、アーティスト(アイドル)イベント、アニメイベントはそれぞれ客層が異なるが、互いに刺激を与え合う関係にあるという。

とくに、BtoB展示会で苦労する集客や会期中のアフターコンベンション面で、商業施設との連携が強みを発揮する。逆にBtoC向けエンターテインメントイベントでは、展示会で培った運営ノウハウが活きる。

噴水広場と展示ホールの連携も重要な要素だ。例えば物産展を展示ホールで開催する際に、噴水広場でPRイベントを行い、それを見たお客様が展示ホールに流れていくという導線を作ることができる。

毎年5月に開催される沖縄をテーマにしたイベントでは全館を使った大規模な展開をしている。展示ホールでの物産展、噴水広場でのパフォーマンスステージ、屋外エリアでのビアガーデン、水族館でのサンゴ水槽の紹介と沖縄テイストを入れたパフォーマンスなど、複合的なアプローチが実現している。

「単純に物産展だけやるよりも、『五感で楽しめる』展開ができる点が強みです」と上原さんは強調する。館内を回遊する中で様々な体験ができる仕掛けが可能になるのだ。

 

展示会場・イベント会場としての未来展望 地域連携と街づくりへの貢献

2020年頃から、サンシャインシティは「街とのつながり」をより意識した展開を進めている。開業から半世紀近くを迎える中、施設自体の魅力向上だけでなく、池袋全体の価値を高めることに注力している。

「池袋が都市間競争の中でより魅力的な街になることが、最終的には私たちのメリットにもなります」と上原さんは語る。そこで視野を広げ、行政や地域のステークホルダーとの連携を強化する取り組みを進めている。

その一環として「池袋エリアプラットフォーム」が立ち上げられ、サンシャインシティが理事長を務めている。産官学民が一体となり、池袋の未来像を描く取り組みだ。昨年は「池袋未来ビジョン」を作成し、10年後の池袋のありたい姿を描いた。「感動共奏都市~共に創り、共に奏でる~」というまちづくりのコンセプトのもと、様々な社会実験や取り組みが進められており、現在、会員は100社・団体を超えるまで拡大している。

こうした動きの背景には池袋周辺の再開発計画がある。今後20〜30年で池袋は大きく変わっていくが、ハード面の開発だけでなく、ソフト面での充実も重要だという認識が共有されている。

豊島区は「4つの公園」を中心としたまちづくり戦略を進め、「駅袋」(駅だけで完結する街)から脱却し、「歩きたくなる街づくり」を目指している。その中でサンシャインシティは重要な位置を占めており、中継地点かつ一大集客拠点として、今後ますます重要度が増すと考えられている。

IPコンテンツとの連携強化による新たな成長戦略

近年のサンシャインシティの新たな取り組みとして注目されるのが、イベントの「共催」モデルだ。従来の単なる会場貸しから一歩進み、事業に参画して一緒にイベントを創り上げていく形へとシフトしている。

「特にIPコンテンツと呼んでいるアニメや漫画、キャラクター系のイベントでは、共同出資という形で事業参画し、イベントをまず当社の会場で開催し、その後地方展開していくというモデルを構築しています」と上原さんは説明する。

外部会場も含めて事業収益を上げるスキームは、まだ成長過程だが、今後さらに力を入れていく方針だという。アニメや漫画、キャラクターコンテンツは今後も成長の伸びしろがあると見込まれ、社員が業務の一環として漫画を読むこともあるという。単なる会場提供者ではなく、コンテンツ事業のパートナーとしての役割も担っていく姿勢が見える。

 

ポストコロナ時代のイベント運営の進化

コロナ禍でイベント業界は大きな打撃を受けたが、そこから生まれた新たなノウハウもある。上原さんが2021年にコンベンション事業部に着任した頃はまさにコロナ禍の真只中だった。

来場者の収容人数や入場方法など、様々な工夫が必要だったが、その中で定着したのが日時指定制度だ。時間帯別に人数の上限を設け、現場の運用も効率化する一方、来場者も余裕を持って展示を楽しめるようになった。

日時指定はBtoCイベントを中心に定着し、運営側にとっても来場者数の予測が立てやすくなり、スタッフ配置の最適化や、想定外の混雑リスクの回避にもつながっている。

「通常の総合展示会では最大滞留人数の管理があまり行われていませんが、イベントスペースとしては非常に重要な指標です」と上原さんは指摘する。日時指定制度の導入によって、そういった管理も容易になった。

 

進化するコンテンツと機能するインフラ、サンシャインシティの魅力

サンシャインシティは単なるイベント会場ではない。「アーティスト(アイドル)の登竜門」として、アニメの聖地として、ビジネス展示会の場として、多様な顔を持ちながら進化を続けている複合施設だ。

噴水広場という“アイコン”があり、アイドル文化・アーティスト文化の発信の拠点として自然発生的にブランディングされてきた歴史がある。そして展示ホールは、BtoBからBtoCまで幅広いイベントを受け入れ、時代のニーズに合わせて進化してきた。

複合施設というインフラを生かした“面”での展開、商業施設との連携による相乗効果、アフターコンベンションのサポート力など、単独の会場にはない強みを持つ。

さらに、単なる施設内の取り組みに留まらず、池袋という街全体の魅力向上に貢献し、行政や地域と連携しながら未来を描いている。

「サンシャインシティ」という名前通り、この施設は単なる建物群ではなく、一つの「街」であり続けている。アーティスト(アイドル)とアニメと展示会が交差する場所、そして池袋の未来を照らす太陽として、その光はこれからも多くの人々を集め続けることだろう。

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