営業について「わかる・味わう・高め合う」をコンセプトに開催する、年に一度の営業エンターテイメントイベント「Japan Sales Collection 2024」が2月6日・7日、大手町三井ホールおよびオンラインのハイブリッド形式で行われた。主催は、企業の営業活動を支援する株式会社セレブリックス。
2022年から開催される「Japan Sales Collection」だが、3回目を迎える今回は“違和感”がテーマとなっていた。これは、“伝統的な職人技と最先端AIの融合に見るように、本来は共存しないはずの要素が新たな協調を示すことで、過去と現在、そして未来への接点を見出すことができる”とし、“変化の中で不変を問いかけ、意外な連携をもたらす発見の瞬間を”という飽くなき探求のアプローチを表現しているようだ。会場メインステージや会場全体にも、古き良き時代と新しい文化が融合した演出が実装され、空間づくりがなされていた。
プログラムは、営業に関する最新の情報や話題のテーマについての講義や、専門家によるコラボレーショントークで構成されるカンファレンス、会場限定での営業・テクノロジー活用の有識者から直接学べるワークショップ、スポンサーによる展示ブースなどで展開される。そして、見所の一つが、革新性を競い合う営業コンテスト『THE INNOVATORS』だ。
「わかる・味わう・高め合う」のコンセプトを実感するかのように、来場者も視聴者も自然と参加型になるようなシーンが散見された。
『THE INNOVATORS』では3社が成果・表現力・話題性を競う
『THE INNOVATORS』は、「組織力」を競う営業コンテストで、会期2日目の2月7日、メインステージの最終プログラムとして実施された。
『THE INNOVATORS』の本戦では、15分のプレゼンテーション、そして審査員による15分の質疑応答タイムの計30分のルールで競うというもの。審査基準は、成果に対する評価、表現力に対する評価、社会性・話題性に対する評価の大きく3つに分かれており、成果に対する評価については、難易度、再現性、創意工夫、顧客満足という観点での評価となる。
一次審査、予選を通過し本戦に勝ち残った挑戦者は、次の3社。
ディップ株式会社の小池敏氏。
トゥモローゲート株式会社の西崎隼平氏。
株式会社LayerXの松本淳氏。
また、審査員は次の5名。
リンクタイズ株式会社の上野研統氏。
株式会社Nexalの上島千鶴氏。
株式会社インサイドセールスプラスの茂野明彦氏。
株式会社圓窓の澤円氏。
株式会社みずほフィナンシャルグループの祖谷考克氏。
ディップ株式会社の小池敏さんは、『人と AI を組み合わせた新しい営業のカタチ「dip AI Force」』をテーマにプレゼンした。
小池さんは、3000名を超える社員をもつディップにおいて、AIとどう付き合ってきたのか10ヶ月の物語、として紹介した。取り組みを始めた昨年3月当時は、生成型AIの利用率が20%未満だった状況から、ChatGPT導入から3ヶ月で利用率90%へと引き上げている。プロジェクト「dip AI Force」の立ち上げリーダーとなった小池さんは、初動として250名のアンバサダーによるAI活用促進、コミュニケーションツールとして基盤としていたslackとの連携などを経て得た結果とした。さらに、目にみえる効果として、新入社員へのロールプレイングにAIを活用しプレイ環境を構築、先輩社員が対応していた月間1人10時間の時間削減をしたこと、また営業業務のなかで原稿制作での修正作業に活用し月4時間削減したことなど、具体的な成果も発表した。環境と仕組みをつくり、全社で参加できる流れをつくったことにより、AIで事業を変える未来があるというメッセージを送った。
審査員による質疑応答では、AIの定義とビジョンの共有についてや、アンバサダーに向いている人材や推進のためのTIPSについて、さらに社内の取り組みをお客様に向けたサービスへと展開する可能性など、多岐にわたった。
トゥモローゲート株式会社の西崎隼平氏は、『売り込まない営業組織の創りかた|SNSによる顧客ファン化戦略』をテーマにプレゼンした。
西崎さんは、冒頭で「営業をもう一回、憧れる職業に戻したい」とし、自身が営業職に就いた2017年当時は、お客さまへヒアリングし、課題を抽出、提案解決して、直接ありがとうと言われるかっこいい仕事だったと振り返る。一方、テレワーク環境への変化などからイメージの低下してしまった営業に対し、提案したのが、SNSでファンを作り、アプローチしていく顧客ファン化戦略だ。
同社では、SNS運用から6年が経過し、実際に、売上は4.3倍、営業利益22倍、営業利益率5.24倍の成果を出している。SNSマーケティングの重要性が多くの企業で言われて久しいなか、成果へとつながる運用の法則を3つ披露した。3つの法則とは、「動機、手段、待遇」。例えば、動機に関しては、自発的に参加したくなる方法、専門チームを設けた分野、業務中のSNSの許可により動機づけをする。次に課題となる手段についても、方針設計、具体的な運用方法、アプローチをX運用スタートアップシートを作成し徹底的に分析、YouTubeで無料公開し再現性を高めている。そして、DMを活用して、コミュニケーションをし、アポイントをとってコンバージョン率を上げているという。こうした取り組みを仕事として給与に反映し、特別手当なども用意するなど、制度設計にも反映しているのが待遇面での工夫だ。
質疑応答では、西崎さんへの表現力に対する評価が上がったほか、どれだけの行動量を起こせばファンになりうるフォロー数を獲得できるといった法則はあるかどうか、グローバルにも展開が可能か、といった内容の質問が挙がった。
株式会社LayerXの松本淳氏は、『展示会の商談化率を351%に向上させた、開発思考のインサイドセールス』をテーマにプレゼンした。
松本さんは、展示会起点での商談化が難しいとされているなか、自社でも全マーケティングチャネルのなかで最低だった展示会の商談化率を3.51倍に向上させたプロセスについて紹介した。松本さんは過去100回以上の展示会を経験したが、直近2年間での改善の内容としてプレゼンした。
最初に提示したのは、「展示会の解像度を上げる」こと。ここでは来場者数から成約数に至る項目を11に細分化した表を提示し、どこに課題があるのか分析した。次に「現状の取り組み内容や実績を振り返る」で、来訪者情報の管理と共有方法について課題があったことをみつける。次のステップとして、「課題と原因を発掘する」では、アナロジー思考で別チャネルですでに成功している要因を抽出、情報の質と量、情報連携などに違いがあることを分析し、連携の遅さとプロセス内での情報劣化の実態を把握した。原因の発掘後に、最初に取り組んだのは情報連携のスピードアップ。1営業日から60分に連携スピードを短縮している。このように、成功事例から課題や仕組みを見つめ直し、改善を徹底することで得た成果だと語った。
質疑応答では、オペレーションの強さについての評価があったほか、マネージャーとして常に進化し続けてきた強みについての質問などが挙がっていた。
3社によるプレゼンの後、最終審査では『THE INNOVATORS』優勝は、トゥモローゲート株式会社の西崎隼平氏が獲得。西崎氏には、優勝賞金100万円とトロフィーが贈られた。
西崎氏は「今回プレゼンした内容は僕がやっていることではなく、会社のメンバーが普段実施していること。その仕組みを代表してプレゼンした。今回の評価は、そんな頑張っているメンバーの成果によるもので、結果あってのこと。それが何よりも嬉しい」とコメントしている。
総合司会を務めた株式会社セレブリックスの今井晶也氏からは、「営業の本質はお客様の理想の未来を作っていくこと、そこに真剣に一緒に考えていくというコンサルタントのような仕事。技術や考え方、専門性を必要とする高度な仕事になっていく」とし、3者のプレゼンターに対し、惜しみない拍手を贈り、締め括った。
なお、「Japan Sales Collection 2024」の内容は、『THE INNOVATORS』のほかカンファレンスなどのプログラムをアーカイブ視聴することができる(会場限定プログラムのワークショップを除く)。視聴期間は、3月17日まで。
概要
イベント名:「Japan Sales Collection2024」
日時:2024年2月6日(火)・7日(水)
開催場所:
①オンライン(ウェビナー)
②オフライン(大手町三井ホール)
参加費:無料
https://cerebrix-collection.com/jsc2024
(アーカイブ視聴は、「視聴申し込みする」ボタンからの登録が必要)