スーパーボウル・NFLのビジネスモデルに学ぶイベント力

有名人のイベント力 イベントが切り拓いたストーリー

スーパーボウルの超絶経済効果

2022年2月13日(日)、アメリカンフットボールNFL32チームの頂点を決める「第56回スーパーボウル」がSoFiスタジアム で開催されます。(日本時間2月14日(月)08:30から日テレGタスなどで放送)

QBジョー・バロウとWRジャマール・チェイスをはじめとする若い力のシンシナティ・ベンガルス。DTアーロン・ドナルド、WRクーパー・カップに加え、QBマシュー・スタフォード、LBボン・ミラー、WRオデル・ベッカムJr.、の補強などスターが揃ったロサンゼルス・ラムズ。対照的なチームカラーと、接戦・逆転劇が続いたプレーオフの流れもあり、大きな盛り上がりを見せています。

試合そのものと同じように注目されているのが、スーパーボウルの”お金”です。まず、チケット料金。一番安いもので6,600USドル(約75万9000円)、最大7万5000ドル(約862万5000円)と、ものすごい金額になっています。

ちなみに2021年の日本シリーズは上段外野指定席3600円(210分の1!)、エクセレントシート19,800円(435分の1)とまさに桁が違います。

まさにデフレJapanという感じですが、物価の違いもさることながら、日本のスポーツビジネスの機会損失とも言えます。そのあたりは、月刊イベントマーケティングの過去記事をご参照ください。

さて、NFLの人気は凄まじいものがありますが、それにはNFLがイベントを効果的に使っていることも要因になっています。

スーパーボウルは巨大な総合イベント

ハーフタイムショー

まず、スーパーボウル自体が巨大な総合イベントとなっています。
日本では、試合結果を知らなくてもハーフタイムショーのパフォーマンスを見る人も多いでしょう。
前半終了(第2クオーター終了後)に開催されるハーフタイムショーは、試合とは独立して飲料メーカーのペプシがスポンサードしています。今回はハリウッドがあるロサンゼルス開催らしく、ドクター・ドレー、スヌープ・ドッグ、エミネム、メアリー・J.ブライジ、ケンドリック・ラマーと豪華なメンバーです。第27回(1993年)のマイケル・ジャクソンから大物スターが出演するようになり、ポール・マッカートニー、ローリング・ストーンズ、レディー・ガガ、マドンナ、ブルース・スプリングスティーン、エアロスミス、ブリトニー・スピアーズ、ビヨンセ、プリンス、U2など、世界的なアーティストのパフォーマンスで、スーパーボウルをスポーツイベントの枠から超えるものにしています。
イベント業界人としては、その設置と撤去のスピードも見どころですw

テールゲートパーティ

今回のスーパーボウルの駐車場代が5500ドル(転売価格)という報道もありました。https://news.yahoo.co.jp/articles/7a780ae1f0024ed6657d48eb5e6cd734b25ad009
これは、スーパーボウルの人気というだけでなく、駐車場でテールゲートパーティをするために払っている、とも言われています。

テールゲートパーティは、試合開始の数時間前から、駐車場に停めたトラックの荷台や後部座席をあけて、応援チームのユニフォームに身を包みバーベキューやビールを飲んだり大騒ぎする、アメリカらしいスポーツを楽しむ文化です。同じチーム応援する人どうし、すぐに仲良くなって盛り上がれるようです。どの車、どのパーティが盛り上がっているかを競いあっているようです。テールゲートパーティだけを楽しんで、スタジアムで観戦しない人もいるらしいです。それも生観戦の楽しみ方なのかもしれません。

スーパーボウル・エクスペリエンス

全米、全世界から応援に駆け付けるファンへのサービスのために、試合の1週間くらい前から地元のカンファレンスセンターなどで実施されます。

ヴィンス・ロンバルディ・トロフィーとの撮影、選手のサイン会、実物大のフットボール・フィールド、NFLのドラフトの疑似体験、フィールドゴールキック、40ヤードダッシュなどさまざまなアトラクションに挑戦して、スーパーボウルを体験できます。

会場では数日間に渡り記者会見も行われる。出場チームの全選手やコーチが数千人の報道陣からみっちり取材を受ける。ファンも取材の様子が見れるのも貴重な機会です。
取材が大嫌いなシアトル・シーホークスのマーション・リンチが「罰金(50万ドル)を受けない為にここにいる」を繰り返して、インタビューを終えたのは有名な事件となっています。

シーズンMVPなど各賞の授賞式も行われる「NFLオナーズ」も実施。テイスト・オブ・ザ・NFLは NFL各チームの本拠地に拠点を置く有名シェフが集結し、自慢の料理を振る舞うグルメイベント。

スーパーボウルウィークでは、広場や目抜き通りでは「スーパーボウル・シティ」と呼ばれる無料のパーティーイベントが行なわれます。間口を広げるための「シティ」、より身近に体感できる「エクスペリエンス」、そしてその先にプラチナチケットを手に入れた人だけが入ることのできる「スーパーボウルの試合」があるという3層構造になっています。人々がスーパーボウルと接触する機会と深さを増やしています。音楽ライブを中心とした屋外イベントやビジネスマッチングイベントも開催されています。

この体験設計は米国のイベント関連カンファレンス「EXPERIENTIAL MARKETING SUMMIT 」でも取り上げられています。近年、ファンとのコミュニケーション構築にイベントマーケティングを活用している日本のプロ野球チームDeNAベイスターズも、スーパーボウルの取り組みを参考にしているようです。

プロボウル PRO BOWL

スーパーボウルの前週には、ファン投票で選ばれたシーズン中に活躍した選手が、AFCとNFCの2チームに分かれて対戦します。日本野球のオールスターゲームのような感じで、試合はケガをしないように有名選手が楽しくプレーする感じです。

プロボウルも試合前からイベントが行われます。なかでも人気なのが、スター選手のずば抜けた身体能力を目の当たりにするプロボウル スキルズショーダウンです。動く的にパスをあてるプレシジョン・パッシング、壁にあいた穴にパスを通しそれを防ぐスレッド・ザ・ニードル 、40ヤードを駆け抜けるファステスト・マン。アクロバティックなキャッチで得点を競うベストキャッチ、投げる方も取る方・避ける方も尋常でないドッジボール、などスーパースターがゲラゲラ笑いながら、人間離れした動きをみせるのは、見どころ十分です。

ショーアップされたドラフト

オールドファンですとパンチョ伊東さんの司会という印象があるように、日本プロ野球もドラフト会議は人気のコンテンツです。NFLのドラフトはそれを凌駕する一大イベントとしてみんなが楽しみにしており、「ドラフト・デイ」という映画にもなっています。初日に1巡目のみだったりと7巡目まで3日間かけて行われ、90億円もの経済効果があるとも言われています。当日に指名権を交換したりと高い戦略性がドラフトそのものをエンターテイメント化していますが、イベントとしてのショーアップも、盛り上がりに一役買っています。

ドラフト会場は観客席に多くの来場者が集まります。
開催地では、全国放送では、各チームからその様子を中継します。1位指名候補の選手の自宅には親戚中が集まったり、各チームがスタジオで待ち構えています。指名の瞬間には、親御さんとハグするシーンを感動的に伝えます。難民から苦労して学び好成績を収め、進学した大学で活躍して、スターダムに上がるといったストーリーもあったりと、ファン必見のイベントになっています。選手のお母さんのド派手で攻めた衣装も注目かもしれません。昨年は日本でもドラフト候補者名鑑が発行されました。


(5thDownチャレンジさんの2021ドラフト1巡目後半)

ドラフト会場は観客席をファンに開放したファンイベントとなっています。2017年には20万人以上が来場。翌年はスタジアムで開催されるようになりました。(2021年は新型コロナウイルス感染症の影響で人数は制限されましたが)

開催地だけでなく各チームのホームタウンに設けられた会場や各地の名所などを繋いで全国に生中継されます。現役選手やOBレジェンド選手、地元の有名ファンが指名選手を呼び上げて盛り上げます。宇宙ステーション内の宇宙飛行士が発表したこともあったらしいです。
会場ではスーパーボウルやプロボウルと同様に体験イベントなども実施されています。

シーズンオフ(4月)に行われるために、ファンとのコミュニケーションを維持するのにも重要な役割を果たしています。

月刊イベントマーケティングでもプレミアムスポーツ(メジャーでない競技)をイベントの力で盛り上げる活動をしていますが、NFLに学ぶところは大きいと思います。

日本でもスポーツ庁を立上げ、スポーツ産業国内市場規模を2025年に15兆円に成長させることを目標にしていますが、その実現にはスポーツイベントの進化も重要なポイントになってきそうです。

イベント力分析レーダーチャート NFL – スーパーボウル

イベント力分析レーダーチャートーNFL-スーパーボウル企画力 8 ファンを巻き込むさまざまな体験設計は○。          オーソドックスなものが中心。 実施規模 12 ドラフトでもなんでもスタジアムを満員            にしたり、ド派手演出で、盛り上げる◎ 人生変えた 6 スポーツ好き以外のファンをつくるのに             イベントの貢献度が大きい。 実はそうなの 4 イベントの存在はよく知られている 巻き込み力 8 ファン、NFL選手の協力・理解が得られ             ている。ファンの自主的企画もある 独自性・らしさ 6 日本人からみて、アメリカらしさを               感じる。細かいゲーム性は気にしない。           

企画力 8  ファンを巻き込むさまざまな体験設計は高い。オーソドックスなものが中心。
実施規模 12 ドラフトでもなんでもスタジアムを満員にしたり、ド派手演出で盛り上げる。
人生変えた  6 スポーツ好き以外のファンをつくるのにイベントの貢献度が大きい。
実はそうなの4 イベントの存在はよく知られている
巻き込み力 8 ファン、NFL選手の協力・理解が得られている。ファンの自主的企画もある
独自性・らしさ6 日本人からみて、アメリカらしさを感じる。細かいゲーム性は気にしない?

総合スコア 44/60 

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