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オンライン配信ノウハウを伝えるオンラインイベント
- 2020/4/1
- イベミラReport
3月6日に、「オンライン配信ノウハウを伝えるオンラインイベント」を開催しました。
折からのイベント自粛要請をうけ、イベント虎ノ門ヒルズフォーラムで収録し、FacebookLiveで配信となりました。
今回の登壇者は、
藤本 あゆみさん(at Will Work代表理事・Plug and Play執行役員 CMO)
松林 大輔さん(at Will Work代表理事)
酒居 潤平さん(Uzabase執行役員)
日比谷 尚武さん(カンファレンスファクトリー取締役)
の4名です。
コロナウイルス感染症の影響で、自らのイベントをオンライン配信に直前に切り替えたat will work 代表理事の松林大輔さん,同じく藤本あゆみさん(Plug and Play執行役員 CMO も兼務)、日比谷 尚武さん(カンファレンスファクトリー取締役も兼務)と 自社スタジオで多くのオンライン配信を行い3月25日にはオンライン展示会「Saas Exhibition」を開催するユーザベース執行役員の酒居潤平さんの4人。セッションの内容をお届けいたします。
中止・延期・オンライン開催への切替え
藤本 あゆみさん(以下、藤本) こんにちは、(カメラマンに会場のようすを映すようにうながす)今日は、こんな布陣でお届けします。オンライン配信のヒントをオンラインイベントで伝えるというイベントです。
いまオンラインでイベントを開催しているところも増えてきたところで、経験者のノウハウをお伝えしつつ、slidoを公開しているので、みなさんの質問も交えて進めていきたいと思います。
パネリストの3人はあちこちで登壇されていて、おなじみかもしれませんが、自己紹介をお願いします。
日比谷尚武さん(以下、日比谷) at Will Work の活動の他に(株)カンファレンスファクトリーという会社の取締役をしています。at Will Work では藤本さんと一緒に、「働き方を考えるカンファレンス2020」をオンライン開催に急遽切り替えにすったもんだしていました。最近はオンラインの勉強会などに出ることが多いです。今日は現場での体験をお話できればと思います。
酒居 潤平さん(以下、酒居) NewsPicksやSPEEDAといったBtoBのサービスを提供している(株)ユーザベースに所属しています。オフラインイベントを実施していたのですが、ライブ配信に切替ることになり、この2週間で5〜6本ほどオンラインで開催しています。すべて社内のメンバーで内製化しています。最初のイベントは50人くらいのイベントでしたが、急な変更でドタバタしていました。この間にPDCAを回して改善プロセスの取組みをお話できればと思います。
松林 大輔さん(以下、松林)at Will Workの代表理事をしています。働き方を考えるカンファレンスは、まさにこの会場(虎ノ門ヒルズフォーラム)で、毎年開催していました。(株)ストリートスマートという会社も経営していまして、Google Appsの使い方の研修とかもしていて、オフラインの研修やセミナーを実施しているのですが、2月以降研修の予定がすべてなくなってしまいました。もともとeラーニングとかも実施していたので、そちらに一気にシフトしているところです。
藤本 at Will Work の他に Plug and Play Japanのマーケティングを担当しています。Plug and Play Japan Winter/Spring Summit 2020をまさに今日、会場もここ虎ノ門ヒルズフォーラムで開催予定でしたが、こちらは中止としました。スタートアップのピッチを聞くだけではなく、商談をするなど、濃厚接触推奨なイベントということもあり、また海外のスタートアップも多く、彼らを巻き込むことは大きな損失につながると考えました。ということでそれぞれの立場で、それぞれの対応を決めた経緯をお聞きしたいのですが
松林 「働き方を考えるカンファレンス2020」をオンライン開催に変更する2週間くらい前から、コロナウイルスによるさまざまな影響が出ていましたが、1週間くらい前までは、オフラインで実施するつもりで動いていました。300〜350人入る会場をスタジオにしました。リアルでやるのと違うことが多いです。もともと記録用の動画は撮っていましたが、画面の切替をするしくみをいれたり。有料配信なのでアクセス制限やセキュリティをかけたりと、切替作業を2日でやりました。
オンラインで話す、モデレートするコツ
藤本 ここで、私のGoogle時代の同僚の尾原和啓さんと回線が繋がりました。尾原さんは、「働き方を考えるカンファレンスの第1回にiPadを載せたロボっトでオンライン登壇するなど、5年以上前から多くのカンファレンスにオンライン登壇しています。尾原さん、オンラインで話しをするコツを教えてください。
尾原和啓さん(以下、尾原) 私からは3つのアドバイスがあります。
1つ目は視聴者のコメントをリアルタイムでチェックしながら、セッションに取り込むこと。私がオンライン登壇をはじめたころはニコニコ生放送が多く、弾幕と呼ばれるチャットが流れてみんなの反応がわかるようになっています。それをみるとどこの部分に視聴者がくいついたかわかります。パプリカやLemonの米津玄師さんは、ニコニコの視聴者から1フレーズごとの評価を活かしたことで、心にしみる曲をつくれたのではないでしょうか。
2つ目は、緊張感と臨場感を得るためにだれかに観客になってもらい、その人に向かって話しかけることです。オリエンタルラジオの中田敦彦さんは、YouTubeの収録にサロンの生徒さんを呼んで、そこに話しかけているそうです。相槌が上手い人を選べば、勇気をもって話せますよね。
3つ目は講談師や落語家、漫談の人の話し方を学ぶことです。盛り上げ方や抑揚の付け方なはとても参考になります。オンラインの視聴者は同じ話しが長くつづくと飽きてしまうので、10〜15分に一度はペースを変えたり、抑揚をつけたりして変化をつけましょう。そういう技術は講談や落語に凝縮されています。
もう1点追加しますが、視聴者以外の2次波及も意識することです。ライブ配信の視聴者は多くても1万人までですが、SNS・まとめサイトなら10万人、大手ポータルサイトのトピックスに掲載されると100万人に波及することもあります。そのために私はパネリストの面白いキーワードをなんどか繰り返し、意識的にパワーワードをつくるようにしています。5分に1つくらいを目安にしているのは、レポートでは15分の内容がだいたい3パラグラフくらいになり、そこでちょうど1つのハイライトラインが入りまう。それに合うキャッチコピーのようなキーワードを用意してあげる感じです。オフラインでは目の前にいる人に訴えるのが一番の目的ですが、オンラインでは観客がいないので、目的とターゲットが変わってきますよね。
藤本 モデレータがうまくペースメーカーになれそうですね。オンラインならでのいいところをうまく設計に取り入れることがコツなんですね。ありがとうございました。
松林 移動しながら登壇ってすごいですよね
オンライン配信の画づくりとトラブル対応
日比谷 (画面にスライドを映しながら)このスライドはいつもこの3人で登壇した時の想定トピックスをまとめたものです。よく個別に相談をうけていたのですが、それが多くなってきて対応しきれなりました。そこで最近はそういう人たちを集めてイベントにしています。最初はトピックスの数は10個くらいでしたが、いまは26個くらいまで増えています。イベント開催時に気になる点は大体網羅していると思います。今日は、このなかからオンラインに関連することを選んでいこうかなと。
藤本 たとえば、モデレーター選びってありますけど、それもオンラインイベントにしたらこういう人がいい、という感じですね。
日比谷 オンラインに慣れて耳の肥えた視聴者の期待に応える技術とか…
藤本 そのうちオンラインが得意なモデレーターさんとかでてきたりしそうですね。
酒居 (オンライン配信はイベントとは)テンションが違う。画面上だとちょっと大げさなくらいがちょうどいいです。テレビはすごいなと思います。逆に動作がすごく気になることがあります。オフラインだとちょっと体を動かしたりとかは平気でしますけど、画面でみるとそれがかなり気になります。テレビの演者さんは背筋を伸ばして正面を見て話しています。イベントでの登壇とは別物なのかなと感じています。
松林 オフラインは臨場感ありますよね。オンラインは資料をみせたりする時に画面を切替できるのはすごくプラス。でも進行がわかってないとそれは活かせないんですよね。
藤本 ちょうど画面の切替えの話がでたので、会場の機材について紹介したいと思います。今日はカメラが3台。1つは司会の私を撮るもの、2つ目は私以外の3人を映すもの、3台目は、固定せずに、全体をとったりズームしたりしています。それとは別にPCからの出力は私と日比谷さんの2台をスイッチングできるように私の手元にもう一つスイッチャーがあります。さらにテレビ番組のように、話している人をワイプで映したりすることも可能です。at Will Work(の働きかたカンファレンス2020)の時はスライドをメインにして、登壇者を右に映していました。カメラ・スライドの切替えだけでなく画面構成をいろいろと考えて、大きさとか場所も変えられる。どういう風に見せたいか、テレビ番組のような映像にすることもできるんですよね。
松林 その映り方は事前によく確認しといた方がいいですよ。それによって会場の構成や資料の作り方が変わってきます。
藤本 いま、画面では松林さんと私が半分ずつ映っていますね。
松林 これ(演出を駆使した映像配信)をユーザベースでは内製化したんですよね。
酒居 (画面を切り替えて)こんな感じで配信しています。機材はもともとユーザベースのグループ会社(株)ジャパンベンチャーリサーチでは、ami(現在の運営はINITIAL)というライブ配信でスタートアップの支援をするサービスがあり、機材やノウハウの面で助けてもらいました。またNewsPicksにはテレビ局の出身者もいましたし、社内の知見・ノウハウをあつめて進めています。
日比谷 どういうアドバイスが活きましたか?
酒居 画面のつくり方やシチュエーションを教わりましたし、プロのカメラマンの撮影時に光の当て方と、照明の当て方、レフ板の使い方などで画の美しさをだすのはとても参考になりました。3台のカメラは背景のボケ感を出すために全部一眼レフ、ソニーのα7 III(アルファ・セブン・スリー)を使っています。レンズは場所に応じて変えています。登壇という感じではなく、より近い1つテーブルで皆さんにお話ししていただいている感じの画をつくっています。
藤本 The UPDATEやWEEKLY OCHIAIは、オープニング動画などを使っていますよね。
酒居 いまジングルは絶賛作成中です。配信ツールのWirecastを使ってYouTubeLiveに配信していますが、スタッフみんながはじめての経験なので、「確実に事故なく」が最優先なので、応用は徐々に少しずつ追加しています。
藤本 経験がないと、事故をさけるのもむずかしいですよね?
酒居 予期せぬトラブルはたくさん起きます。例えば、昨日のリハが完璧だったのに、本番でマイクに変なエフェクトが入ったことがあります。原因をいくら調べてもわからない。どうしようもないので、視聴者の方に30秒ほどお待ちくださいと伝えて、再起動したら直ってしまったので、いまも理由はわからないです。それから人的なミスもあります。コードに躓づいて抜けちゃったりとか、養生してもそういうことはあるんですよね。ワイヤレスのピンマイクだとディレイがあったり不具合の可能性もあるので有線のものを使用しています。リハや本番を重ねながらリスク回避の方法がだんだんわかってきます。
インタラクティブ性をあげるツール
酒居 ライブ配信をしてわかったのは、話していて反応がないと登壇者はつらいということです。そこでわざと大きめなりアクションをしてもらう。ADのカンペでも褒め言葉をあらかじめ用意してもらっています。そういうことで勇気づけられるんですよね。
藤本 松林さんは「働き方を考えるカンファレンス2020」の最初のパネルディスカッションでモデレーターをしましたよね。
松林 あれはむちゃくちゃ緊張しました。
藤本 あのときは、スタッフがまだどう反応していいかわからなかった時。それをどう克服しましたか?
松林 会場にスポンサーや関係者がいたので、その人を見ながら話すようにしていました。人がいないというのは、相当なストレスですよね。
酒居 視聴者の反応をリアルタイムで伝えることでも勇気づけられます。返しのモニターに配信画面だけでなくslidoの画面を映したり、ADから質問内容が伝えられたりすると、それで盛り上がり具合がわかります。反応があるので勇気づけられるし、インタラクティブ性があがりますね。
日比谷 Schooという大人向けの学習の生放送コミュニティもいいですよ。
酒居 私どもが手がけるBtoBのサービスは、商談につながるとかリードを取ることが重要なのですが、YouTubeLiveは安定性が高い反面、リードがとれないという弱点もあります。また、YouTubeLive での投稿は自分の名前が出ることがあって、二の足を踏むということもあります。Slidoは匿名で投稿できるので、いいですね。そういうツールをうまく組み合わせることでインタラクティブ性を高められますね。
藤本 公開配信をすることで、攻撃性のある質問がでる可能性もありますが、対策はしていますか。
酒居 はい。YouTubeLiveの配信を確認する担当が一人います。配信がきちんと行われているのをチェックするのですが、コメントも随時確認しています。しかし荒し的なコメントはほとんどなく、ポジティブなものばかりですね。
松林 at Will Workのイベントでも、地方から参加しやすいというコメントをたくさんいただきました。地域のバリアをとったのがいいですね。そのような細かいティップスがたくさん溜まっていて、酒居さんがnoteにまとめてくれるんじゃないかと(笑)。
酒居 僕もいろいろと教えてもらっています。藤本さんにイベント現場を見学させてもらって、機材の話しや速度感などを聞いてすごく関心がありました。みんなで知見を共有するのはいいですね。
藤本 当日いろいろな人をご招待しました。私たちにとってはじめてですが、みなさんにとってもはじめてのことなので、同じことをするとは限りませんが、参考になればと思い。それには現場をみてもらうことがはやい。イベントの裏側って他の人も見にいってもいいと思います。内容にコンフィデンシャルなものがあっても、運営自体はノウハウを共有できればもっといいイベントができますよね。とくにオンライン配信はこれまでやってきたオフサイトのイベントとは別のノウハウがありますよね。ところで日比谷さんは先ほどから色々と打ち込まれていますが…
日比谷 (slidoの画面を映して)slidoに、いま皆さんがあげてくれたTipsをアップしているところです。質問の方にはまだあまりきてない。イベントコードがわかってない人がいる。イベントやるのにツールが
藤本 slidoはスライドって発音するんです。CEOが元Googleの人なので直接聞いたので間違いありません。Googleと相性もよくて、google slide を埋め込むこともできます。
松林 そうそう便利です。インタラクティブにアンケートをとるイベント用のツールなんですが、僕もよくアドオンとか使ってます。
日比谷 他のインタラクティブツールはどうですか?
酒居 BACKSTAGEの時に使ったLIVEアンケートも使いやすかったですね。
藤本 私も投票とか使っています。
松林 配信は YouTubeLiveのほかは何を使っていますか
藤本 Vimeoとか
酒居 SATORIのイベントはVimeoでしたね。
藤本 あとはFacebook Liveですよね。これは簡単に使える。
日比谷 twitterもLIVE配信できますよね。
酒居 Zoomはうちでもウェビナーとかに使っています。
藤本 Zoomは誰がログインしたかわかるとか、ブレイクアウトセッションがやりやすいとかありますよね。配信ツールは、クローズにしたいか公開したいによって異なりますが、どのように決めていますか?
日比谷 at Will Workは有料イベントなのでアクセス制限が必要。スポンサーに開催レポートをおくるので 視聴ログがとりやすいとかが選ぶ基準になりますね。
藤本 (イベントサイトに)埋め込みができるかどうかが基準だったのですが、その申請が間に合わなかったので、1枚ページをつくってそこにアクセス用のパスワードをつけて、チケットを持っている方にパスワードを送るというかたちにしました。
日比谷 企業のセキュリティ基準でYouTubeが見れないというケースもあるのでそこの部分はケアしないといけないですよね。そのためにアーカイブ配信したりとか
松林 ツール比較みたいなものを、酒居さんのnoteでやったらいいんじゃないですか。
日比谷 僕の知り合いで比較サービスをやっているところがありますよ。
オンライン開催が続くのか?
酒居 オンライン配信の流れって一時的なものではなさそうですよね。アンケートとか視聴者の声をうかがうと、オンラインを前向きに受け入れてもらっています。オンラインが一つの可能性と受け入れられている。オフラインが解禁されてもいままでのように戻らずに、新しいカタチにシフトしていく。ツールなども進化していく。
藤本 (オンラインとオフラインを同時開催する)ハイブリッドも増えそうですね。at Will Work にも以前から、オンライン配信を要望する声はあったのですが、コストやセキュリティの課題から後回しにしていたのですが、今回で「できそうだな」と経験値がたまりました。オフラインイベントのなかにオンラインをどうとりいれるか、ダブルで考えるようになっていきそうです。オンラインをやってみてオフラインの良さがわかることもありますし。
日比谷 オンラインに切り替えた勉強会でのコメントで、PCだとメモとりやすい、スライドもスクリーンショットできるとか便利(権利関係をクリアする必要があるが)、配信の音声もクリア、移動しなくていいというメリットがよくあがります。デメリットとしては 会が終わった後のネットワーキングができない、会社で聞いているとインタラプトされることがあるというのがありましたね。
藤本 海外イベントだとOtter.aiとかWordlyみたいな文字起こしのツールが使えるので後追いで見れます。日本語のものはまだ精度がそれほど高くないいかもしれませんが。
日比谷 日本語だと、UDトークとかまだ意図しない単語がでますけど、補助的にテキストがでるのがいいですね。
藤本 Web Summit(リスボンで開催されるテックカンファレンス)では各セッションにOtter.aiが入っていて、全部文字起こししている。それに翻訳ツールに入れられていますので、英語がそれほど得意でなくてもセッションの内容がわかります。自分が聴講できなかったものを後から確認できることもありがたいですね。書き起こしが進化するといろいろなことができそうですね。
ネットワーキングは再現できるか
日比谷 オフラインだからできるネットワーキングみたいなコミュニケーションはどうやれば代替えできますかね。
酒居 イベントでの出会いをその場で終わらせず、そこを接点にしてつなげていくという設計が肝なので、そこは悩んでいます。いま、コンテンツ増やして視聴は気軽にできるようにして、その点と点のつなぎ目のところで、インサイドセールスとかを絡める方法などを考えています。それから、もっとフランクで集えるオンラインコミュニティが欲しいですね。やはり最初(の接点)はオフラインが強いつよい。最初からオンラインで飲み会というのはハードルが高いですよね(笑)
藤本 商談というだとSansanのビジネスイベント「Meets」がオンライン化しています。あれは面白いですね。オンラインで各社のピッチをみた後に、どことコミュニケーションをとるか、オンラインで決定して、商談もZoomなどのオンライン会議ツールでするという試み。plug and play でもEventhubを使って、オンラインでどこまでインタラクションできるのかに挑戦しました。
酒居 ちょうどここに来る前に僕もEventhubさん相談していたところです。3月25日にオンライン展示会Saas Exhibitionを開催します。展示会がなかなか行けない、開催できないという状況で、「情報収集をしたい」、「オンラインサービスを検討したい」という声が多くなっています。そこで、これまでの“営業的なものでなく、テーマに沿った話しカンファレンス設計”から、“サービス紹介や開発のコンセプトやストーリを責任者や経営者にうかがう”という形にしました。1社8分のピッチにパネルディスカッションを織り交ぜて、展示会というより通販番組みたいなオンラインのイベントとして企画しました。
視聴者を飽きさせないために
藤本 オンラインだとセッションは短くしていますか
酒居 基本は1時間、伸びても最大1時間15分にしています。視聴者が長時間みるにはスタミナがいります。開催する前は、視聴者は自分のみたいところだけを見るものかと思っていましたが、アンケートでは全視聴する方がおよそ70%と多く、みなさんガッチリ見ていることがわかりました。そうすると30分続けて見てもらうのは大変で、5分刻みにピッチしたり対談を入れたりと、コンテンツを組み合わせてして、視聴にストレスがかからないようにしています。オフラインと同じようにしていたらダメなんですね。そこで、最近はテレビ番組をたくさん観て勉強しています。たとえば司会者の「はい、それではここで」という一言入るだけで雰囲気はガラリと変わる。細かなことが心理に大きく影響を与えることがわかりました。
藤本 実は私は今日、意識的に相槌を多くうちながら進行しています。私も最近よくテレビを観ています。そこで思ったのは、CMもやっぱり必要だということ。場面転換とかリフレッシュとか、ちょっとリラックスする時間が必要なんですね。
酒居 登場シーンとかで演者さんをうまくカメラで追ったりできると、それだけ臨場感がでますよね。逆に、席に座ってるところとか、映しすぎたりするとワタワタしている感がでちゃう。そういうところのカメラワークを意識して観るようになりました。
実際、機材にはいくらかかりますか?
日比谷 今回の機材いくらかかってますか、という質問がきています。今日は(視聴に見せるために)わざとシンプルな構造にしてもらっています。最低限どれくらい必要なのかというのは、みんな知りたいですよね。
酒居 極論をいえば、PC1台あれば大丈夫、配信はできます。最初にまずやってみて、というスタートの仕方もありだと思います。今日登壇している私たちは大型イベントを急遽オンラインに変えるというシチュエーションだったのできちんと体制を揃えました。登壇者の方々に「みなさんPCの前に座ってやってください」とはなかなかいえないですからね。そういう緊急性もあったので早く準備できたともいえます。しかし1台でも可能ですし、2台にすれば、全体像をうつしたりもう1台でスピーカーを追ったりといった演出ができます。そうなるのとスイッチャーが必要だったり、ゲストの方のために返しのモニターを用意したりと増えてきます。
藤本 実はPlug and Play Japanでも 3か月のアクセラレーションの報告会をオンラインで実施しました。しかし、PC1台でやったら音声聞こえないので、マイクを購入、ハンディカムカメラを使うためにキャプチャーボードが必要と言われたり、最小限の構成でスタートして、そこから1個ずつアップグレードするのがおすすめです。
酒居 機材はあくまでも手段です。コンテンツがもっとも重要なのは変わりません。コンテンツの伝え方として、伝えやすさ、ストレスがないことなど、やりたいことから逆算的に機材を決めていくことだと思います。
藤本 とはいえ金額は知りたいですよね。今日使っている私の手元の小さいスイッチャーが4万円、これは配信だけでなく社内ピッチでも使えそうですね。それから操作卓にある大きなスイッチャーは30万円だそうです。
酒居 ユーザベースで使っているカメラは40万くらいのものが3台、PCは専用のデスクトップを用意しています。最初ノートブックを使っていたのですが、いろいろな機材をつなげていったら、電源をつないだ状態でも充電が減っていくというキャパ不足になりました。それで安定性のためにデスクトップを購入しました。
日比谷 私はオンラインのストリーミングを20年前にやっていました。その経験からPCに大きな負担をかけるのは避けたほうがいい。熱暴走とか、色々なリスクがあります。
酒居 そうですね。長時間配信のネックは熱の問題です。スイッチャーの下に冷却ファンを入れています。あとは地味なんですが、カメラのケーブルを外れないように固定するものとか細かい機材も大切ですね。そうしたものは現場を繰り返していくことで、気づいていくものです。
藤本 最近はハンディカメでも4K映像が撮れたり、良いものが出てきています。高価な機材でなくてもいいんですよね。
酒居 もともと会社に機材があったり、趣味でカメラをもっている人が自前でやってたりしています。最初から無理に購入せずに、ミニマムでスタートしたり、レンタルを利用するとか、外部のプロの方に助けてもらうことも重要だと思います。機材だけでなく、操作の方法も重要ですから。
藤本 毎回オンラインでやるのではなく、こういう事情なので、急遽オフラインから切り替えるという場合には、わざわざ機材を購入するのではなく、機材を借りたり、ノウハウを提供してもらったりすることが必要ですよね。プロのやり方をみんなで見てみたいというのもあります。
酒居 内製化がベストというわけではなく、目的に応じてプロにお任せするのはいい方法だと思います。
コンテンツ内容を公開できない場合
日比谷 視聴者からの質問です。「オフラインで伝えづらいことってありますか」、「運営体制で必要な役割を教えてください」、「オンラインとオフライン、有料と無料の参加率の違いは」
藤本 酒居さんは最初のライブ配信はずいぶん大人数ではじめられたとか…
酒居 なにしろ初めてのことだったので、なにが起きるかわからなくて怖かったので、マーケメンバーは総出でさらに他の部署のメンバー集めて総勢25人くらいになりました。リハーサルも前日からみっちりやりました。ただ毎週2〜3回をこれだけの人数で実施すると、みんな普段の仕事ができなくなってしまうので、だんだん役割を明確化して人数も絞っていきました。昨日5回目の配信が終わったところで、最小構成で7人とだいぶコンパクトになりました。カメラマン2人(1台は固定)、スイッチャ−、配信担当、SNS担当、ADが1人、全体の仕切りが1人です。それ以外に余裕があれば、タイムキーバーも1人、視聴トラブルになどの緊急対応をするメール担当も1人、ADと兼任している、会場の盛り上げ担当も別にいた方がいいですね。役割がある人はそれに集中してもらって、話しを聞いてリアクションする人は別にいてもらう方がいいですね。
藤本 他になにか気をつけていることはありますか
酒居 打合せを現場でやって雰囲気に慣れてもらうことですね。緊張を和らげたり、話をするイメージをつけてもらうにはいい方法だと思います。
藤本 オフラインでもやはり会場をまず見ますし、オンラインだとわからないことが多いですから、見ておきたいですよね。
日比谷 オンラインとオフラインの参加費は違った方がいいんでしょうか
松林 今後は分けたほうがいいと思います。オンラインとオフラインの差をつけるためですね。オンラインは拡げるために低くということもありますし、ネットワーキングや熱量を体験できないので、その分を下げる感じですね。今後はハイブリッド開催が増えた場合に価格の差をつけることは重要になりそうです。
藤本 海外イベントはオンライン配信だけというチケットはないですね。オフラインに特化しているクローズド感がイベントの価値という考えでしょうか。アーカイブも参加費を払った人しか見れません。
日比谷 オンラインは配信はオフレコ発言ができませんね。さきほどのスクリーンショットの問題もそうですが、どういう対策がありますか。
藤本 at Will Workでも その確認には時間がかかりましたよね。開催後に1週間アーカイブしたのですが、アーカイブだけOKがでなかった企業もありました。
松林 そこは企業ごとにポリシーがあるので、事前に確認しないといけないですよね。
藤本 スクリーンショット対策は、司会の人に各セクションの前に都度アナウンスをしてもらいました。
日比谷 私は広報担当として、登壇者にメディア掲載・撮影についても確認していました。写真はよくても動画はダメということも多いですね。あとは原稿の事前確認が必要とか。それがオンラインだと配信やアーカイブという要素が加わるので、繊細なのでしっかり確認しなければいけない。
藤本 登壇者登録の時点で、こういう想定を含めておくとスムーズになりそうですね
会場費が浮くという考え方では成功しない
日比谷 「オンラインだと会場費が安くなるか」という質問もきています。
松林 オンラインがやりやすくなったと考えた方がいいですね。オフラインはオフラインの良さがありますから。同じくらいのコストで両方ともできるようになったと捉えています。オンライン配信をイベントのコストを下げる手段と考えるとうまくいかない。
藤本 撮影する場所はどこでもいいわけではないですよね。会場の雰囲気が重要です。「会社の会議室でできるの?」と聞かれるのですが、会社はノイズがあるし、イベントをどういう風にみせたいか、写真も残りますし、オフラインだろうとオンラインだろうと、会場はおさえるべきだと思います。ユーザベースみたいに社内にスタジオがあれば別ですが、普通はないですよね。
日比谷 音の反響とか照明とか、考えなければいかないことがいろいろあるので、ぶっつけ本番だとうまくいかないですよね。
松林 変に会場費だけを抑えようとすると、イベント全体の品質が落ちる可能性が大きいですよね。
藤本 誰のためにイベントやるか、どんなイベントをやるのか、どのように伝えたいかによって、雰囲気つくり、機材や会場の装飾、配信の方法などを考えればいいと思います。
さて、最後に一言ずつパワーワードをお願いします
日比谷 とにかくトライしてみることが大切。とくにオンラインの場合にはいろいろなデジタルツールや機材を使ってみて、想定できないことが多いですよね。大規模イベントで試すのは難しいですが、小規模なものでトライアルをしておくと良いと思います。
酒居 オンラインの可能性をすごく感じています。遠方のかた、忙しいかたも参加できるとうのが魅力ですね。またオンライン開催は、イベントの延長線とは違うものかもしれません。リアルイベントの価値は別にあるので、うまく組み合わせていくことが大切ではないでしょうか。
松林 経営者の視点でいえば、オンラインの流れは止まらないでしょうし、いまは社内もうごかしやすいのでトライすべきです。配信だけでなく、編集してアーカイブすることも可能ですので、オンラインをビジネスにしていく、という発想もやっていきましょう。
藤本 ビンチにチャンスにということですね。これからオンラインイベントの開催を考えている方は、悩んでいることがあったらお声かけください。ぜひサポートしていきたいです。本日はありがとうございました。
モデレーターを努めた藤本さんは、会場の様子や機材と機能などを説明しながら、パネリスト3人のオンライン配信についての考え方や実施時の注意点などを引き出した。
参加者はFacebookLIVEでの視聴に加えて、Slidoやtwitterでリアルタイムにコメントや質問をなげかけ、スピーカーがそれに応えるなどインタラクティブ性ももたせて展開した。
コロナウイルスの影響により、中止や延期するほかに、新しい選択肢となったオンライン配信。その手法と効果がわかったとともに、バーチャルでは再現できない空気感・熱量の共有、ネットワーキングができない、視聴者の集中力の低下という課題も浮き彫りになり、イベントの良さがあらためて感じたという意見が多かった。アフターコロナではリアルイベントがオンラインに移り変わるのではなく、ハイブリッドなイベントの増加するのではという予測もあった。
オンラインイベントのようすは同コミュニティの公式Youtubeチャンネルに動画をアーカイブしている。