産業の付加価値を向上させる 展示会高度化 ~社長就任、社名変更、本社移転を経たいま~ 田中 岳志さん RX Japan 株式会社 代表取締役社長
- 2024/3/3
- Interview
産業の付加価値を向上させる 展示会高度化
~社長就任、社名変更、本社移転を経たいま~
田中 岳志さん RX Japan 株式会社 代表取締役社長
2019 年に10 月代表取締役社長に就任、2021 年7 月RX Japan に社名変更、昨年4 月1日に東京ミッドタウン八重洲へ本社移転。3 年半の間に、創業以来続いてきたものを大きく変えてきたRX Japan 田中岳志さんに、同社が進む新たな道と展示会産業の展望をうかがった。
自由な発想活かす組織とそのためのリブランド
学生のころは野球部の副キャプテンを務めたり、会社に入ってからも現場責任者として経営者を支えたりと、前面に立ってみんなを牽引するよりも、サポート役の方が自分の性格にあっているのかもしれません。
リードエグジビションジャパンの代表取締役社長の任を引き継ぎましたが、創業から30 年以上にわたり強力なリーダーシップで牽引してきた前社長石積(忠夫氏)とは違い、ボトムアップ型で自分なりのマネジメントを行っています。私が「こうしなさい」と言って、1つの方向性に全員で進むのではなく、一人ひとりが自分の責任において自由に考えて行動してもらう。私は「こんな未来を作ろう」とビジョンを提示するくらいという感じですね。
社員の能力や志の高さが最大の価値だと、以前から考えていましたので、人の力を最大に活かせる組織づくりをしています。そのためのリブランドとして、社名変更やロゴの刷新、本社移転を行いました。
展示会は最高の仕事 働く環境を究める
そこで働いていることを誇りに思えるオフィスを探す。社長就任後に真っ先に取り組んだのは、日本でもっとも注目されている東京ミッドタウン八重洲を新しい本拠地とすることです。最高のオフィスにこだわったのは、社員のモチベーション向上だけでなく、展示会産業全体のステータス向上も考えたため。優秀な学生に展示会産業で働いて欲しい、同じビルに居を構える商社や製造業など他業界の大手企業と比肩できる企業・業界であることを自他ともに認めることが、展示会産業の発展につながると考えています。
約300 人のスタッフがゆったりワンフロアで働ける広さのなかに、パーティションがなく社長室も設置せず、くの字型の執務スペースの頂点にたてば、オフィス全体が見わたせます。どこに誰がいるのかわかり、気軽に声をかけたり、話かけられやすい雰囲気になりました。ここで生まれる自由なアイデアが、ビジネスの資源になっています。
自由と責任が両立する企業文化をつくるには「今日からこうします」と号令しても進みません。環境づくりと信頼関係の構築でいつの間にかそうなっているものでしょう。
一生懸命やった結果のミスを許容し積極的な試みを奨励する評価制度や、在宅ワークの推進、リスキリングなど、ソフト面でも働きやすい環境をつくってきました。
服装の変化は皆さんにもわかりやすいのではないでしょうか。業界内で当社のスタッフはスーツとネクタイ着用というイメージが強かったと思いますが、現在は私も含めだいぶカジュアルな装いをしています。
集客力や産業界へ貢献してきた実績などが当社の強みですが、過去の成功体験が成長を阻むところもあると考え、新しい変革を進めてきました。
豊富なデータ活用し 展示会の高度化進める
感染症拡大の時期を乗り越えて、2022 年の売上は2019 年の水準に達し、昨年には大きく業績を伸ばし、10 年間の中期計画であげた売上倍増の目標を前倒しに実現できそうです。創業からの成長速度を大きく向上しており、継続的な成長の道筋も見えてきました。しかし、展示会の開催規模を増やして、売上を向上するという繰り返しは、経営者として私が求められているものではないと考えています。
展示会会社の売上は1 小間約9㎡が30 万円から50 万円台で、出展規模の増加に売上が比例しています。この公式は展示会産業黎明の時期から数十年変わっていません。これが果たして、展示会ビジネスのあるべき姿なのかは疑問です。会場では多くの企業と企業および個人が商談をして、企業の発展と産業界の振興につながる。私たちの仕事、提供している価値はそういうものです。
出展料が展示面積の対価でなく、出展者の営業・販促の費用と考えれば、展示会の付加価値を向上して、出展料金を高くするのも1つの方向性ではないでしょうか?単価をあげ私どもの収益性を向上させるのではなく、出展企業のマーケティング活動や売上向上により貢献できる仕組みをつくるWin-Win な考えです。
その提供できる付加価値はデータだと考えております。展示会場でブースを訪れた来場者と名刺交換しリードを獲得、売上につながる商談をする、といったことに加えて、展示会ではもっと多くのマーケティングデータを獲得できるはずです。すべての来場者のデータを保有しているだけでなく、来場者の行動解析やアンケートなど、取得・解析できるデータは豊富にあります。デジタルマーケティングで得ている情報は私たちでも提供できるはずです。そのことによって、さらに多くの企業のビジネスに貢献したい。
どのようなデータをどう活用するか、サービス展開の形は私が説明するより、マーケティング担当者に説明してもらうのが適任ですので、次号の記事もお読みください。
この展示会高度化は、当社だけでなくほかの展示会会社にも取り組んでいただきたいです。展示会産業が新たなステージに行く時機と捉えて、個々の力を活かし挑戦できる新しい社風に生まれ変わった当社が、まず一歩を踏み出します。
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