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名刺管理のSansanと展示会の博展グループ・スプラシアの協業の裏側 〜「ビジネスIT & SaaS EXPO 2024 -営業マーケDX 比較・導入展-」と「Sansan Innovation Summit 2023」の事例から〜 レポート
2024年2月29日に㈱博展本社内の会議室で、「Eight×Sprasiaの事例から学ぶ イベント主催の“いま、そしてこれから” イベントDXの活用と成功のカギ」が開催された。
出演は博展グループの㈱スプラシアから代表取締役社長の中島優太氏、大河内美里氏、茂野晃大氏の3人に、ゲストにSansan㈱の執行役員でEight事業部 Event Business管掌の石本卓也氏の4人が登壇。
Eightが主催し、スプラシアがシステムを手がけた「ビジネスIT & SaaS EXPO 2024 -営業マーケDX 比較・導入展」、「Startup JAPAN EXPO」の2つの事例をもとに、展示会にITを導入した事例をもとに Sansan Eight事業部の取組みやスプラシアのITでのサポートなどについて語られ、あわせてイベントや展示会の未来図を描く座談会となった。
名刺管理のSansanがイベントを開催するワケ
中島 石本さんが展示会会社を離れSansanのEight事業部のなかでのイベントを実施するにはどのような想いがあったのですか?
石本 多くの展示会を主催していたなかで、イベントの価値や尊さを確信していました。一方で、たくさんの人を会場に集めるだけでなくデジタル化をすることで、その価値をもっと高められる、もっと伸びしろがあるとも感じていました。
そこで、イベントのもつ出会いのポテンシャルを上げ「偶然の出会いを必然に変える」ために、ITを学んで変えていこうという想いが原動力になっています
中島 名刺データという事業と展示会開催を “出会い”というキーワードで関連づけたのですね。
石本 出会いに向き合うことで、名刺というビッグデータを活用して「あなたに必要なのは、この方」というレコメンドも導きだせるのではないか、という仮説のもとに、Sansanならそういうイベントができると考えました。
5年前にEight事業部でイベント主催事業をたちあげました。現在では展示会やカンファレンスなど年間30本くらい実施しています。40人ほどのスタッフがイベントプロデュースを担当しています。
中島 イベント主催者としての御社の強みはどういったところにあるのでしょうか?
石本 やはり名刺情報が強みです。たとえば経理部の人が集まるイベントをつくりたいのであれば、部署名でターゲティングすれば、会いたい人だけに絞って会えるという仕組みが簡単にできます。
スプラシアの拡張性とフルスクラッチで、想いを具現化するイベントDXをサポート
中島 そうした新しいイベントの形をつくるなかで、私どもスプラシアをパートナーに選んでいただいた理由はどのようなことなのでしょうか?
石本 スプラシアさんのサポートがなければ、Sansanのイベント事業が成り立たないと、大げさではなく、感じています。
中島 ありがとうございます。
石本 弊社もシステムを構築している企業ではありますが、パートナーにお願いすることで、開発スピードを向上するのが、大きな目的です。
とはいっても、出展者や来場者に届けたいもの、こういう体験をしてほしいというニーズを満たさないとイベントを開催する意義自体がなくなってしまいす。
そのために、プラットフォームを提供してもらって、そこでできることをやる、というのではなく、私たちと伴走してくれて一緒にどうやればいいのか、フルスクラッチでもつくりあげてくれるスタイルというのが、私どものニーズに合致していました。
中島 展示会を手がける博展グループである、ということはどういう評価でしょうか?
石本 展示会のプロですので、イベントの肌感のある会話ができる、イベントという共通言語で話せることが、ありがたいですね。イベントのことがわからないシステム会社さんですと、なかなか通じないこともあります。
技術的な面でいうと、セキュリティの高さですね。弊社は名刺という個人情報を扱っていることもあり、情報保全には厳しいのですが、その審査で100点満点を取った数少ないシステム開発会社なんです。
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商談に特化したStartup JAPAN EXPOで実現したこと
中島 「Startup JAPAN EXPO」の事例を通して、のような取組みをしたのか、話を進めていきましょう。
大河内 昨年4月27日から29日まで東京ビッグサイトで開催された「Climbers 2023 Startup JAPAN EXPO」ではじめて実施された「FUNDeal(ファンディール) 」は、出資先をさがしているVCと資金調達をしたいスタートアップ企業との、出会いの場として商談に特化した企画です。
1万879人が参加し、2432面談が成立。そのうち半数がビジネスにつながる再面談に進み、出展者の満足度が91%を達成しました。関わった私自身が言うのも恐縮ですが、すごい数字だなと思います。
石本 もちろんSansan内での評価も高いですし、その数字を作った大河内さんの尽力に感謝しています。
展示会場内に有料で専門商談の区画をつくる「FUNDeal(ファンディール) 」は、私どもにとってもチャレンジでした。有料であっても2000人近くの方が登録していただき、予約システムを活用していただきました。
海外の展示会では、会期前に事前アポイントをとることが当たり前であり、会場で姿を見かける来場者は、次のアポイントへ移動するためにスタスタ歩いています。日本でも同じように、事前商談予約ありきの展示会文化が実現できるか、わからないまま挑戦したのですが、それを実現できたのはスプラシアさんのおかげだった部分が大きいですね。
大河内 Sansanさんのスタッフの皆さんとのニーズをくみ取りながら、スプラシアのイベントシステム「EXPOLINE」になかった機能「あなたにベストマッチ」、「お気に入り」、「面談コンシェルジュ」の3つを実装しました。
石本 1つ目の「あなたにベストマッチ おすすめ表示」は、いわゆるリコメンドですよね。
大河内 FUNDealの参加者には事前にアンケートに回答してもらい、どんな面談をしたいかという要望を収集します。全出展者と全来場者のマッチ度合いを計算して、それぞれの来場者ご自身にとって、最適な出会いが順番に並べる機能です。リストの順番どおりにアポイントをとれば、良い出会いになるというご提案です。
2つ目の「お気に入り機能」は2日間の限られた時間を、もっと吟味してアポイントリクエストを送りたい人向けに、お気に入りに登録してもらって、後で比較対象できる機能です。
3つ目のコンシェルジュ はあまり聞きなれない機能かもしれません。Sansanさんのパートナーであるスタートアップのプロの方にコンシェルジュとして、システムの裏に入っていただいて、「あなたにはこの人との出会いを良いのでは」とコメント付きで提案してくれます。
石本 システムを構築する際には、UX・UIは私どもが重視していることもあり、吟味して細部にわたり多くの要望をお出ししました。普通の開発会社であれば、実現できたのは良くても3割くらいではないでしょうか。そこをスプラシアさんは、なんでもできるという前提で進めていただき、肌感覚でいえば、9割以上を形にしていただきました。
大河内 事前アンケートはなかでも工夫を凝らしました。
石本 マッチングのために、事前アンケートをするのは当たり前ではありますが、FUNDealでは、設問の出し方を個別に変えています。
大河内 スタートアップ、VC、事業会社で質問が違うのは当たり前として、7種類のアンケートとアルゴリズムを組みあわせると50通り以上になります。
石本 ランダムというわけではなく、その人に合わせたアンケートを生成するというのは、なかなかつくるものではないです。よくやってくださいました。
大河内 UX・UIで重要なのは、詳細な部分へのこだわりで、そこが使い勝手の良さにつながります。
たとえば、面談時間の管理画面でも、予定が一目でわかるという基本に加えて、面談場所や時間を「サクッと」決められることが、面談の成立を向上させます。FUNDealの面談は1対1だけではなく、複数対複数のことも多いです。 それに合わせたテーブルを自動的に選ぶほか、どういう座り方をするか、その前の時間帯での商談場所から行きやすさなど、さまざまな条件に見合った商談テーブルを自動で設定するようにしています。
石本 チャット機能の仕様も好評でした。
大河内 商談予約が成立してから個別チャットが可能になるシステムが一般的ですが、l今回は、商談リクエストの段階から可能にしました。それにより、面談したい理由を記載してアピールしたり、打合せ内容について擦り合わせしたり、商談の場の事前や事後のコミュニケーションが活性化できました。
石本 UI細部へのこだわりはプロダクト会社であるSansanも重要視しています。会場内には、弊社の財務担当者も出資側として参加していたのですが、CFOが「このマッチングシステム、すごく便利。誰がつくったの?」と駆け寄ってきて私に質問してきました。
初回開催ということで、新たな課題が見つかったのも収穫でした。たとえば、商談リクエストを保留にする人が多く、既読スルーになっていました。お断りするのが申し訳ないという気持ちがあったようですが、「別の機会に」とか「今回はテーマが合わない」といったように相手を傷つけないで断れる機能をつけて、保留にした状態を長く続けないことが、多くのマッチングには必要ですね。そのような現場で起きた問題を解決するのは、ディテールの部分にあることが多いですね。
大河内 そういう細かい仕様の改善や新しい機能など、この5月の次回開催までに、解決するように、取り組んでいるところです。
【資料】EXPOLINEの具体的な機能を知りたい方はこちらをダウンロード
名刺のいらない展示会、ビジネスIT & SaaS EXPO 2024 -営業マーケDX 比較・導入展-
茂野 今年1月11日、12日に開催された「ビジネスIT & SaaS EXPO 2024 -営業マーケDX 比較・導入展-」(BIS)は、申込みが6,292人で 来場者は2日間で2910人なので歩留まりが46%くらいでした。
石本 昨年9月のキックオフからなんども確認しあったのが、“ROIは出展者の受注獲得”というコンセプトです。
茂野 その実現のために3つのことにこだわって実施しました。
① テーマを営業マーケに絞った
② 「商談直結型」の次世代展示会を目指す
③ Eightを活用したイベントDX
まず、DX全般でなく、営業・マーケに絞って独立展として開催されましたが…。
石本 DXというテーマ展示会を開催するには、営業・マーケだけでなく、人事や経理はじめ、幅広く展開して、出展者・来場者とも多くの方を集めることが、開催規模の拡大や収益を上げやすくなり、展示会主催者にとってのセオリーとなっています。
ただ、私たちがこだわっているのは、出展企業のそれぞれが過去最高の売上をあげること。そこに向き合うために、絞り込むという選択でした。会場内で来場者さんが、気がついたら違うゾーンに来てしまったり、出展者がターゲットとしてない方の対応に追われてしまったりするのは、本来の姿ではないでしょう。
2910人という数字を多いとみるか、少ないとみるかですが、絞り込んだうえでのあの人数だったので、成約が多くなったという声をいただいています。
茂野 また、出展者の受注につながるスキームに向き合おうということで、商談の事前予約を最大化することにフォーカスしました。商談数を増やすため、来場者の方には会場に来る前に事前に目的を明確化してもらうこと、商談予約をとってもらうことを命題としました。
石本 BISは来場無料の展示会ということで、商談予約がどれくらい埋まるか、当日に来ない人も多くなるのではという懸念がありました。当初は予約した人の3割くらいと想定していたのですが、フタをあけてみたら8割の商談が予約通りに実施されました。システムの機能性が高かったのが功を奏し、商談型展示会という理想に少し近づけた気がします。
茂野 商談からの成約率など、出展者の評価はいかがでしたか?
石本 IT業界では商談化、案件化までのハードルが高く、展示会ではすごく多くの名刺・リードを集めることが求められる傾向が強いのですが、BISでは最初から商談件数が決まっています。会場内で受注できることもありました。そうでない見込み顧客についても、名刺獲得から次のインサイドセールスに移りやすい。そういうところも風穴が開けられたと思います。
中島 スプラシアも出展したのですが、その場で受注もできました。
茂野 今回のもう一つのチャレンジは、すべての来場登録をEightで行うことでした。
石本 スマホの利用や個人でのIT利用に抵抗がある方、またEightを使ってない方が多いと運用が難しくなるという懸念があったのですが、来場登録時にEightアカウントを新規発行できるしくみをつくり、会場で来場者バッジを発行する時にEightを使用するなど、イベントアプリのように使ってもらうことで、ハードルがずいぶん下がりました。結論としては、Eight登録100%にしても、門戸は狭まらなかったことがわかり、励みになるトライとなりました。
茂野 FUNDeal(ファンディール)で活用した、マッチングやおすすめ、出展者からのオファー機能などEXPOLINEで動かしている機能を、Eightのアプリやサイト上にも実装して、Eightからアクセスできるようにしました。
石本 これは技術的にはとても難しいことをやってもらったというのが実感です。EXPOLINEは基本機能が充実しているだけでなく、拡張性が高いことで実現できました。Eight側のプロダクトの中に、コネクトするシステムをつくって連携がとれました。
近年はオンラインイベントへの対応や来場者の利便性を高めるために、オンラインで事前登録することが一般的になりました。
それ自体は便利なことでしたが、会社の電話番号が登録されなかったり、Gmailなど普段業務で使用していないアドレスで登録したりと、出展者の展示会後のフォローのパフォーマンスが落ちてしまいました。
Eightの名刺情報をIDとして活用することで、登録が簡単になり使い勝手が良いというこことのほかに、基本的なコンタクト情報取得が担保され、出展者の営業活動が大きく向上できます。
それに加えて出展者様が、紙の名刺交換と比べて1.3倍くらいのリード情報を得られたという効果もありました。名刺が足りなくなってしまうケースがなくなることや、アプリを介した名刺交換が楽しく、試しにやってみるという人が多かったり、特典付与やゲーミフィケーションでの促進効果も高かったようです。
これからも続くDXによる展示会の進化
中島 いち早く展示会のDXに取り組み、出展者や来場者の皆さんに新しい付加価値や参加体験を提供されていますが、今後も新しい挑戦を続けていくのでしょうか
石本 今後も、もっとテクノロジーを駆使してイベントビジネスにおけるニューノーマルを確立していきたいと考えています。
これからもEightだけではなく、その仕組みを色々な展示会で使っていただいて、出展社さんにとって展示会が欠かせないものになればイベント産業も発展し、日本経済も回って元気になると思っています。
石本 本日はありがとうございました。